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98話 色欲のディーナ、里のエルフに復讐



 テイマーのエレンが、嫉妬のザックを撃破した。


 その一方その頃、人間界。

 とある森の中にて。


「はぁ……くそ、腹減った……くそぉ~……」


 ガリガリに痩せこけた集団が、血眼になって森の中を歩いている。


 彼らはエルフ族、それもティナやディーナのいた里のエルフ達だ。


 彼らは精霊王の怒りに触れたことで、魔法やスキルなどの恩恵を全て失った。


 エルフの文明は魔法の力に依存していた。 それが無くなった彼らが、今どうしているのか?


「さ、里長! 見てください!」

「どうしたぁっ!」


 青年エルフに呼ばれて、里長が向かう。

 そこにあったのは……蟻の巣だった。


「でかしたっ! 蟻だ! 皆を呼べ! 食事にするぞォ!」


 里長の元へと、痩せこけたエルフたちがやってくる。


「虫だぁ!」「やっと食事にありつけるぅ!」「ありがてえ! ありがてぇ!」

 

 いびつな笑みを浮かべて、エルフ達が蟻の巣を木の棒でつついてた……そのときだ。

「くす、くすくす……哀れねぇ」

「だ、誰だぁ!? 我らを笑うのはぁ……!?」


 里長が振り返ると、そこには黒衣を身に纏った、エルフの女が立っていた。


「虫なんかをぴちゃぴちゃ食べる姿は、とても魔法に長けた高貴なるエルフ種さまとは思えないわねぇ」


「! その声……でぃ、【ディーナ】なのか……!?」


 かつてエレンのパーティにいて、賢者の力を振るっていた少女、ディーナ。


「そうよ、けど今は【色欲のラスト】とも呼ばれてるわ、里長さま」


 ザックの脱獄を手引きした色欲の女は……ディーナだったのだ。


 見た目はかつての、エルフらしい高貴な美貌は備えていない。

 胸と尻の肉がつき、髪の毛を伸ばして、妖艶な雰囲気を漂わせている。


 豊満なボディを露出過多な衣装で包んでいる。

 まさに色欲の名前にふさわしい、下品な色香を振りまいていた。


「今更何のようだ! 魔法の力を失った貴様なんぞ、何の価値もない! そう言ったはずだぞ!?」


 かつてディーナもまた、精霊王によるペナルティによって、全てを失った。


 ご自慢の賢者の力を失ったディーナは、里長達から失望された経緯がある。


「力を失った……ねえ。くすっ、哀れな里長。今の私を見ても何も気づかないなんてねぇ」


「ふんっ! 消え失せろこの役立たずのゴミ虫が! 我らは食事の最中なのだ!」


「あらあら、虫が虫を食っているのね。お似合いよ」


 ビキッ! とエルフ達の額に血管が浮かぶ。


「そうよね、生活の全てを魔法に依存していたのだもの。魔法がなくなれば衣食住を失う。狩りもまともにできないあなたたちは、森の果実や虫を食って生きていくしかない。まるで原始人のようねぇ……!」


 エルフ達から怒気が立ち上る。


「おい黙って聞いてりゃなんだ!」

「てめえだって魔法を失って何もできないごみのくせに!」


 一方でディーナは、余裕の表情を崩さない。


「私はあなたたちクズと違って認められたの。魔王様から、色欲の才能を……ね」


 熱っぽい表情を浮かべるディーナからは、かつてあった気品というものがまるで感じられない。


「このクズどもに復讐したら、すぐに勇者討伐の任務に就きますから、お許しくださいまし……♡」


「復讐だと?」


 ええ、とディーナが里長に向かって言う。

「魔法も使えない底辺の分際で、私を侮辱した罪……きっちりと払ってもらうわぁ」


「我らが底辺なら貴様だってそうだろう!」


「私はあなたたち愚か者とは違うのよぉ」


 ヘラヘラと笑いながらディーナが言う。


「あなたたちは、エルフのプライドが邪魔して、誰かの庇護下に入ることを拒んだ。……私は違う。魔王様に忠誠を誓った私は、あなたがた愚かなエルフとは違うのよぉ……!」


「わ、我らエルフをぶ、侮辱したな! おいおまえたち!」


 里長が血走った目で、仲間のエルフ達を見やる。


「殺せ! このエルフとしての誇りを捨てた愚者を殺すのだぁ!」


 エルフ達が木の枝を手に、ディーナを取り囲む。


「見せてあげましょう……魔王様より賜った、【色欲】の権能を!」


 彼女は妖艶に微笑むと、バッ……! と両腕をあげる。


 彼女はその場で不思議な舞を踊る。


「なんだその妙な踊りは……?」


 甘ったるい匂いが、彼女の髪や脇から漂う。

 その匂いを嗅いだ若い男エルフ達は、とろんとした表情になった。


「おいなにこんなバカな踊りをジッと見ている! さっさと殺せ! 殺すのだぁああああ!」


 里長の命令に……しかしエルフ達は、反応しない。

 

「なっ!? なんだ、どうなっている!?」


「くすくす……愚かな里長♡ 今のエルフたちは、みーんなこの色欲の発する強烈なフェロモンに夢中なのよぉ~?」


「ふぇ、ふぇろ……なんだそれは!?」


「答える義理はないわねぇ。さぁ、エルフ達。あの里長に最大の苦痛を与えなさい」


「「「「はい! ディーナ様!」」」」


 夢見心地の表情で、エルフ達が里長を見やる。

 完全に正気を失っている様子だった。


 男も、女も、みんなディーナの命令にしたがって、里長に殺到してくる。


「や、やめろ! 近づくなやめろぉ!」


 だがエルフ達は里長を無視して、大人数で取り囲むと……殴り出す。


 ぼぐっ! どごっ! と一切容赦なく、里長に暴力を振るう。


「や、やめ……やめろぉおおおお!」


 どごっ! ぼぐっ! どがっ!


「や、やべ……やべで……ぐれぇ……」


 だが誰も止めようとはせず、ディーナからの命令に忠実に従う。

 

 ややあって。


「…………」


 里長は暴力の嵐に耐えきれず、気を失っていた。

 顔は完全に変形し、全身の骨が砕け散っている。


「きゃはははっ☆ あー、スッキリ。私を馬鹿にするからこうなるのよぉ……!」


 ディーナはボロ雑巾となった里長を、足でぐりぐりと踏みつける。


「ディーナ様ぁ! 次はどうすれば良いでしょうかぁ……!」


 エルフ達が、彼女の次の命令を今か今かと待ち望んでいる。


「そうねぇ~……。じゃあ二人ひと組でペアになりなさぁい」


「「「はいっ!」」」


「そして……殺し合いなさい。生き残ったものに、私が特別なご褒美をあ・げ・る♡」


「「「うぉおおおおおおおお!」」」


 ……そこからは、まさに地獄絵図といった光景が繰り広げられた。


「ディーナ様のごほうびはおれのもんだぁ!」「わたしのよぉ!」「おまえは邪魔だ! ディーナ様はぼくのものだぁ……!」


 誰もが皆正気を失い、ディーナからのご褒美をもらおうと必死だった。


 仲間を殺し、家族を殺す。

 そこにいたのは、理性を失って暴力を振るう、ケダモノたちだった。



「あははっ! 殺せ殺せぇ……! 殺しなさぁい!」


 色欲の権能。

 それは相手に強力な魅了をかけるという、シンプルな能力。


 しかし彼女に魅了されたものたちは、理性を失い、ディーナの命令に絶対服従する、愛の奴隷へと堕ちる。


 里長が無事だったのは、単純に魅了をディーナが故意にかけなかったからだ。


 ややあって。


「でぃ、ディーナさまぁ……! 勝ちました! おれ、勝ちましたァ……!」


 最後の一人となったエルフが、うれし涙を流しながら、ディーナに近寄ってくる。


 周囲には死体の山ができあがっている。

 彼らは皆ディーナに操られ、仲間や家族をその手で殺したのだ。


「ディーナ様ァ……! ご褒美くださぁい!」


「ええ、良いわ。プレゼントあげる」


「やったぁあああああ! なんですかぁあああああああ!?」


 懐から、彼女はナイフを取り出す。

 それを彼の足下に放り投げる。


「自害なさい♡」

「はいっ!」


 最期の生き残りだったエルフは、ナイフを拾い上げると、喜んで自分の心臓に突き刺した。


「やったぁ……でぃーなさまのナイフで死ねるぅ~……しあわせぇ~……」


 どさっ、とエルフが倒れ伏す。


「くくく……あーっはっはっはぁあああああああ! 素晴らしい! 素晴らしい力ですわ、魔王様ぁあああああああ!」


 ものの数分で死体の山となったエルフを見回し、ディーナが嬉しそうに言う。


「男も女も関係なく! 私の言うことには絶対服従! なんて素晴らしい力なのでしょう!」


 恋する乙女のような表情を浮かべ、ディーナが自分の体を抱く。


「ありがとう……魔王様! 賢者の力を失って、廃人同然になっていた私に! スカウトして力を授けてくださったこと! 今でも感謝していますぅううううう!」


 そこにいたのは、孤高を貫くエルフ賢者ではなかった。


 他者を平気で傷つけ、魔に媚びへつらう。

 ただの……魔族だった。


「見ていてください魔王様ぁ! この色欲の力を使って、勇者エレンを殺して見せますわぁ!」


 ギラついた目を、にやりと細める。


「見てなさいエレぇン! この力で私の奴隷に変えて! 最大限の屈辱と絶望を与えてから、殺してあげるわぁ……!」


 この場にいないエレンに向けて、ディーナは高らかに宣言する。


「私に与えた屈辱を、10倍に……いや、1000倍にして返してやるんだからぁ!」


========

 ま、そんなこと僕が許さないけどね。


 しかしバカな女だ。

 エレンに刃向かうことが、どういう結果になったのか。


 それを学習しないんだから、ほんと、元賢者が聞いて呆れるほどの愚かさだよ。


 ……さて、僕の大大大大大大好きなエレンに危害を加えようとした色欲のディーナ。

 君へのペナルティ、ちゃあんと用意してるから楽しみにしててね。


========


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[一言] 魔族って人材不足なの? 魔族の最高幹部に、力を無くして落ちぶれた人間や壊れたエルフ据えるって、リサイクルにしてもちょっとあり得ないんだけど。 お遊びにしたってその辺の魔族使った方がまだ強…
[気になる点] 里長問題の最低な所が27話で死んだはずの里長が43話と98話で2回登場してる所だと思う。 43話に再登場した時点で読者からは『里長は死んだんじゃないの?』っていう指摘が入ってるにも関…
[気になる点] 里長なんで生きてるの? 物語序盤でこう書かれてるんだけど? >里長が事切れるまで、エルフの民達は暴行を続けた。 [一言] 誤字含め作品全体に矛盾点が多すぎ。
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