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72話 神隠し



 ある日のこと。

 ぼくたち【緋色の翼】は、ギルドからクエストを受けて、とある場所を目指していた。


『エレンよ、どこへ何をしに行くのじゃ?』


 頭の上で不死鳥のカレンが言う。


「トーカ南西地域で、【神隠し】が多発しててね。その調査」


『神隠し? なんじゃそれは?』


「人が前触れもなくいずこへと消え去ってしまう事件のことだよ。近頃同一地域で何件も同じことが続いているんだ。しかも小規模な村をピンポイントに狙って」


『なるほど、神の仕業にしては妙だ。作為的な感じがするのじゃ』


「誰の仕業かはわからないけど、少なくとも村がもういくつも被害にあっている。放ってはおけないよ!」


 ぼくの後ろを歩いているのは、緋色の翼のメンバー達だ。


「さすがエレンの坊やだね、立派な心がけじゃあねえかい」


 紫色の髪をした鬼のお姉さん、紫音(しおん)さんが感心したようにうなずく。


「ありがとうございます、紫音さん。依頼手伝って貰って」


「なぁに、気にすんな。坊やにはデッケえ借りがあるからな」


 鬼族の村を救った後も、ゆかりちゃんは紫音さんと一緒にたまに遊びにくる。


 亜人狩り部隊がいなくなった影響もあって、以前よりは外を出歩きやすくなったんだってさ。


 うちに来ると、紫音さんはぼくらの依頼を手伝ってくれるようになった。


 今日はぼく、アスナさん、ティナ、紫音さんの4人でクエストに来ている。

 ゆかりちゃんはクレアさんとお留守番だ。

 ややあって。

 ぼくらは小さな村へとたどり着いた。


『無人の村じゃな。すでに神隠しが行われたあとかの?』


 周囲を見渡すが、村の外には人っ子ひとり見かけない。


『いいえ、若様。人の気配が2人。そして……魔族の気配が多数です』


「なんだって! 急ごう!」


 パーティメンバー全員で、現場へとかけつける。


 とある家屋の入り口に、大勢のモンスターの姿があった。


『トロールです。C級モンスター、数は10体』

「わかった! 【神風】!」


 ぼくの手から突風がふいて、トロール達を木の葉のように吹き飛ばす。


『見事じゃ、トロールの巨体をああも軽々と吹き飛ばすなど。さすがエレンじゃ』


 入り口を塞いでいたトロールがいなくなったので、小屋の中に侵入する。


「けひひっ。さぁ坊やぁ。その子をこっちにわたしなさぁい」


 二足で歩く、カラスの姿をした魔族がいた。


 小さな男の子がひとりいる。

 彼はその胸に、きれいな宝石のペンダントを抱えていた。


「い、いやだ! 妹は渡さない!」

「おとなしくわたしなさぁい、さもないとぉ」


「そこまでだ!」


 ぼくは風神の剣を抜いて、魔族に斬りかかる。

 ひらり、と魔族は回避する。


「きみ、大丈夫!?」

「う、うん……だれ?」


「ぼくらは緋色の翼、冒険者さ! もう大丈夫だよ!」


 アスナさんが男の子を保護して、後ろに下がる。


「けひひっ、人間(サル)ごときがこの子爵級魔族【クロウ】様になぁんのご用で?」


 魔族には強さによって階級がある。

 5段階あって、子爵(ししゃく)は下から2番目の強さだ。


「とぼけるな! 村を襲ったのはおまえだろ!」


「けひひっ、だとしても、あなたには関係の無いことでしょぉ? それともぉ、あなたも【宝石】に変えてあげましょうかぁ?」


「なにを訳のわからないことを!」


 ぼくらは剣を構えて、クロウと相対する。

 クロウは懐から宝石を取り出し、地面にばらまく。


「ゆきなさい、ワタクシの宝石怪人たち」


 宝石が輝くと、身体が宝石でできた化け物が生まれる。


「これはワタクシが作った人造モンスター。強さはこれ1体でSランクの強さを持った、破格の存在なのでぇす」


 宝石怪人は、見たところ全部で20体くらいいた。


「お、お兄ちゃん……逃げて! こんな強そうなの……勝てっこないよ!」


「大丈夫だよ、ぼくたちはこんな悪人に負けないから!」


「ふんっ! バカなガキだ。やれ」


========

精霊使いへの敵対行動を感知しました。


宝石怪人たちへのペナルティを実行します。→スキル【弱体化】を怪人達に付与します。

========

精霊使いの能力が発動します。


→鬼族・紫音へ【退魔剣士の精霊核(エレメンタル)】を付与します。

========


「いこう、みんな!」

「「「はいっ!」」」


 ぼくはまず、神風で怪人どもを吹き飛ばす。

 壁を突き破ってすっ飛んでいく。


「火炎連弾(バーニング・バレット)!」


 ティナの魔法が射出され、怪人にぶち当たって灰になる。


「せやああああああああ!」


 アスナさんが飛び上がって、回転斬りをかます。


「ガキを泣かす悪党はゆるせねえぞごら」


 紫音さんが刀を抜いて振る。

 斬撃が飛び、怪人達を一刀両断する。


「そ、そんなばかな!? ワタクシの自慢の宝石怪人が、一瞬で全滅ですとぉ!?」


 一人きりになったクロウが、愕然とした表情でつぶやく。


『エレンの力で仲間は強化、逆に敵は弱体化しておる。こちらが有利になるのは当然。さすがはエレン、見事じゃ』


「くっ……! こうなったら奥の手だ!」


 一際大きな宝石を取り出す。

 それを放り投げると、見上げるほどの巨人へと変化した。


「見よ! 我が最高傑作! 名付けて宝石巨人! その強さは驚きのSSランク……! その強固な体表は絶対に壊れぬ硬度を持つ!」


「【不死鳥の紅蓮矢(フェニックス・バリスタ)】!」


 ぼくの放った火の矢は、巨人の腹に突き刺さり、大爆発を起こしたのち、粉々になった。


『さすが若様! 矢を突き刺し、内部から破壊するそのアイディア! 見事でございます!』


「そんなばかな! 決して壊れぬ身体を持っていたのに! き、貴様……化け物か!」


 ぼくを見てクロウが震えながら言う。


「おとなしく降伏しろ!」

「くっ……! お、覚えてろよお!」


 懐から宝石を取り出し、ぱりんっ、と指で潰す。

 その瞬間、クロウの身体が歪んで消えた。


 ややあって。

 少年の家をティナが魔法で直した後。


 ぼくは村の最後の生き残りである、少年に事情を聞くことにした。


「つまり、あのクロウが村を襲って、村人達をみんな宝石に変えちゃったんだね」


 こくん、と少年がうなずく。


「【おーくしょん】にだすっていってた。ほかの魔族達に高く売るって」


「オークション……か」


『魔族の間でも人間界の珍しい品や奴隷などが競売されていると聞きますね』


 少年は涙を流しながら、胸に抱いた宝石のペンダントを見やる。


「おかあさんも、おとうさんも、宝石に変えられてつれてかれたんだ。妹も……」


 ぼくは少年の肩に手をかけて、うなずく。

「大丈夫、ぼくに任せて!」


 すっ……とぼくは右手を宝石に向ける。


「坊や、なにするんだい?」

「呪いを解いてみようかなと思う」


 ティナが神妙な顔で、首を振る。


「……無理よ。おそらくこれは【変化の呪い】。強力な呪いだわ。かけた本人しか決して解けない」


「でも、やってみないとわからないよ」


 理不尽に家族を奪われて、泣いているひとがいる。

 少年を放置することなんて、絶対にできない。


「精霊さん、力を貸して」


========

精霊使いの能力が発動します。


スキル【解呪】を、スキル【超解呪】へと進化させます。

→成功しました。

========


 不死鳥の癒やしの炎を、妹だったというペンダントに使う。

 青白い炎がペンダントを包むと、みるみるうちに元の姿へと戻った。


「おにーちゃんっ!」

「よかった! よかったぁ!」


 兄妹が涙を流して、抱き合ってる。


「ありがとう、えれん!」「ありがとー!」


 うんうん、ふたりが再会できて本当に良かった。


「けど、これで解決じゃないわ。まだ他の村人たち、この子達のお父さんとお母さんがいる」


「そーだなぁ。あのクソ魔族野郎が村人全員宝石に変えちまったらしいしよぉ。つーか、どこ連れてったんだ?」


 紫音の疑問に、ランが答える。


『おそらくは、魔界でしょう』

「魔界? なぁにそれ」


『魔族達の暮らす世界のことです。ただ、別次元に存在しており、特別なゲートを潜らねば絶対にいけない場所にあります』


「そんな……」


 少年が妹を抱きながら、涙をまたポロポロと流す。


「安心して。ぼくらが、みんなを助け出してくるから」


 ティナが目を丸くして言う。


「え、エレン……あなたわかってるの? 魔界へはゲートを使わないといけない。どこにゲートがあるのかわからないし、人間界から魔界へ乗り込んだひとなんて、前代未聞だわ」


「ううん、大丈夫。ぼくなら……できる気がするんだ」


========

精霊使いの能力が発動します。


スキル【次元転移(ゲート)】を獲得しました。

========


 その瞬間、ぼくらの目の前に、黒い穴が出現する。


「う、うそ……ゲートじゃない。人為的に起こすなんて……す、すごすぎる……」


 これを潜っていけば、魔界へ行けるらしい。


「行こう、一刻も早く村人達を助けるんだ!」


 こうして、ぼくらは魔界へと乗り込むのだった。


========

精霊使いへの敵対行動を感知しました。


魔族クロウへのペナルティを実行します。

========

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― 新着の感想 ―
[一言] エレン「精霊王さん、やっておしまいなさい!」 精霊王「ハハーーッ」
[一言] エレンなら、なんでもできる!(´∀`)bグッ!
2020/09/05 15:23 退会済み
管理
[一言] 次回のタイトルは「100秒後に死ぬ魔族」でお送りします。
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