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52話 皇子に捨てられた聖女



 妖精の国から戻ってきた、ある日のこと。

 ぼくたち【緋色の翼】は、モンスターの討伐依頼を受けて森へとやってきていた。


『若様。依頼のあった【毒竜(ヒュドラ)】が近くにおります。ただ、人を襲おうとしています』


「なんだって! みんな、急ごう!」


 ランに誘導して貰い、森の奥地へと進んでいく。

 森の空気に紫色の霧が混じり出す。

 草花や木々が枯れている。


「ヒュドラの毒霧ね。この先は濃くて近づけないわね」


 知識豊富なティナがそう分析する。


「大丈夫、任せて!」


========


精霊使いの能力を発動します。

→スキル【浄化】を付与します。


========


 ぼくを中心に、聖なるバリアのようなものが広がる。

 毒の霧を浄化し、ティナ達でも動けるようになった。


「すごいわ、エレン! まるで【聖女】さまみたいね!」


「聖女……?」


「浄化と癒やしの力を持つ職業持ちの女性のことよ。とても珍しい職業で、今の世の中だと【隣国の皇子の婚約者】がたしか聖女だって聞いたわ」


 ややあって。

 ぼくたちは毒霧の中を進んでいく。


 すると、見上げるほどの竜がいた。


「オロロォオオオオオオオオオオン!」


 敵は表皮から大量の毒を分泌している。

 ボタボタと毒が垂れて、大地を汚していた。


『若様、どうやら襲われていた女性は丸呑みにされたようです。腹の中から匂いがします』


「大変だ、すぐに助けよう!」

「「了解!」」


「おろろぉおおおおおおおん!」


 毒竜が口から、大量の毒を吐き出してくる。


「【不死鳥の羽撃(フェニックス・ブロウ)】!」


 肩から生えた翼が羽ばたくと、広範囲の炎を照射する。


 炎は吐き出した毒ごと毒竜の身体全体を焼き、じゅうじゅうと蒸発させる。


 シュコンッ、とティナが矢を毒竜の腹の部分に突き刺す。


「女性はその位置にいるわ!」

「了解! まずは救出します!」


 ティナの持つ精霊の目は、魔力を探知できるんだって。


 アスナさんは走る。


「せやぁああ!」


 アスナさんがミスリルの剣を振るう。


 毒竜の身体の一部を切り取る。

 ぼとっ、と肉片が落ちると、そこから女性の姿が見えた。


 彼女は素早く保護して離脱。


「エレン、後お願い」

「了解、【不死鳥の火矢(フェニックス・アロー)】!」


 撃ち出した火の矢が毒竜を完全に消し飛ばす。


 ティナが素早く近づいて、倒れ伏す女性の状態を確かめる。


「大丈夫、生きてるわ。けど毒に侵されている」

「わかった!」


 ぼくは不死鳥の癒やしの炎で、女性の身体を焼く。


「……でも、解せないわ」

「どうしたの、ティナ?」


「ヒュドラの毒は強毒。常人じゃ1秒も持たずに即死するはず。けどこの人は毒のダメージがあるけれど、死んではいない」


「なにか毒に耐性のあるスキルでも持っているのかしら?」


 ややあって。

 ぼくらは女性を連れて、毒霧のエリアを出た。


 ほどなくして女性が目を覚ます。


「……助けてくださり、感謝申し上げます」


 女性は10代半ばくらい。

 白い法衣のようなものを身につけている。

 白髪に、銀の瞳。

 ほっそりとした体つきが、彼女に儚げな印象を与えた。


「……わたしはクレアと申します」

「ぼくはエレン。冒険者」


 アスナさんとティナも挨拶をする。


「……命を助けてくださり、誠に感謝します。このご恩は忘れません」


「女性がひとりで森の中なんて、何か事情があるの、クレア?」


 アスナさんの問いかけに、クレアはこくりとうなずく。


「……実は、祖国を追放されたのです」

「追放……どうして?」


「……【聖女】を偽っていた罪、だそうです」


 話をまとめるとこうなる。


・クレアはとある貧しい村の出身。

・ある日彼女に【聖女】のスキルがあると判明。

・国は彼女を保護し、【第3皇子グスオ】との婚約を決めた。


・しかしある日、グスオから婚約破棄を言い渡される。

・理由はクレアが実は【聖女】ではないと判明したから。


・無一文で国外追放され……今に至る。


「聖女ではなかったって、どういうことなの?」


「……わかりません。日に日に聖女の力が弱くなっていきました。聖女の象徴である浄化のスキルは、真っ先に消えてしまいました」


「スキルが消えた……ね」


 ティナが神妙な顔つきでつぶやく。


「でもグスオはなぜそんなすぐに追い出したの? 聖女じゃなくとも婚約者、愛し合っていたのでしょう?」


 ふるふる、とクレアが首を振る。


「……グスオの心は最初から私にありませんでした」


「どいうこと?」


「……愛人がいたのです。名前はベラドンナ。私よりも、背が高く、乳房の大きい大人の女性でした」


「なによそれ! 浮気してたってこと? 最低!」


 ティナの怒りはもっともだ。

 

「ほんと、なんて酷い皇子なんだ! ひどすぎるよ!」


========

精霊使いへの敵対行為を関知しました。


皇子グスオに対してペナルティを実行します。

→皇族の精霊核(エレメンタル)を剥奪します。


愛人ベラドンナに対してペナルティを実行します。

→聖女の精霊核(エレメンタル)を剥奪します。


========


「これからどうするの?」


「……わかりません。スキルの恩恵がなくなった今、私にできることなんて、なにも」


「大丈夫、ぼくに任せて!」


========

精霊使いの能力を発動します。


聖女の精霊核(エレメンタル)を複製します。


クレアに譲渡します。

→OJM#+LKGL#`G>#+*LG`


※クレアは不正な【■■■い】による妨害を受けてます。

→バグを取り除きます。

→成功しました。

========


「あれ……?」

「どうしたの?」

「なんか調子が……もう一回」


========

精霊使いの能力を発動します。


クレアに【聖女の精霊核(エレメンタル)】を譲渡します。

→成功しました。


→【聖女のスキル】を付与しました。

→スキル【浄化】を付与しました。

→etc.……


========


「あ、今度はちゃんとできたみたい」

「……あの、エレンさんは一体なにをなさっていたのですか?」


「聖女の力もどったよ」

「……え?」


「試してみてごらん」


 クレアは立ち上がる。

 ぼくたちは毒霧の残る森までやってくる。


 目を閉じて、手を前に出す。

 すると、毒の霧が、一気に晴れたではないか。


「……す、すごい! これは浄化スキル、元に戻っているなんて」


 じわり……とクレアが涙をにじませる。


「……役立たずって馬鹿にされて、浮気までされて、捨てられて……もう、神はいないんだって思ってました。けど、ここにいました」


 クレアはぼくを、正面から抱きしめる。

 ぎゅーっと、力強く抱擁する。


「……ありがとうございます、エレン様。あなたは私の、救いの神様です」


「そ、そんな。おおげさだよ」

「……いいえ。ご謙遜なさらないでください。どん底からすくい上げてくれた、私の救世主……」


 しばらくして、クレアは落ち着いたようだった。


「行く先がないなら、しばらくぼくたちの家に泊まらない?」


 ぼくが提案すると、クレアは目を丸くする。


「……よろしいのですか?」


「無一文、しかも外国にひとり放り出された女の子を、放っておけないよ」


 クレアがアスナさんたちを見て言う。


「……皆さまも、よろしいのですか?」

「もちろんよ!」「異論無いわ」


 じわ……っと目に涙をためて、クレアが泣き出す。


「……ありがとうございます。こんなにも素晴らしい人たちに出会えるなんて」


 ぐすぐす、と泣くクレアを、アスナさんが慰める。

 一方で、ティナが近づいてくる。


「……あの子、体中に痣があったわ。婚約者のバカ皇子、暴力振るっていたのかも」


「……つくづく、最低な人だ!」


========

精霊使いへの敵対行為を関知しました。


皇子グスオに対してペナルティを実行します。


========

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― 新着の感想 ―
[一言] グスオちょっと濁点の位置変えたらクズ男w
[一言] 主人公さんは某即死能力の人、彼が自重しないバージョンみたいな感じですね。主人公さんに認識されたら終わり。
[気になる点] 精霊使いへの敵対行為を関知しましたとあるけども、グスオはエレンに対して何にも敵対行為してないですよね? エレンが憤るのは理解出来ますが、グスオ自体はまだクレアにしか行動を行っていない…
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