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38話 ギルド本部長と村の危機



 ぼくたちがSランクパーティになってから、2週間が経ったある日。


 フェンリルのランに乗って、【王都】を目指していた。


 ランが風のように草原を駆け抜けていく。


『エレンよ、そなたひとりでどこへ行くのじゃ?』


「王都にある冒険者ギルドの本部だよ。出頭命令がくだったんだ」


【緋色の翼】はこのたび、Sランクパーティに認定された。


【ギルド本部長】に呼び出され、リーダーであるぼくが、あいさつしにいくことになったのだ。


『なるほど、Sランクは冒険者ギルドのいわば顔。ロクデモナイ人間がなっては困る。ゆえに直接会って人となりを確認したい、というところじゃろうな』


「うう……緊張するなぁ。ギルド本部長なんて偉い人に、会ったことないや。どんな人だろう……?」


 ランはまもなく、森にさしかかった。


 森の中腹で、ランがぴたりと、足を止める。


『若様、血のにおいです。モンスターが一般人を襲っています』


「大変だ! すぐに向かって!」


 ランは木々を素早く抜けていく。

 開けた場所に到着。


「オロロロロロオオォオン……!」

「あれは……【トレント】!」


 木に手足と顔がくっついてるような、Cランクのモンスターだ。


 1匹だとたいした強さではない。

 けれどトレントの怖いところは、複数で攻めてくるところ。


『トレントが20体。負傷者1名。子供1名です』


 敵の中心には、初老の男と、幼い女の子がいた。

 男は傷を負っていて、動けなさそう。


『火矢で消し飛ばすかの?』

「駄目だ、火事になっちゃう!」


 ぼくはスキル【風神の剣】を発動。


 精霊の指輪が変化して、翡翠の剣になる。

 飛び上がって、トレント達の中心に着地。


「伏せてください!」


 男はうなずいて、女の子をかばうように地面に伏せる。


「てりゃあああああああ!」


 風神の剣で、回転切りを食らわせる。


 風の刃が周囲に広がり、20体いたトレントが、一撃で真っ二つになった。


『お見事です、Cランクを一撃とは! さすが若様!』


 ぼくは剣を収めて、男の人に近づく。


「大丈夫ですかっ? すぐに治療します!」

「あ、ああ……すまない」


 男は背中に大きな傷があった。

 ぼくは背後に回って、不死鳥の炎で治癒を行う。


「はい、これで大丈夫です」

「……今のはもしや、不死鳥の炎ではないかね?」


 男が目を丸くして言う。


「え、えっと……その、内密にお願いします」

「ああ、わかった。命の恩人の頼みだ。黙っておこう」


 彼は立ち上がって、深々と頭を下げる。


「危ないところを助けてくれてありがとう。私は【ジェイド】。いちおう……冒険者だ」


「そうだったんですね! ぼくはエレン、冒険者です!」


 ジェイドさんはぼくを見て、「この子が、例の……」と小さくつぶやく。


「はい? 何か言いました?」

「ああ、いや。なんでもない。実は君が凄腕の冒険者と見込んで、頼みたいことがある」


「なんでしょう? ぼくにできることならなんでもします!」


 ジェイドさんは微笑を浮かべる。


「君はまず報酬の話をしないのだね」

「どうしてですか? 困っている人が居たら助ける。冒険者ってそういうものですよね?」


 アスナさんから学んだのだ。

 困っている弱い人たちのために力を尽くす。

 それが冒険者だって。


「なるほど……素晴らしい心意気だ。私は君がいたく気に入ったよ」


 ぼくたちは歩きながら、ジェイドさんに話を聞く。


「実はこの森のとある村で、奇病が流行っているそうだ」


「奇病……ですか?」


「ああ。村の大多数がかかってしまってな。困っていると、このお嬢さんが私のもとへ依頼に来てね」


 ジェイドさんの隣を、女の子が歩いている。


 この子が村の女の子ってことか。


「治せないんですか?」

「残念ながらポーション程度じゃ治せず、医者もさじを投げたそうだ」


「じゃ、じゃあ……女の子はどうしてジェイドさん、というか冒険者ギルドへ」


「うむ。お嬢さんが言うには、村の近くに【水神様】という神様がいるそうだ」


「水神様……?」


「村の守り神のような存在だったらしい。食べものを献上するかわりに、村を守ってやるという約定を結んでいたそうだ」


 ところがここ最近は村でとれる作物が減ってきたそうだ。


 水神様に献上するだけの食料がなくなったそうだ。


「そしたら水神様は怒って、村に呪いをかけた。結果、村人は病気になってしまったそうだ」


「じゃあ……女の子の依頼って言うのは」


「端的に言えば水神様との直接交渉だな。場合によっては討伐もやむなしと言える」


 ややあって、ぼくらは村に到着した。


「村に誰も居ない」

「老人、大人達は全員病床に伏してるそうだ。早晩、村人全員が動けなくなるだろうな」


「…………」


 女の子が、きゅっ、と下唇をかむ。


「他の冒険者達は、神の怒りに触れ自らも病気になることを危惧し、誰も依頼を受けてくれなかったそうだ。嘆かわしいものだ」


 泣きそうなその子の姿に、ぼくは在りし日のぼくを重ねていた。


 おじいさんが病気で、冒険者になってお金を稼がないといけなかった。


 けれど誰もパーティに入れてくれず、途方に暮れていた。


「大丈夫、ぼくがなんとかするよ! だから泣かないで」


 しゃがみ込んで、女の子の頭をなでる。


「この子を村において、私たちは水神の元へ向かおう」


「はい。でも……その前にやることがあります」


「やること?」


 ぼくは女の子に言って、彼女の家へと連れて行ってもらう。


「ここが君のお家?」


 うなずいて、ドアを開ける。

 なかには父親と母親らしき人物がいて、布団に寝かされていた。


「ひどい……」


 顔中に出来物があった。

 苦悶の表情を浮かべて、うなっている。


「エレン君。どうするのかね?」

「病気を治療します」


「病気といっても正確にはこれは呪いだぞ? しかも神がかけた強力な呪いだ。人間の力では絶対に治せない」


「大丈夫です! ぼくなら、できます!」


========

精霊使いの能力が発動します。


状況打破に適した精霊を呼び出します。


スキル【解呪(S)】を獲得しました。


========


 ぼくは不死鳥の癒やしの炎を、スキルで強化する。


 青白い炎は、両親の出来物を焼き、綺麗な肌に戻す。


 呪いを解くスキルを加えたことで、神の呪いすらも、青い炎は焼き殺した。


「う、うう……わたしたちは……いったい……?」

「まま! ぱぱぁ……!」


 女の子が涙を流しながら、両親に抱きつく。


「なにがおきたの?」

「あのお兄ちゃんが助けてくれたのっ!」


 両親がぼくを見て、涙を流しながら、土下座した。


「ありがとうございます! なんとお礼を申し上げれば良いか……」


「気にしないでください! 当然のことをしたまでです!」


 ぼくは家を出る。


「カレン、行くよ。みんなを治すんだ!」

『委細承知!』


 不死鳥がぼくの肩から飛び上がる。

 解呪スキルを付与されたカレンが、村の上空を飛び回る。


 青白い火の粉が村に降り注ぐ。

 ややあって……。


「治った!」「奇跡だ!」「すごい!」


 元気になった村人の、明るい声が聞こえてきた。


「素晴らしい力だな、エレン君」


 一部始終を見ていたジェイドさんが、ぼくに拍手をする。


「見事だ。さすがはSランク冒険者。実力と人格、どちらも備えている。君のような人格者ならば、安心してSランクの称号を任せられるよ」


「どうもです! ……って、あれ? ぼくがSランクだって、どうして知ってるのですか?」


「おお、言い忘れていたな。私は【ジェイド・カストロ】。ギルド本部長をやっている」

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  報酬を取らずに安請け合いするのは、あまり良い事には 思えません。  それが当たり前になってしまうと、他の冒険者に対して 依頼をする際、「精霊使い様はタダでやってくれた」という 感じ…
[良い点] チートが前向きな効果に発揮されてると、ホッとします…(笑) [一言] 前回までの展開は、結果的に(完全な自業自得とは言え)他人を不幸にするチートのオンパレードだったので、読んでるコチラが些…
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