33話 ザックの失敗、大惨事を引き起こす
テイマーのエレンが、ミスリル鉱脈から戻った数日後。
ザックは、大勢の冒険者を連れて、ナエヴァ山へとやってきていた。
「しかしよぉザック。マジであるのか、大量のミスリルの鉱石」
知り合いの冒険者が、ザックに話しかけてくる。
「んだよ、おれが嘘言ったっていうのか?」
「いや……でも、トーカの冒険者ギルドからの情報だと、ミスリル鉱脈は無かったらしいじゃん。エレンがそう報告したって」
ザック達の所属するのは、トーカから離れた街、カシクザキの冒険者ギルドだ。
ギルド経由でエレン達の報告を聞いたのである。
「大方、ミスリルを独り占めしようって魂胆だろうよ。善人ぶった最低のクズだからなあいつ」
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精霊使いへの敵対行為を感知しました。
ペナルティを実行します。
【転移の魔法陣】の改ざんを行います。
行き先を変更します。
【ミスリル鉱脈】→【モンスター・ハウス】
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ザック達は、ナエヴァ山にある洞窟の入り口までやってきた。
「いいかてめぇら! よーく聞きやがれ!」
ザックは招集された冒険者50名を見渡して、声を張り上げる。
「これから鉱脈に潜る。けどな! 第一発見者はおれだ! つまり、鉱脈のミスリルはぜーんぶおれのもんってことだ!」
前回、ザックはエレン達の動向をこっそりと見張っていた。
彼らが帰った後、鉱脈を掘り尽くすために、人員をギルドでそろえて、ここに来た次第だ。
「手伝ったことに対する賃金は払ってやんよ。けどなぁ! ネコババしたらただじゃあすまねえぞ!」
チッ……と冒険者達が舌打ちをする。
「一生懸命働いたやつには、特別に少しだけミスリル分けてやんよ。やる気出して働けよてめぇら」
「けどザック。嘘だったらただじゃおかねえからな」
「そうだぞ。おまえただでさえ最近ギルドでの評判悪いんだから、今回のクエストが嘘だったりしたら、信用が地に落ちるぜ?」
ビキッ! とザックは額に青筋を浮かべる。
「あー、今おれに楯突いたそこの2人。帰れ。おれを怒らせた罰だ。金もミスリルも恵んでやんねー」
ぐっ、と冒険者達が歯がみする。
「「すみませんでした……」」
「ったく、仕方ねえから許してやる。けど次おれに何か意見をしたらその場でクビだかんな! ボケがぁ!」
冒険者達が反省したところで、ザックは秘密の入り口に入る。
「こんなとこに通路があったなんて……」
「この転移の魔法陣が鉱脈に続いている。おらてめえらさっさと入れ。ぐずぐずすんなウスノロどもが」
ザックは調子に乗っていた。
それもそのはずだ。
ミスリルは希少価値が高く、数グラムで家が買えるほど。
あの鉱脈には、それがもの凄い量があった。
「おれは億万長者! 人生の勝利者なんだよぉ! てめえら最底辺の冒険者と違ってなぁ! うひゃひゃひゃひゃ!」
言いたい放題に言われても、彼らは黙っていた。
ザックの不興を買えば、賃金もミスリルも手に入らないのだから。
冒険者達は黙って、転移の魔法陣に乗る。
最後にザックが入る。
そして……すぐに、気づいた。
「あ、あれ……? なんだここ……?」
前回ここに来たときには、転移したらすぐ、目の前に大量のミスリルの山が広がっていた。
しかし今彼がいるのは、なにもないホールのような場所だ。
「ザック、なにしてんだよ。早く鉱脈に連れてってくれよ」
冒険者達はここへくるのが初めてだ。
ここから別の場所へ移動するとでも思っているのだろう。
「い、いや……その……」
そのときだった。
「うぎゃぁああ!」
「ど、どうした……って、なんだありゃあ!?」
悲鳴が上がったほうをみて、ザックは絶句した。
部屋のあちこちから、大量の【蟻】が湧き出てきたのだ。
「あ、【鋼鉄蟻】だぁ!」
「嘘だろぉ!? Aランクモンスターが、こんな大量に沸いてるなんて!」
鋼のボディを持った、人間の子供サイズのアリモンスターだ。
アリたちはカサカサと音を立てながら、近くに居た人間たちに襲いかかる。
「う、うぎゃぁあああ! 腕が、腕がぁ!」
アリの口には、鋭い歯がついている。
冒険者の腕や足を、容易く切断した。
「ぎゃああ!」「ひぃいいい!」「た、助けてぇええ!」
地獄絵図が広がっているなか、ザックはようやく正気を取り戻した。
ダッ……! とひとりだけ逃げ出したのだ。
「おいザック! 待てよ! 逃げんな!」
「うるせぇぇぇ!」
負傷している冒険者たちを放置し、ザックはひとり、転移の魔法陣に乗る。
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精霊使いの能力が発動します
ザックへのペナルティを実行します。
スキル【魔法陣破壊】を一時的に付与します。
転移の魔法陣を破壊しました。
スキル【魔法陣破壊】を剥奪しました。
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「なっ!? そ、そんなバカな!? 転移が発動しねえ! どうなってやがる!」
かさ……かさかさかさ……! と大量のアリが押し寄せてきた。
「く、来るな来るなぁああああ!」
襲い来るアリたち。
逃げようとしても転移魔法陣はなぜか発動しない。
「どうすりゃ……あっ! あれだ! 出口だ!」
この部屋の、本来の出入り口があった。
ザックは急いで脱出を試みる。
「グッ……! この……動けぇ……!」
ぐぐ……と重い扉を、必死になって開けようとする。
「ま、待てザック! 今開けたらモンスターが外に出るぞ!」
アリに応戦している冒険者のひとりが、ザックに言う。
だがザックは忠告なんて耳に入っていなかった。
「よし! あいたっ!」
重い扉が開くと同時に、ザックは一目散に部屋から逃げる。
だが背後から、アリが追いかけてきた。
「ひぃ! うひぃい!」
涙を流しながら、ザックは迷宮内をひた走る。
後ろから大量の鋼鉄蟻が、エサであるザックを追い回す。
彼は必死になって逃げた。
だがこの迷宮内の地図を持っていないので、当然出口なんて見つからない。
「はぁ……! はぁ……! はぁ……!」
……やがて、どれだけさまよっただろう。
気づけば、アリの姿はなかった。
「たす……かったぁ……」
どさっ、とへたり込む。
そこで、ザックは気づいた。
「ここ、元いた部屋じゃねえか……」
ホールでは、負傷した冒険者が、何人も居た。
中には、死者すらでていた。
「おいザック! てめえこの野郎ぉ!」
傷付いた冒険者のひとりが、涙を流しながら、ザックに近づく。
胸ぐらを掴んで、バキィ! と殴る。
「よくも騙しやがったな! なにがミスリル鉱脈だ! モンスター・ハウスに追い込みやがって!」
ダンジョンにある、大量にモンスターが湧き出る部屋のことだ。
「ち、ちげえよ! 誤解だ! おれのせいじゃねえ!」
「うるせぇええ! このことはギルドにちゃんと報告する! 冒険者を騙して、殺したってな!」
負傷した他の冒険者達も、ザックの元へやってくる。
「しかもおまえ、大量の鋼鉄蟻が部屋から出て行ったじゃねえか! 地上に出て大変なことになるぞ!」
「全部ザックの責任だからな!」
冒険者達に嘘をつき、死傷者をだしてしまったこと。
さらに大量のモンスターを解き放ってしまったこと。
それらの責任を、すべてザックが背負うハメになってしまった。
どれほどの被害額になるかなんて、想像に容易い。
「おいこいつ縛って連れてくぞ! 騎士につきだすんだ!」
「や、やめろぉ!」
後ずさって逃げようとする。
だがスキルを失ったザックには、冒険者達に太刀打ちできるわけもない。
あっという間に拘束される。
「死んでいった仲間達にわびろぉ!」
ばきぃっ! とザックを殴り飛ばす。
「お……おれは悪くねえ! おれは悪くねえんだよぉ!」
うずくまったザックを、冒険者達がののしる。
「うるせえこの悪魔! 鬼畜!」
「地獄に落ちやがれこの腐れ脳みそが!」
そんなふうに、ザックはしばし、ボコボコに殴られた。
「ちくしょぉ……なんで、こんな目に……あうんだよぉ~……」
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