31話 ミスリル鉱脈
貴族を退けてから、数日後。
ぼくたちはトーカの街の南部に広がる、【ナエヴァ】山へとやってきていた。
『エレンよ。こんな山の中にきて、なにをするのじゃ?』
頭の上でヒヨコ姿のカレンが言う。
「ギルドからの依頼でね、【ミスリル】の鉱脈を探しに来たんだ」
魔銀とも呼ばれる。
魔力をよく通すことで有名で、武器や防具に利用される、希少価値の高い鉱石だ。
『なぜ冒険者が鉱脈を探すのじゃ? 鉱夫がやればよいではないか』
「どうやらダンジョンの中に鉱脈があるみたいなの。戦う力を持っている冒険者しか探せないのね」
ナエヴァ山のとある洞窟の入り口に、ぼくらは立っている。
ここがダンジョン化しているらしい。
「じゃあ、いきましょう。なかはかなり複雑な地形になっていて、かつ出てくる敵も強力みたい」
アスナさんが説明してる、そのときだった。
ちょんちょんっ、と誰かがぼくの太ももをつついてきた。
「ん? なんだろ?」
50センチほどの、土でできた人形みたいだ。
「きみだれ?」
「さらにミスリルが存在するところには、【魔銀竜】っていうモンスターが高確率で……って、エレン? なにしてるの?」
しゃがみ込んで【それ】を見ていると、アスナさんが不審そうにぼくを見てきた。
「え、なんか変わった人形が動いてて……もしかして見えないの?」
こくこく、と女子チーム。
『【地精霊ノーム】じゃ。こういう洞窟や鉱山に住む土の精霊じゃな』
「でも精霊って見えるよね。カレンやランはアスナさんでも見えてるし」
『若様。大精霊クラスの強力な魔力を持つ精霊ならば、一般人でも視認可能です。が、ノームのようなあまり魔力を持たぬ微細な精霊は、一般人には見えないのですよ』
ノームは何人も集まって、ぼくの足の周りで踊っている。
「やっぱりエレン……あんたすごいわね。高位の魔法使いでも微精霊は見えないって聞くし」
ティナが感心したようにつぶやく。
「いいなぁ。わたしもノーム見てみたい……」
アスナさんが羨ましそうにぼくを見やる。
なんとかできないか、やってみよう。
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精霊使いの能力が発動しました。
スキル【視覚共有】をアスナ、ティナに付与します。
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「わっ! なんか急に視界が……って、見える! 見えるわエレン!」
『どうやら精霊使いが目で捉えられるものを、相手にも見えるようにするスキルのようじゃな』
『さすが若様! 精霊使いの能力を使いこなせるようになっております! 見事見事です!』
アスナさんはしゃがみ込んで、ノームを手に乗っけている。
「はぁ~~~♡ とっても可愛い♡ 可愛い可愛い♡ ん~~~♡」
ちゅっちゅっ、とアスナさんがノームにキスをしていた。
「アスナ。あんた結構可愛いもの好きなのね」
「可愛いものというか、小さくて守ってあげたくなるものが好きなの……ああ♡ 可愛いなぁ~♡」
「……なるほど……だからあんたエレンのことが好きなのね」
「なっ!? なななっ! なんのことかしらー!」
ティナ達が仲よさそうにしている。
一方で、ノームがぼくの足をくいくい引っ張る。
「どうしたの? ついてこいって?」
うなずくと、ノーム達がいったん洞窟入り口付近の壁へと移動。
すっ……とノームが壁の中に消える。
「この壁……すり抜けられるの?」
手で触れるけれど、ただの壁だった。
『若様、この壁の床下50センチほどのみが、隠し通路の入り口のようです』
ランが壁のなかに……すっ、と入っていく。
「みんな、こっちいこう」
ぼくらはかがんで、ノームの後に続く。
すると少し開けた場所にたどり着いた。
足下には、特別な図形が描かれている。
「これは転移の魔法陣だわ」
ティナがしゃがみ込んで、調べた結果を告げる。
「これに乗ると別の場所へ転移する仕組みね。どうする?」
「いこう!」
ぼくらが転移の魔法陣に乗ると、一瞬で視界が切り替わる。
そこは広いホールのような場所だった。
「す、すごいわ! ミスリルがこんなに!」
青色がかった銀色の鉱石が、ホールの壁や天井の、あちこちから生えていた。
一面の銀世界に、ぼくらはほぅ……と嘆息をつく。
「すごいじゃないエレン! ギルドがいくら探しても見つからなかったミスリル鉱脈見つけるなんて!」
「ううん、ぼくがすごいんじゃないよ。ノーム達のおかげさ」
足下でノームが、くるくると踊っている。
だが、びくんっ! と怯えたような表情になると、さっ……! とノーム達が逃げていく。
『若様、どうやら敵のようです』
ホールの奥側に、一際大きなミスリル鉱石があった。
ただし、その上に【何か】が居座っている。
「気をつけて! 【魔銀竜】よ!」
ティナが背負っていた弓を手に持って言う。
見上げるほどの大きさの、ゴツいドラゴンだ。
体表が銀ぴかで、鉱石を組み上げて作ったような体つきをしている。
『ほぅ、この魔銀竜さまの寝所に入ってくるとは……良い度胸だな、下等生物たちよ?』
びりびり、と大気が揺れる。
「知性のある竜種……SSランクのモンスター!」
「そんな! Sランク冒険者が束になってもかなわないような竜が、どうしてこんな場所に!」
青ざめた顔でアスナさんが叫ぶ。
『ちょうど良い。下等生物どもよ、退屈しのぎにつきあってもらおうか』
バサッ……! と魔銀竜が翼を広げる。
羽ばたくと、風に乗ってミスリルの鉱石が、弾丸のように飛んできた。
ズドドドドッ……! と激しい音を立てて、頑丈な迷宮の壁や天井をえぐりとる。
『ぬはは! あっけない最後であったなぁ……!』
「大丈夫、みんな?」
『な、なにぃいいいいい!?』
ぼくは右手を前に出して言う。
その肩に、不死鳥が乗っている。
ミスリルの弾丸はぼくらを傷つけることはなかった。
『そんなバカな!? あり得ない! 全てを貫く強硬度の弾丸だぞ!?』
「でも、不死鳥の炎にはかなわないみたいだね」
攻撃の瞬間、ぼくは2人のまえに立って、不死鳥の炎を展開したのだ。
『くっ……! 人間ごときが! これでも食らえ!』
魔銀竜が大きく口を開く。
魔力が集中して、そこに巨大なミスリルの弾丸が形成される。
ドゥ……! と先ほどより巨大で、かつすごい勢いの弾丸が飛んでくる。
「【不死鳥の火矢】!」
ぼくの体から紅蓮の炎が吹き上がり、それは矢となって射出される。
ミスリルの巨大な弾丸をまるごと溶かし、そのまま魔銀竜の土手っ腹に激突。
激しい音を立て、魔銀竜は倒れ伏した。
『なんと……強力な炎……ばけもの……か』
魔銀竜が事切れると、ぼくは安堵の吐息をつく。
「す、すごいわエレン!」
アスナさんが、ぼくをむぎゅーっと抱きしめる。
「SSランクを単独で一撃で倒すなんて、ほんと、あんた規格外すぎるわね。さすがだわ」
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