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29話 貴族の襲来



 パーティ・ホームを手に入れた。


 ぼくの数日後の朝。


「若様。屋敷に来客です。【ランページ男爵】の当主が、若様を呼んでおります」


 ランが忍びお姉さんの姿で、ぼくの部屋にやってくる。


「誰?」


「この屋敷に元々住んでいた貴族でございます」


 元々住んでいた土地神様の社を壊して、勝手にお屋敷を建てた酷い人か。


「何の用事だろう?」

「どうやらすごい剣幕です。ご留意ください」


「わかった。ありがとう」


 ランはオオカミの姿に戻って、ぼくの後ろからついてくる。


 玄関ホールでは、高そうな服を着た、太っちょな男がいた。


 この人がランページ男爵か。


「おまえが屋敷を買ったガキだな!?」


 男爵がぼくを見るなり、急に怒りをぶつけてくる。


「なにをグズグズしておった! 貴族であるこのワタシがわざわざ足を運んでやったというのに! 待たせるとはどういう了見だ!」


『なんという横暴な男でしょう。アポイントもなく、こんな朝早くに来ておいてその態度! かみ殺してやりましょう!』


 ぼくはランの頭をなでて、怒りを収める。

「初めまして、ぼくはエレン・バーンズです」


「ふんっ! 名乗らずとも良い。卑しい身分のガキの名前など覚える気はないからな」


 ランが歯をむいて、ぐるると威嚇する。

 

「い、犬をワタシの屋敷で飼うな! 犬クサくなるだろうが!」


「ランは犬じゃありません。大事な家族です。それに、ここはあなたの屋敷ではありません。ぼくがお金を払って買いました」


 フンッ! とランページ男爵が鼻を鳴らす。


「なにをバカなことを。ここはワタシの屋敷だ。荷物をまとめてさっさと出て行け」


 しっし、と野犬を追い払うように、男爵が手を振る。


「横暴すぎます! 勝手に来て出ていけだなんて! それにここはぼくの家だ! あなたに出て行けなんて言われる筋合いはない!」


「やかましい! 平民が口答えするな!」


 男爵はぼくに近づいて、ドンッ! と突き飛ばす。


『貴様ぁ! 若様にそのような非道! 万死に値するぞ!』


 ランは毛を逆立て、口を大きく開く。

 

 ぼくが止めるまもなく、風の魔法を発動させる。


 男爵は木の葉のように、屋敷の出入り口から吹っ飛んでいく。


「ぐわぁあああああ!」


 ベシャッ……! と男爵が顔から地面に激突した。


「き、貴様ぁ! なにをする! わ、ワタシは貴族だぞ!」


『だからなんだ? 我が主に手を出したのは貴様だろう?』


 顔を真っ赤にして男爵が叫ぶ。


「もう許さん! おい! 出てこい護衛ども!」


 屋敷の外には、たくさんの馬車が待機していた。


 馬車の周りには、男爵がカネでやとった護衛の人たちがいた。


「あの無礼なガキを殺せ!」


 そのときだった。


 カッ……! とぼくの前に、光り輝く何かが出現した。


「きみは……この間の土地神様じゃないか?」


========

【土地神】の神霊核(ハイ・エレメント)を獲得しました。


【土地神のスキル(SSS)】を獲得しました。


========


「ひ、怯むな! 殺せ!」

「土地神様、力、借りるね!」


 ぼくは手を地面について、土地神のスキルを発動する。


 突如。

 ぐらぐら! と強く地面が揺れ動きだした。


「な、なんだぁ!?」

「男爵様! 地震です! 伏せて!」


 護衛の人たちがその場に伏せる。

 

 男爵はその場で転び、強く腰を打った。


 やがて、地震が止まる。


「ひぃ……! うひぃい……!」


 目から涙を流し、男爵が情けない声を上げる。


「なんだったんだよぉ……今のは……?」


「土地神様の怒りだ!」


 ぼくと土地神さまは、尻餅をついている男爵の元へ行く。


「あなたが土地神様の社を壊して、勝手に屋敷を建てただろ! 謝って!」


「な、なぜワタシが謝らなくてはならない! 地主に金は渡した!」


「お金の問題じゃないよ。先に住んでいるひとがいたら、まずは挨拶しにいくのは基本でしょ? 貴族のくせに常識もないんだね」


「う、うるさい黙れぇ! くそっ! ぶっ殺してやる!」


 男爵は懐から杖を取り出す。


「食らえ! わが貴族の家に伝わりし秘伝の魔法!」


 しーん……。


「なっ!? どうした!? なにがおきている!? 魔法が発動しないぞ!」


========

精霊使いへの敵対行動を感知しました。


ランページ男爵から精霊の加護を剥奪します。


→【豪商】、【貴族】の精霊核(エレメンタル)を剥奪します。


→スキル【人脈形成(S)】を失います。


→スキル【不祥事隠蔽(S)】を失います。

→etc.……。


========


「くそっ! こうなったら国王にこのことを報告し、国家反逆罪でこのガキをとっ捕まえて……」


 そのときだ。


「男爵さまぁああああああああ!」


 息を切らしながら、男爵の元へ、召使い風の男が駆けつけてくる。


「大変でございます!」

「何だ!? 今ワタシは忙しいんだ! 後にしろ!」


「そ、それが国王陛下から緊急の書状が!」

「なんだと!?」


 バッ! と男爵が書状を受け取る。

 さぁ……と顔色が、真っ青になった。


「い、今すぐ王城へいくぞ! 【釈明】しにいかねば!」


「釈明?」


 ドスドス! とランページ男爵が立ち去っていく。


「いずれまた来る! そのときまで首を洗って待っておけ!」


『次また若様のところへきたときは、このフェンリルの牙で貴様をズタズタに引き裂いてやる! 覚悟しておくのだな!』


 男爵はビクッ! と萎縮するが、しかしすぐに立ち去っていった。


 屋敷の前にあった馬車が、ぞろぞろと走り去っていく。


「ありがとう、ラン。土地神様も」


『もったいなきお言葉でございます』


 土地神様は笑って、首を振るった。

 すぅ……と姿を消した。


 こうして、貴族襲来の騒動は、いちおう収束したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ザマァのテンポ早すぎて好き。精霊使い怖すぎ((((;゜Д゜)))))))
[気になる点] 【貴族】の精霊核に【不祥事隠蔽(S)】が搭載されてる件
[気になる点] >『次また若様のところへきたときは、このフェンリルの牙で貴様をズタズタに引き裂いてやる! 覚悟しておくのだな!』  あ、フラグだ。(違うかな?)
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