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206話 新人冒険者



 勇者とうさんのような英雄になるため、ぼくはトーカの街にやってきて、冒険者をすることになったよ!


 まずは冒険者に登録したところ。


 受付カウンターにて。


「おねえさんっ、さっそくお仕事ください!」


 受付嬢のお姉さんは、何だか知らないけど動揺していた。

 なんだろう?


 ただトカゲの死体を提出しただけなのにね。ワイバーンって言ってたけど。


「そ、そうね……じゃあシンラくん。まずどんなお仕事したい?」


 お姉さんがぼくの前に依頼書を置いてくれる。


 ざっと依頼書に目を通し、1枚を手に取る。


「はい! シンラ・バーンズ! これやります!」


 依頼書をお姉さんに手渡すと、目を丸くする。


「えっと……森に薬草拾い? え、こんな初心者向けのクエストで良いの?」


「もちろん! ぼく、初心者なので!」


 今日冒険者になったばかりだからね。


「え、えっと……でもシンラくん、Bランクのワイバーン倒すくらい強いのよ? こんな新人の仕事じゃなくても……」


「ううん、これがいいんです! 父さん言ってました、最初は地道にいけって。どんなクエストでも、困って依頼しているものなんだから、あなどっちゃだめだよって!」


「そう……いいお父さんね」


「はい! だいすきです! ぼくの目標です! いつか……父さんみたいな、最高の英雄になるんだっ」


「ふふ……そうね。わかったわ。じゃ、薬草拾い、よろしくね。場所はこの街からほど近い街で、薬草は10キロとってくること。OK?」


「オッケーオッケー! がんばるぞー!」


 と、そのときだった。


「あーあー、情けねーなー」


 隣に、ぼくと同じくらいの女の子がいた。

 赤い短い髪、勝ち気な目。


「薬草拾いで喜ぶなよ、いかにも新人って感じがして、なめられちゃうぜ?」


「きゃ、キャロちゃん……やめなよぉ……」


 2人組の冒険者のようだった。

 勝ち気そうな、キャロちゃん。

 そして内気そうな……眼鏡の、魔法使いのローブを着ている女の子。


「きみ、だれ?」

「アタシはキャロ! こっちはラーラ。憶えておいて損はねえぞ」


 赤髪のキャロちゃんが胸を張る。


「きゃ、キャロちゃんだめだよ……初対面の人にそんな態度取っちゃ……うちらも新人なんだし……」


「う、うっさいラーラ! これからアタシらはビッグになっていくんだから、いいのっ」


 なるほど、2人は友達みたいだ。


「はじめまして、ぼく、シンラ! 君たちも冒険者になるの?」


「なるの、じゃない! なったの、あんたより先にね。だからアタシらは先輩だから! そこんところよろしく」


「きゃ、キャロちゃーん……先輩って、この子の10分前に登録したばっかりでしょー?」


「あーもううっさい! いいんだよ、先に入れば先輩! だろ、シンラ?」


 その通り。


「うん! よろしく先輩!」

「ほおぉう……殊勝なヤツじゃあないか。アタシが仲良くしてやンよ」


「うん!」


 さっそく知り合いができたぞっ。

 これも父さんが言っていた通りだっ。

 都会に行けば友達がすぐできるよって!


「アタシらはゴブリン退治に行くんだ」

「へえ! ゴブリン!」


「ふっ……知ってるか? この凄さが」

「ううん、ぜんぜん!」


 ずっこけるキャロちゃん。


「ぼく、ごぶりんって見たことないんだー」

「どんだけ田舎から出てきたんだよ! ったく、いいか、新人ってのはだいたい、ゴブリンをなめてかかって痛い目に遭うんだよ」


 へえ、そうなんだ!

 強いモンスターなんだね!


「でもアタシは違う! 新人だけど、アタシら最強だから、ゴブリン退治だって余裕でこなせるのさっ」


「すごい! かっこいー!」


 ぼくはパチパチと拍手する。

 キャロちゃんは照れていた。


「きゃ、キャロちゃん……やめとこーよ。女2人じゃ、荷が重いよゴブリン退治はぁ~」


 一方でラーラちゃんはちょっと自信なさそう。


「大丈夫! だって1匹倒すだけでしょ? 余裕さ!」


「で、でも……何か予想外のトラブルが起きたら……」


「だーいじょうぶだって! 心配性だなぁ! 絶対なんもないって!」


 自信たっぷりに笑うキャロちゃん。


「あ、そうだ!」


 一部始終を見ていた受付嬢のおねえさんが、声を上げる。


「ねえシンラくん、キャロちゃん。よければパーティ組んで、合同でクエストやらない?」


「「パーティ?」」


 ぼくとキャロちゃんが首をかしげる。


「ギルドとしても、本当はキャロちゃんたち新人に、最初にゴブリン退治なんてやらせたくないのよ」


「ほ、ほらぁ~……」


 ラーラちゃんが辞めさせようとしている。

「でも男の子がいればいいかなって。だから、薬草拾いとゴブリン退治、同時にやるの。幸いにして、どっちも同じ森だからね」


「「なるほど!」」


 パーティを組んで冒険……父さんも母さんとそうしてたって聞く。


 冒険者に、なったんだなぁって感じがあって、いいな!


「ぼくはいいですよ! キャロちゃん、いっしょに冒険しようよ! ね!」


 ぼくが強く言う。

 うぐ……とキャロちゃんは、なぜか知らないけど顔を赤くする。


「し、仕方ないなぁ! 特別だぜ? くんでやンよ」


「やったー!」


 こうしてぼくはキャロちゃん達とパーティを組んで、初クエストへと向かうのだった。


    ★



「ちょっとシンラ、ちょっと待って!」


 僕たちがいるのは、街からほど近い森の中だ。


「え、どうしたの?」


「いやどうしたの、じゃないよ! なんだよこれ!」


 キャロちゃんが指さす先には、2つの山ができていた。


 1つは、薬草の山。

 もうひとつは、緑のモンスターの死体の山だ。


「薬草と……なんかモンスター?」


 モンスターにしては弱すぎるから、動物かも知れない。


「あのさ……アタシがちょっとトイレいってるあいだに、なにがあったんだよ、なあラーラ!」


 キャロちゃんはラーラちゃんの肩を揺する。


「す、すごいよキャロちゃん、この子!」


 目を輝かして、ぼくを指さすラーラちゃん。


「ものの数分で、薬草を風魔法で一瞬で取ってきたの! しかも雑草ときちんと区別して。そのあとにゴブリンの群れが襲ってきたんだけど、それも魔法でズバッと一撃で倒したの! すごいわ!」


「ま、まじかよ……ラーラが嘘言うわけないし……ま、マジなのか?」


 ふたりがぼくを見る。

 キャロちゃんは、目を丸くして、ラーラちゃんは、輝かせている。


「え、ぼく……何かやっちゃいました?」


 ふたりは顔を見合わせて、うなずく。


「ラーラ、こいつ……やべえやつだ」

「そ、そうだよキャロちゃん。でも……強いよ」


 うんうん、とうなずく。


「いやいや、ぼくなんてまだまだだよ。父さんと母さんは、もっと強いよ!」


「「どんな化け物なの!?」」


 あれれ、なにかぼくおかしなこと言っただろうか……?

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