202話 争いの終わりと新たなる始まり【前編】
クトゥルーとの戦いを経て、ぼくは地上へと戻ってきた。
郊外の草原にて。
「若様ぁあああああああああん!」
「ランッ! ただいま!」
神狼のランが、人間の姿で、わんわんと泣きながら抱きついてくる。
「若様の帰りを、ずっとずっとずぅっとお待ちしておりましたー! うわーん!」
ぐすぐすと鼻を鳴らすランの頭を、ぼくはなでる。
「いっぱい心配かけてごめんね」
「いいえ! 若様ならば、必ずや世界を救うと信じておりました!」
「まったく、忠臣じゃなおぬしは」
ぼくの生み出した精霊、不死鳥のカレンが、苦笑しながら近づいてくる。
「カレン。それにみんなも、戦ってくれてありがとう」
母さんに父さん、サンダルフォンさんにふくろうさん。
それに、アビーを初めとする精霊達が、草原に集結している。
「それでね……みんな、聞いて欲しいんだ。これからのことなんだけど」
ぼくは後ろに立っている、ルルイエさんとクトゥルーを手招きする。
皆の顔に緊張が走る。
特にクトゥルーは、敵として戦ったことのあるからかな。
皆警戒していた。
「安心して。クトゥルーは、心を入れ替えたんだって。ルルイエさんと一緒に、世界をよりよい方向へ持っていくことを約束してくれたんだ」
ぼくはクトゥルーを見やる。
彼はうなずくと、深く頭を下げた。
「ごめんなさい」
ただ一言、みんなにそう言った。
「兄共々、本当に申し訳ございませんでした!」
ルルイエさんもまた、みんなに再度謝罪する。
「みんな、お願い。ふたりを許してあげて。やりなおすチャンスを、与えて欲しいんだ」
一度の失敗で、すべてが終わりなんて間違っている。
過ちを犯したら、反省して、新たな一歩を踏み出せば良い。
「お願いします、みんな!」
ぼくも二人ともに、頭を下げる。
しばしの、沈黙があった。
「エレン。顔あげな」
「母さん……」
カルラ母さんが、肩を叩いて言う。
「あいつらの顔が、返答が見れないじゃあねえか。なあ?」
アスナさん達は……みんな、笑ってうなずいていた。
「エレンが言ったんじゃ、許さないわけにはいかないじゃない」
ティナがため息をついて言う。
「若様の決定にみな従います!」
精霊達もまた、ルルイエさんとクトゥルーを許してくれるみたいだ。
「よかったね、ふたりとも!」
兄妹は、ぼくの前に膝をつく。
「ありがとう、心優しき精霊の勇者よ」
「我ら精霊王、誠心誠意、この世界のために尽力することを誓います」
こうして。
長い長い争いは、終わったのだった。




