200話 決着【後編】
……クトゥルーは目を覚ます。
「な、なんで……?」
疑問が口をつく。
そう、自分は生きていたのだ。
否、生かされたのだ。
宇宙空間にクトゥルーが浮かんでいる。
その姿は、魔竜に体を食われる前のもの。
「目が覚めたかい」
「ルル……どうして、ボクは……生きてる……?」
「ふん。勘違いしちゃ困るよ。別に君は許されたわけじゃないさ。……僕もね」
ルルイエが微笑む。
彼女の膝の上に、クトゥルーは寝かされていた。
「僕も君も、たくさんの人に迷惑をかけすぎた。このまま死ぬのは、無責任だよ」
「……ボクに、生き恥をさらせというのか?」
「ばっか。違うよ。残りの人生、精一杯、あの星に住まう人々のために頑張るんだよ」
ルルイエが見やる先には、蒼く輝く星があった。
「生きてこの世界に尽くすこと。それが、君と僕に与えられたペナルティさ。……一人だけ死んで、楽になろうとするなよ……兄さん」
「ルル……」
ルルイエは頭を下げる。
「ごめんね、兄さん。あなたが精霊王の力に、こだわっていたのに……何も知らなくって、ごめん」
妹の謝罪を前に、クトゥルーは戸惑うばかりだ。
自己中心的な妹が、他人に理解を示し、そして頭を下げている。
精霊として、人の何倍も長く生きてきて、その間、一度たりとも自らを省みてこなかった……妹が。
短い間に、ここまで変わるとは。
「……エレンのおかげか?」
「そう。あの子に気づかされたんだ。自分の間違いにね。兄さんも、そうなんでしょ?」
「……ああ。嫌と言うほどにな」
最後の最後、エレンは殺そうと思えば殺すことは出来はず。
でも、そうしなかった。
それが、エレン・バーンズという少年……否、男の生き様だった。
「力は自分のためでなく、他人のために使う……か」
「ねえ、兄さん。もう一度、やり直そうよ。ゼロから、ふたりで」
「……僕たちは、許されざる事をしたんだぞ」
クトゥルーは僕、ではなく僕たちといった。
そう、双子の精霊王は、等しく罪を犯した。
「今まで多くの人たちに迷惑をかけたし、許されないことをしたよね」
だから、等しく罰を受けようと、妹は提案しているのだ。
「きっとこの先も、自分たちがしたことは、許されないんだぞ?」
「それでも……生きていこう。消せない罪を背負いながら、迷惑をかけた数以上に……人を救っていってさ」
クトゥルーは目を閉じる。
長い沈黙があった。
そして……深く、ため息をつく。
「わかったよ」
クトゥルーは立ち上がる。
「ボクの負けだ。ボクが……間違っていた」




