198話 堕ちた神【前編】
勇者エレンに右腕を切り飛ばされたクトゥルー。
「うぎゃぁあああああああ! 腕がぁああああああ! ボクの腕がぁあああああああああああ!」
治癒魔法で再生を試みる。
だが、まともに発動しない。
「どうなっている!?」
「無駄だよ。君の魔力を、霊王の力でゼロに戻した」
「霊王……ま、まさか……!?」
クトゥルーは自らの体に秘めた、霊王の力が、抜け落ちていることに気づく。
出血した右腕から、光の粒子が流れ、それはエレンの身体の中へと入っていく。
「いやぁあああああああ! 返せぇええええええええ! それは、ボクのだぁああああああああ!」
子供のように泣きじゃくりながら、クトゥルーが突っ込んでくる。
だが明らかに威力もスピードも落ちていた。
エレンは冷静に彼の動きを見極めかわし、霊王の剣の腹で殴りつける。
「ふぎゃぁあああああああああ!」
顔面を殴打されたクトゥルーは、鼻血を流しながら、空中へとすっ飛んでいく。
「ふが……ふざ、けるな……なぜ……どうして……!?」
「簡単だよ。君が、精霊王にふさわしくないからさ」
エレンは飛び上がってきて、クトゥルーを見下ろす。
「ボクが……ふさわしく……ないだと……?」
「精霊王は、奇跡と希望を司る、精霊達の王。それは、君にふさわしくないって、なにより、精霊の皆が思ったんだよ」
エレンの周囲に、色鮮やかな光の点が集まっている。
それはこの世に存在する、精霊達のきらめきだ。
「王は、民に認められてこその王。自分のことしか考えなかった君を、一体誰が王だって思う!」
「くそ……がぁ……! 調子に、のりやがってぇええええええええ!」
魔竜を食らって手に入れた魔力を、極限まで振り絞る。
彼はここで、魔竜の保有していた魔力を全て使い切る気概らしい。
「ボクに従っていればいいんだ! 君らなんてボクの玩具にすぎないんだよぉ! 人も! 星も! 精霊もぉおおおおおおおおおおおおおお!」
吹き荒れる魔力の嵐を前に、エレンは……。
「なんだ、なんだよその、哀れみの顔はよぉおおおおおおおおお!?」
酷く、悲しそうな顔をしていたのだった。




