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24話 里長の愚行、招く崩壊



 ぼくはティナの案内で、【エルフの里】を目指していた。


 ティナ。エルフの少女。


 14、5歳くらいの外見。

 薄緑色の短い髪をポニーテールにしてる。

 小柄で、かなり幼い印象を受けるけど、長命なエルフだから年上なのかな。


「どうして里にいくの?」


「ヴィヴィアンはユニコーン、アタシたちエルフの土地に住まう聖獣よ。里長に事情を説明しないでつれていったら、大混乱を招くわ」


 ユニコーンがスリスリ、とぼくに頬ずりする。


「けどティナ。たしかエルフの里って、わたしたち人間は入れないんじゃないの?」


「その通りよ。けど大丈夫だから、ついてきて」


 ややあって。

 槍を持った見張りみたいなエルフが、ふたりいた。


「止まれ人間! ここよりエルフの領土なり! 入れば領土侵犯とみなすぞ!」


 見張りエルフが、ぼくたちに槍を向ける。


「引きなさい! 【里長の娘】・ティルティーナがこの者達の立ち入りを許可するわ!」


「「さ、里長の娘?」」


 ぼくたちは目を丸くする。

 見張り役たちは、チッ……! と舌打ちする。


「……通ってよし」


 ティナの後に、ぼくらは続く。


「……【落ちこぼれの妹】のくせに偉そうに命令すんなよカス女が」


「……なぜディーナ様は出て行かれたのか」


 ひそひそ、と背後で何かを話していた。

 聞き取れなかったけど、声の調子から、あんまり良いこと言われなかったのだろう。


 ティナはキュッ……と唇をかんでいたし。


「ティナ……だいじょうぶ?」

「ありがとう……大丈夫よ。優しいのね、あなた」


 ティナが微笑んでぼくに言う。


 その後、ぼくらはエルフの里を案内された。


 木々を改造して家が作られていた。

 露天商から子供まで、魔法を日常的に使っているような感じだった。


 ぼくらがやってきたのは、最も大きな樹を改造してできている屋敷だった。


 応接室らしき場所に通される。

 しばらくして、里長さんが入ってきた。


「ティナ。なにゆえ下等生物にんげんをこの里に入れた?」


 ぼくらに不愉快そうな顔を向けてくる。


「……エルフは人間嫌いで有名なのよ」


 アスナさんがこっそりと解説してくれた。


「里のおきてを忘れたかこの愚かな娘め!」


 ぼくらの目の前で、里長がティナの髪の毛を引っ張る。


「いたっ!」

「落ちこぼれのカスのくせに! 里長の名を勝手に使いよって! 本当におまえは【姉】とは違って出来損ないの屑だな!」


「ちょっと! 酷いじゃないですか!」


 ぼくは立ち上がって、里長の腕をひねり上げる。


「エレン……」

「触るな汚らわしいサルめ! 死ねぇ!」


 バッ……! と里長がぼくに、手を向けてくる。


「【風刃ウィンド・エッジ】!」


 しーん……。


「なにぃ!? ど、どうして魔法が発動しないのだぁ……!?」


========

精霊使いへの敵対行為を関知しました。


一時的な魔法使用権限の剥奪を行います。


警告。

二度の敵対行為は永続的な権限剥奪になるのでご注意ください。


========


「くそっ! なぜ魔法が出ぬ!」


『おろかものじゃな。あろうことか、精霊使いに手を上げるなど』


 カレンがぼくの頭の上で、呆れたように言う。


「せ、精霊使いだと!? ばかなっ! とうの昔に滅んだはずだろ!?」


『痴れ者が! ここにおわすは【エレン・バーンズ】様! この世界唯一の精霊使い様でございますよ!』


 ランが胸を張って言う。


「ふぇ、フェンリル!? そ、それによく見れば不死鳥もつれている、だと!? ま、まさか本当に精霊使いとは!」


 バッ、と里長エレンピオスがぼくから離れる。


 ヘラッ……と気持ち悪い笑みを浮かべる。


「ようこそエルフの里へ、精霊使い様!」


「は、はぁ……」


 あまりの豹変っぷりに、ぼくは困惑してしまう。


「先ほどはお見苦しい姿を見せて申し訳ございません! すべてはうちのバカ娘のせいでございます!」


 里長はティナの頭をつかんで、ぐいっ、と下げさせる。


「もっと早く教えれば、精霊使い様に失礼を働かずにすんだものを! この愚鈍な娘め!」


「あのっ! ちょっと酷いじゃないですかっ! ティナは愚鈍じゃありません!」


「いいえ精霊使い様、この娘は里長の子供だというのに、才能もなく魔力もゼロに近いという、まさに絵に描いたような愚かな娘なのです。愚鈍と罵られても致し方ないかと」


「自分の娘に、そんな酷いこというなよ!」


 ぼくが怒ったそのとき、大気が振動し始めた。


「こ、これはせ、精霊が怒っている!? ひぃいいいい! も、申し訳ございませんぅううううう!」


 ババッ! と里長がぼくの前で土下座する。


「ティナに謝って! この人は愚鈍じゃない! 毒で苦しんでいる親友のために行動できる、優しい人なんだ!」


「し、しかし……娘に頭を下げるなど、父としてのプライドが許せませぬゆえ……」


 ギリッ、とぼくは歯がみする。


「エレン。もういいの。気持ちだけで十分よ」


 ティナが弱々しく微笑む。


「お父さん。アタシ、この里を出てくわ。エレンと一緒に旅に出るの」


「そうか。好きにしろ。二度と帰ってくるなよ落ちこぼれの屑が」


 フンッ! と里長が小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


「……ヴィヴィアンも出て行くそうよ」


「勝手にしろ。あの駄馬は、母馬と違ってわれらに恵みをもたらさぬ。お前共々どこかへ消えろ」


「……ええ、そうするわ。じゃあねお父さん。行きましょう、みんな」


 とぼとぼと肩を落とすティナ。

 ぼくは……この里長に、明確な怒りを覚えた。


========

精霊使いへの敵対行為を関知しました。


エルフ里長への罰に、娘ディーナのエレンへの敵対行為分の罰が加算されます。


里長、および領民から精霊の加護を剥奪します。


→魔力を失います。

→魔法使用権限を剥奪します。

→スキル【疫病神】を付与します。

→etc.……。


========


「な、なんだ!? わ、私の体から精霊の力がまるで感じられなくなったぞ!? い、いったいなにが起きてる!?」


 里長が急に動揺しだす。


『愚か者め。貴様はいったい誰を怒らせた? 精霊使いの不興を買えばどうなるか、エルフならば知っておろう?』


 さぁ……と里長の顔が青くなる。


「な、なにゆえ精霊使い様が怒るのですか!? わ、わたくしは娘を叱っただけ! あなた様に対しては、一切酷いことを申し上げておりませぬ!」


「ふざけるな!」


 ぼくは声を荒らげた。


「ティナを……ぼくの仲間を侮辱したじゃないか!」

「え、エレン……」


 じわり……とティナが涙を浮かべる。


「いこう、ティナ。こんなとこ、出て行こう!」


「ま、待たれよ! 待ってくだされ精霊使いさまぁ!」


 ガシッ! と里長がぼくの足にしがみつく。


「魔法の力は、われらエルフの民の誇り! もしそれが、わたくしのせいで失われたと知れ渡れば、領民と祖霊に顔向けができませぬ! なにとぞ! ご容赦くだされ!」


 ランが里長の手を、がぶっ! とかみつく。


『汚い手で若様に触れるな、無礼者!』


「……いこう、みんな」


「待って! ティナ! 謝る! 謝るからゆるして……!」


 ぼくは大翼テレポートを使って、仲間達とともに、里を後にするのだった。 

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― 新着の感想 ―
主人公の言動が気持ち悪すぎて鳥肌立った
[一言] 里長、チェックメイトだ
2022/06/14 20:22 退会済み
管理
[良い点] ツッコミどころ満載。 里に暮らしてるだけの領民の加護まで剥奪とか鬼畜すぎるw [気になる点] ユニコーンが庇って毒を受けたのも、きちんとエレンを精霊使いだと言って村に入れなかったり紹介しな…
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