20話 Sランクの証明
吸血鬼のアビーと契約したぼくは、【トーカ】冒険者ギルドへと戻ってきた。
ぼくらは受付へと向かう。
「お帰りなさいませエレン様、アスナ様」
受付嬢さんが出迎える。
「ナルシス様、今回のエレン様たちのクエストはどうだったでしょうか?」
ナルシスさんはぼくらの監督役だった。
「そりゃあ見事なものだったヨ! 素晴らしい活躍っぷりだったネ!」
アビーとの戦闘後から、ナルシスさんはぼくへの態度を180度変えていた。
「特にエレンくんはまさに逸材! Sランクパーティに……いいやぁ、Sランク冒険者にふさわしい力を持っていたネ!」
「そんなにですかっ! す、すごい……」
驚愕の表情を、受付嬢さんがぼくに向ける。
『この女はなにを驚いておるのじゃ?』
『ソロでのSランク冒険者は限られたひとしかなれないのですよ。街に1人いれば、トップギルドの仲間入り確実です』
『ほぅ、さすが犬。地獄耳じゃな』
『犬ではなく忍! かみ殺しますよこの焼き鳥!』
ぼくはランの背中をなでる。
『わふーん♡ あぁん、若様~もっとなでて~♡』
そのあいだに、ナルシスさんが、今回の認定クエストの経緯を、受付嬢さんに報告する。
「ということで、エレンくんは吸血鬼をテイムしたわけだヨ」
「そんな……今まで誰が挑んでもかなわなかった吸血鬼を、倒すだけじゃなくて従えるなんて……それが真実なら、すごすぎます……」
動揺する受付嬢さん。
「彼の冒険者としてもテイマーとしての実力も相当なものだ。すぐにSランク認定の手続きを……」
と、そのときだ。
「そんなの俺様は信じねぇぞぉ!」
ガタイのいい男冒険者が、ぼくらのもとへとやってきた。
「キミは……たしかAランク冒険者の【ノーキンス】くんだったかネ?」
「おれさまは納得いかねえ! こぉんなひょろガリがよぉ? おれさまより上のランクなんてよ!」
ノーキンスさんはぼくを見下ろして、小馬鹿にするように鼻を鳴らす。
「キミは、このナルシスの判断が間違っている……と言いたいのかネ?」
「あったりめえだろ! 見ろよこの筋肉! この素晴らしい肉体美を!」
むんっ! とノーキンスさんが腕を曲げる。
腕の筋肉が、ボコッと隆起した。
わわ、すごい……。
「このおれさまが何年頑張ってもSになれねえのに、てめえやそこのガキがSになれるのはおかしい!」
「しかしダネ……事実彼は吸血鬼と戦い下している。キミが敗北した相手じゃなかったカネ?」
うぐっ、とノーキンスさんは言葉を詰まらせる。
「ま、負けてねえ! あんときは体調が悪くて帰ったんだ! ちゃんと戦ってれば勝ってたぜ!」
ノーキンスさんは吸血鬼に挑みにいったけど、ナルシスさんみたいに部屋の中に入れなかったのかな。
「ともかくおれさまは、こんな女みたいなガキを認めねえ、ぜってえ認めねえからよ!」
ノーキンスさんが、ぼくの髪の毛を掴んでくる。
「ちょっとあなた! いい加減にして」
アスナさんがノーキンスさんの手を払う。
「あぁ!? なにしやがるこのクソアマぁ!」
「大の大人が感情的になって、子供に声を荒らげたり、手を上げたりするのは最低よ!」
「うっせぇえええ! てめえら全員ぶちのめしてやるぅうううう!」
ノーキンスさんは背負っていたハンマーを持ち上げる。
先読みスキルによると、それでアスナさんを攻撃するつもりみたいだ。
なんてやつだ!
ぼくは風神の剣を取り出し、素早く一閃させる。
「この必殺のハンマーを受けて見やがれぇええええ!」
スカッ……!
「はーっはっは! どうだこの威力ぅ! って、ぇぇえええ!? 先端部分どこいったぁ!?」
ハンマーは風の刃に斬られて、地面に落ちている。
「てめえガキ! いつの間に!」
「アスナさんには指一本触れさせないぞ!」
「くそこの……調子乗りやがってぇえええええ!」
殴りかかってくる拳を、先読みスキルで見切る。
体勢が崩れたところを、足を払う。
「ぶべっ!」
「おお! 見事な体運びじゃないか! すごいぞエレンくん!」
「ちくしょぉ……恥かかせやがってぇ! こうなったらスキルを……!」
そのときだった。
すこここんっ、と彼の体のラインに沿うように、無数の影の槍が突き刺さった。
「うひぃいいいいい!」
ぼくの前には、アビーが不機嫌そうな顔で立っていた。
「えれんをいじめる、おまえゆるさないの」
アビーの目が深紅に染まる。
「影を操るスキル……それに深紅に染まる瞳! ほ、本物の吸血鬼だぁ!」
受付嬢さんも、周りのみんなも、アビーを見て恐怖していた。
な、なんだか大事になってきた……。
「ひぎぃいい! ご、ごめんなさいぃいい!」
「ゆるさないの。おまえはえれんを殴ろうとした……ぜったいぜったい許さないの!」
巨大な影の槍が出現する。
それは超高速で回転し、ぼくが止める暇もなく、射出された。
「嫌だぁあああ! 死にたくないぃいいい!」
ぼくはノーキンスさんの前に立ち、風神の剣で、影の槍を一刀両断する。
「アビー! やめて!」
彼女の瞳が、元の色に戻る。
「ごめんなさいなの。えれんを攻撃するつもりは……なかったの」
しゅん、とアビーが肩を落とす。
「ぼくのために怒ってくれたのはわかったから。ありがとう。でも人間をむやみに攻撃しないこと。約束して?」
「わかったの。えれんの言うこと、なんでも聞くの」
良かった……事故にならなくて。
「す、すごい……すごすぎる!」
受付嬢さんがぼくに近づいて、興奮気味に言う。
「吸血鬼を従えるテイマーなんて、前代未聞ですよ!」
「「「おおー……!」」」
冒険者さんたちがぼくにキラキラした目を向けてくる。
「それに今の戦闘! さらにその高潔な精神! まさに最高峰の冒険者にふさわしい! ですよね、みなさん!」
「「「そうだそうだ!」」」
な、何だか知らないけど……認められたってこと、かな?
「エレンさまぁあああ!」
ノーキンスさんが泣きながら、ぼくにペコペコと頭を下げる。
「命を助けてくださりありがとうございますぅう! 調子に乗ってすみませんでしたぁ!」
予想以上に大事になっちゃったけど、とにかく、ぼくはSランクに認定されたのだった。
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