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146話 守護天使、海で星を洗い流すが敗北



 勇者神エレンに対して、守護天使は制裁を加えることが決定した。


 守護天使がひとり、【慈悲】の天使【ザドキエル】。


 遙か上空で翼を広げ、人間界を見下ろしている。


「ああ……なんと可哀想に……この星が泣いている……」


 つつぅ……とザドキエルは涙を流す。


「人間達がいるせいで、森は切り開かれ、大気は濁っている。ああなんと不憫なことだろう……。以前より人類を洗い流せば良いと具申していたが、基本神は人間界に直接干渉してはいけないという……」


 しかし、とザドキエルは続ける。


「今回は勇者神を名乗る不届き者を殺すという大義名分がある。この星のためだ、みな、死んでくれ」


 バッ、とザドキエルは手を上げる。


 その手には錫杖が握られた。

 しゃんっ……! と錫杖をならす。


「【慈悲なる青ケセド】」


 その瞬間……ズドドドドドッ……! と凄まじい勢いで、海の水があふれ出した。


 各地のありとあらゆる場から噴出した水は、大地を飲み込んでいく。


「これぞわが宝具【慈悲なる青ケセド】。水を司り、この星を海で洗い流すために使われる」


 宝具。

 それは守護天使達が使う、最強のアイテム。

 魔法ではなく、この世界に存在する自然現象を操ってみせる、まさに神のごとき宝。

 一瞬でこの星の海はあふれかえり、地上各地に居た生命達は沈んでいく。


「生命の起源は海と聞く。みな、母なる海で死ねることを喜びなさい」


 と、そのときだった。


 ぱっ……! とあふれかえったはずの海が消え、元に戻ったのだ。


「なっ!? そんな馬鹿な!?」


 くわっ、とザドキエルは目を見開く。


 確かに大海が大地を生命ごと飲み込んだはず。


 しかし海は消え、人々は何事もなかったかのように生活していた。


「なんだ……このちからは……!?」


 と、そのときだった。


「そこまでだ!」


 ザドキエルの前に現れたのは、小柄な男の子。


 黒衣に身を包み、黒い羽を生やしている。

 彼の名前は、勇者神エレン。

 精霊王ルルイエを完全に纏った、【霊王形態キング・フォーム】の姿だった。



「あなたは何者だ!?」

「わたしは守護天使ザドキエル。ゆえあって貴様を殺しに来た天使だ」


「天使!? 天使がどうして……どうして人間を殺すの!?」


 フンッ、と鼻を鳴らす。


「人間は汚い、醜い。生きているだけでこの美しい青い星を汚す。目障りだったのだよ」


 錫杖をエレンに向ける。


「前々から人間を殺したくて仕方が無かった。しかし大義名分がなくて困っていたところ、貴様が現れたというわけだ」


「…………」


 ぶるぶる、とエレンが肩をふるわせる。


「あなたは……天使なのに、人を平気で殺すんだね……」


「無論、人間なんぞ星を犯す害虫にすぎぬからな」


 怒りの炎を瞳に宿し、エレンは天使を見やる。


「ぼくを殺したいなら……ぼくだけを殺せば良い! 人間まで殺す必要がどこにある!?」


「うるさいぞ羽虫が! 母なる海の藻屑と消えよ! 【慈悲なる青ケセド】!」


 いずこより水があふれだし、水の竜となる。


「こやつをかみ殺せぇ!」


 だが、水の竜たちはくるり、と向きを変える。


「なっ!? 何をしている貴様ら! 敵はあっちだ……ぐぇええええええええ!」


 竜達はザドキエルにかみつく。


 体内の水のなかに、閉じ込められる。


『なぜだぁ!? どうしてわたしの言うことを聞かないぃ!?』


「あなたの宝具の使用権限を、剥奪したからだ!」


 エレンの手には、ザドキエルの宝具が握られていた。


『ば、馬鹿なぁ!? 人間ごときにその宝具が使えるはずがない!』


 天使の言葉に、エレンは沈鬱そうな表情でうつむく。


「……今のぼくは、人間じゃないし」


 ブンブン! とエレンは首を振る。


「……そんなの関係ないよ。ぼくはみんなを守る。そのためなら……! ぼくはどうなっても……!」


 キッ、とエレンは顔を上げると、錫杖を強く握る。


『な、何をするつもりだ!?』


「あなたが二度と悪さできないよう、天使の力を剥奪します!」


 ぽかーん……とザドキエルは口を開く。


『な、何を馬鹿なことを言ってるのだ……そんなこと、できるわけが……』


「【運命破棄フェイト・ディストラクション】!」


 その瞬間……。


 パキィン! とザドキエルの翼が、粉々に砕け散ったのだ。


『は………………? そんな、ばかな……うぐっ、げほぼぉ!』


 天使の体は酸素を必要としない。

 だから水の竜のなかでも、普通に活動ができた。


 しかし……。


『ぐ、ぐるじぃい……! げぼっ! だずげ、だずけ……』


 パシャッ! と水が消えて、ぐしゃりと地面に落ちる。


「げほっごほっ! ゲッ……ゲッ……そ、そんな……ばかな……」


 目を剥いて、ザドキエルは自分の背中を見やる。


「天使の羽が……消えている……ま、まさか……おまえ……!」


 声を震わせながら、ザドキエルはエレンを見上げる。


「わ、わたしから天使の力を奪ったのだなぁ!?」



 正確に言えば、【運命破棄】を使い、ザドキエルが天使であるという運命を書き換えたのだ。


 以前使った、悲劇に終わるはずの運命を、無かったことにする。


 それは【運命破棄】の持つ力のほんの一部でしかない。


 その本質は、悪人の持つ運命を書き換えるという……恐るべき能力だ。


「そんなの……人間が持って良い力を遙かに凌駕している……」


「これからは、人間として、真っ当に生きるんだ! わかったな!?」


「ひっ……! ひぃいいいいい! おたすけぇえええええええええ!」


 惨めに泣きわめきながら、元守護天使は去って行くのだった。


========

いやぁ、エレン僕に似てきたねー。

相手てんしの力を奪って、人間に堕とすなんてさ!

まさに精霊王ぼくっぽい!


夫婦は似てくるってやつかなぁ~♡

なんつってなんつって!

えへへ~♡


……さて。

ペナルティは実行しないとね。

僕はエレンと違って、慈悲深くないからさ。

大好きな夫に刃向かった罪人は、苦しんで消え失せてもらわないとね。


きゃっ♡ 夫って言っちゃった♡

えへへへ~~~~~~~~~~♡

========


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別で連載してる「不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜」のコミックス1巻が発売になりました!


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― 新着の感想 ―
[一言] エレンも「もう人間に戻ることができない」と自覚してるんだな........
[一言] 精霊王のエレンの呼び方の変化がなんかエレンの人間である刻限を示しているみたい
[一言] エレンが段々精霊王のような存在になりつつある……!?
感想一覧
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