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131話 無能の邪神を新たな力で撃破する



 ぼくたちが旅をしている、ある日のこと。


 偶然立ち寄った街にて。


「こ、これは……!?」

「酷い……みんな、死んでる……」


 アスナさんが青い顔をしてつぶやく。


 町中には、大量の死体が転がっていた。

 みんな頭部だったり、心臓だったりを潰されて、即死している。


「エレン、まだ死体が新しい。今なら蘇生ができる!」


「う、うん! わかった!」


 と、そのときだった。


「た、助けてくれぇ~!」


 建物の間から、黒い髪の一般人が、ぼくらに向かって走ってくる。


 何の変哲もない、一般人さんだ。


「どうしたんですか!?」


 ぼくはその人の元へ行く。


「じゃ、邪神だ! アーカムを名乗る邪神が、この街の人間を皆殺しにしたんだ!」


「なんだって!?」


 新しい邪神の出現に、ぼくたちは戦慄する。


「命からがらおれだけは助かったんだ。たのむ! 助けてくれぇ~!」


「わ、わかりました! とにかく、今は蘇生を優先……」


 と、そのときだった。


 ぼくは高速で翼を生やし、飛翔する!

 ブンッ……! とさっきぼくがいた場所に、刃が通りすぎていった。


「はぁ……! はぁ……! はぁ……!」


「ほぉ、今のを避けてみせるのか。存外、勇者もやるみてーだな」


 一般人の彼が、ナイフ片手にぼくを見上げる。


「い、いきなりなにをするんですか!?」

『エレン、こやつ邪神やもしれぬ』


「なっ、なんだって!?」


 邪神は特有の、邪悪な魔力を発する。

 だが彼からは、魔力を一切感じられない。

 殺気もなく、しかし今ぼくは殺されかけた。


 そこにいるはずの悪を、認識できない。


「気付くのがおせえよ、勇者くん? そう、オレ様が邪神アーカム」


 邪神と名乗られても、どう見ても人間にしか見えなかった。


「邪神……アーカム」

「そう、オレ様はおめーがだいっきらいな邪悪な神だぜ? ほら、かっかってこいよガキぃ~」


 アーカムは両手にナイフを握っている。

 だがそれ以外は、本当に一般人だ。


 ……もし、邪神を自称する一般人だったら。


『若様! 危ない!』


 いつの間にか、ぼくの前に神狼フェンリルのランがいた。


 彼女は胴体を切断されて、その場に倒れ伏す。


「ら、ラーーーーーーーン!」


 なにをされたとか考えるよりも、大事なパートナーが致命傷を負ったことに、ぼくはパニックになっていた。


「エレン! 気を確かに! やつは早いわ! とんでもなく」


 アスナさんが魔銀の剣を手に、ぼくらを守るようにして立つ。


 アーカムは一瞬で別の場所に立っている。

「そんなもんか勇者くん?」

「そんなわけないでしょ! 【煉獄業火球ノヴァ・ストライク】!」


 エルフのティナが極大魔法を放つ。


 アーカムは邪悪に笑うと、高速で移動し、業火の球めがけてナイフを投げつける。


 バキィン! と音を立てて、魔法が破壊された。


「そ、そんな!?」

「せやぁあああああ!」


 アスナさんが魔銀の剣で斬りかかろうとする。


「おせーんだよ、タコ」


 一瞬で、アーカムが彼女の背後に回っていた。


 ぶしゅっ……! と血をふきだし、アスナさんとティナが、地面に倒れる。


「ふたりとも! くっ! 【不死鳥の火矢フェニックス・アロー】!」


 手から離れた炎の矢を、アーカムはナイフを振りおろし、破壊する。


「ばーか! オレ様に奇跡の力はきかねえんだよ!」


 ダンッ! とアーカムがぼくに接近する。

 飢えた狼よりも獰猛に、ナイフでぼくを突く。


 ぼくは聖剣でナイフの一撃を防ごうとする。


 だがアーカムが間合いに入った瞬間、聖剣の輝きが失せた。


「なっ!?」


 バキンッ! とアーカムは聖剣をナイフで破壊し、逆の手のナイフでぼくの目を突こうとする。


 背中に不死鳥の翼を生やし、空中に逃げることでそれを回避。


「あめえんだよ!」


 シュッ……! とアーカムはナイフをぼくの背中の翼めがけて放つ。


 ボッ……! と翼が破壊され、ぼくは地上へと落下した。


契約破棄リリース……? まさか、ぼくと同じ、権限剥奪の力を使えるのか!」


「ハッ! そんな上等なもんじゃあねえよ。オレ様はな、生まれつき【奇跡を寄せ付けない体質】なんだよ」


「奇跡を……寄せ付けない?」


「この世界では誰しもが、精霊の加護を受ける。だが、オレ様はそれをもらえなかった。否、受け付けなかったんだ。オレ様の体は、触れるだけで魔力や魔法、スキルといった奇跡の力を殺してしまう」


奇跡殺しルール・ブレイカー】、それが彼の能力の名前だという。


「最初は世界を憎んだぜぇ。誰もがスキルや魔法を享受できる世界だからなぁここは。けれど道具は使いよう。こうして奇跡の力に頼ってるバカを殺すことができる……こんなふうにな!」


 凄まじいスピードでアーカムは近づくと、ぼくに向かって連撃を放つ。


 ぼくは寸前で全て避ける……けど、避けるので精一杯だ。


 回避系スキルの精霊を召喚しても、アーカムによってかき消される。


 純粋な体術での勝負となるが、向こうの方が勝っていた。


「おらぁ!」

 

 バキィ! と彼の蹴りがぼくのミゾオチに入り、吹っ飛ぶ。


「カハッ……! ゲホッ! ゴホッ!」

『エレン! すぐに治癒を!』


「ばーか、オレ様が近くにいる限り、治癒の力もかき消されるんだよ」


 奇跡殺しルール・ブレイカーという技名がついているけれど、これは彼が自分と向き合い、不幸マイナスと向き合った結果身に付けた力だろう。


 ただ奇跡を寄せ付けない体質を、ここまで凄い技にしたんだ。

 

「どうして……」

「あ?」


「どうして!? あなたは、弱さを知っているのに、弱い人たちを平気で傷つけるんだ!」


 ぼくはザックのパーティに入る前、本当に弱かった。

 そのとき、アスナさんが弱者ぼくを守ってくれた。


 彼女は言っていた。

 自分もまた昔は弱く、誰かに守ってもらったから、今度は自分が誰かを守るんだって。


 ぼくだってそうだ。

 自分が弱く、アスナさんに守ってもらって今がある。

 だから、みんなを守る。


「あなた昔は弱かったのでしょう!? 誰かに守られて今があるのに、どうして身に付けた力で他人を傷つけるんだ!?」


「はぁ~? んなもん、単純な理屈だよ。憂さ晴らしだよ」


「なっ……!」


 にぃ、とアーカムは笑う。


「おまえが言うとおり、オレ様も昔は弱者だった。いっつも他人にバカにされてよぉ。だから、強くなってオレ様をバカにしたやつら全員に皆殺しにしてやるって決めてたんだよぉ!」


 ゲラゲラと邪悪に笑う姿は……ああ、邪神なんだなと思った。


「爽快だったぜぇ! 今まで無能だと見下していた相手に、圧倒的な力の差を見せつけられて死んでいったバカなやつらのアホ面はぁ! 何度も見てもやめらんねー!」


「だから……今も殺しを、続けてるのか……?」


「もちろん。そのために技を磨き、強くなったんだ。悪いのはオレ様じゃないぜ? オレ様になにも与えなかった、世界が悪い」


 ぎゅっ、とぼくは拳を強く握りしめる。


「ふざけるな……! 悪いのはおまえだ! 誰であろうと、どんな理由があろうと! 他者の命を理不尽に奪っていい権利なんて誰にもない!」


「ハッ! 偉そうに御託並べてるけどよぉ! オレ様に防戦一方だったの忘れるんじゃねえぞ!」


 凶悪な笑みを浮かべて、アーカムが言う。

「所詮てめえなんぞ借り物きせきの力で強くなっているだけのザコだ! それがなくなりゃただの無能だ! オレ様と同じ、けどオレ様と違って弱いけどなぁああああああ!」


 だんっ! とアーカムが地面を蹴って、ぼくに高速で接近する。


「……カレン、【アレ】をやろう」

『うむ、エレンよ。力を合わせ、彼奴を倒すぞ!』


 ぼくは折れた聖剣で、アーカムのナイフを受け止める。


「なっ!? ば、バカな……スキルによる補正も、魔力による身体強化も打ち消したはずなのに、どうして受け止められる!?」


「たしかに、今のぼくには奇跡の力はない……けど! ぼくには力を合わせて戦う、仲間がいる!」


 ごぉ……! と肩に止まった不死鳥カレンから、莫大な炎が吹き荒れる。


 聖なる炎がぼくとカレンを包み込む。


 やがて、炎が消えると……ぼくは【変身】していた。


「なっ!? そ、それはまさか……【霊装】!?」


 ぼくは純白の衣装を身につけ、元通りになった聖剣を手にしている。


 不死鳥の外套マントを羽織り、髪の毛は紅蓮の色となって、長髪になっている。


「神や精霊など、霊的存在と一体化することで、神に等しい力を得るという究極奥義!? バカな! こんな子供に、こんな高度な技術扱えるわけがない!?」


『エレンをただの子供と侮ったな。この子は精霊王に認められた、選ばれし特別な子。究極奥義さえも彼の前ではただの技術よ。さすがはエレンじゃ!』


 カレンと一体化したことで、体の奥から力が湧いている。


 バッ……! と剣を振ると、火の粉が街全体に飛び散る。


 それは死んだ人たちを蘇生させた。


『剣の一振りで蘇生の力を行使するとは、見事じゃエレンよ!』


「くっ! だからなんだ! 何度だってぶっ殺してやるだけよ!」


 アーカムが高速で走ってくる。

 さっきまでは目で追えなかった攻撃を、しかし、ぼくは完全に捕らえていた。


 ガキィイイン! と聖剣とナイフが火花を散らす。


「ぐっ! このっ! な、なんだこのパワー!」


『当然じゃ。今のエレンは一時的だが神に等しい力を持っている。これはスキルや魔法とは違う、純粋な彼のパワーじゃ。奇跡の力でないので消せぬは道理!』


「たぁあああああ!」


 剣を振り抜くと、アーカムは吹き飛んでいく。


「く、くそがぁ! 人間の分際で神になるだと! ふ、ふざけんな!」


 地面に落ちて、頭から血を流しながら……アーカムが声を荒らげる。


「オレ様だって! 神になるためには長い長い修練が必要だった! 血のにじむ努力を積んできた! それを! てめえは物の一瞬で習得するだと! 反則だ!」


 懐から無数のナイフを取り出し、それをぼくに投げて寄越す。


 けどぼくは逃げない。

 真正面から、剣を振り下ろす。


 聖剣の一撃は聖なる炎となって、ナイフを溶かす。


「バカなぁ!? 奇跡殺しの力が付与されたナイフだぞ!? なぜ炎がかき消せない!」


『くどい。この炎は神の炎。貴様が消せるのは神が与えた力のみ。神が本来持つ力は消せぬのだよ。それをエレンは見抜いていたのじゃ、さすがエレンじゃ』


「ち、く、しょぉおおおおおおお!」


 炎はアーカムを包み込むと、そのまま空の彼方へと消し飛ばしたのだった。


========

はぁ~~~~……………………。

いや、ね。

エレンが勝ったのはね、うれしいよ。


けど……ずるい。

初めての合体を、娘に取られた。


僕だってエレンと合体したい! 一緒になりたい! 混じり合ってくんずほぐれずしーたーい!

あー! もうもうっ、初めて欲しかったなぁ~……。


ま、仕方ない。

いつかエレンと合体すればそれでいっか。


さてアーカムくん。

ペナルティのお時間だ。

準備はOK?

========

【※お知らせ】


先日投稿した短編が好評だったので、新連載としてスタートしてます!


「無駄だと追放された【宮廷獣医】、獣の国に好待遇で招かれる~森で助けた神獣とケモ耳美少女達にめちゃくちゃ溺愛されながらスローライフを楽しんでる「動物が言うこと聞かなくなったから帰って来い?今更もう遅い」」


https://ncode.syosetu.com/n1158go/


リンクは下に貼ってありますので、そちらからも飛べます!


頑張って更新しますので、こちらもぜひ一度読んでくださると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでカレンは奇跡殺しで弾かれないんだ? 神の力を打ち消せないなら邪神達がコイツにペコペコしてた理由がわからん [一言] やっとまともに戦う敵が出たと思ったら結局ワンパターンだった..…
[気になる点] ぬ○りひ○んの○の鬼纏かな? [一言] あの精霊王と合体したら体中の匂いクンカクンカされてエレンの下○○の○○○を覗いてグヘへしそう
[一言] 上条さんじゃねえか
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