124話 邪神教団
ぼくが転生者ハジメを倒してから、しばらく経った。
アスナさん、ティナとともに、ぼくは旅を続けていた。
ハジメたちのような殺人鬼たちには、最近めっきりと合わなくなった。
けれど、まだまだ世の中には困っている人がたくさんいる。
ということで、ぼくの旅はまだ終わらない。
ある日のこと。
山の中で橋にさしかかっていたところ、中腹で男数名と、女の子が揉めていた。
「さぁ……! 来るんだ! お父さんもお母さんも待っているぞ!」
「いや! 離して!」
「ええい、往生際が悪い……あっ!」
揉め合っているとバランスを崩し、女の子が橋から落ちてしまう。
「きゃああああ!」
ぼくは不死鳥の翼を生やして、女の子との元へと飛ぶ。
「だいじょうぶ?」
「う、うん……ありがとうっ」
ぼくは炎の翼を広げ、橋まで戻ってくる。
「ほ、炎の翼に赤い眼……貴様! 勇者エレンだな!」
えっ!? と女の子が驚愕の表情を浮かべる。
一方でティナは首をかしげた。
「今のエレンは外見を変える魔法を使っているはず……なんでバレたのかしら?」
女の子をアスナさんにあずけ、ぼくは男達に相対する。
「女の子に酷いことするなんて最低だぞ! ぼくが相手だ!」
「「ひっ……!」」
男達は体を震わせて、一目散に去って行った。
『さすがエレンじゃ。戦わずともそこらのザコなら、名前を聞いただけで震え上がらせるなんてな』
ややあって。
「こんな山の中で何をしていたの?」
アスナさんが問いかけると、女の子は言う。
「お父さんとお母さんが……悪い宗教にはまっちゃったの」
「宗教?」
こくり、と女の子がうなずく。
「【邪神教】って宗教。みんなで、教団支部に修行? しに山の中にきたの」
『どうやら新興宗教らしいですね。入団すれば邪神様の力が手に入る、という触れ込みです』
とてつもなく胡散臭そう。
それに子供にあんなふうに乱暴に扱うなんて、ひどい教団に違いない。
「わたし……怖かった。あそこ。だからみんなで逃げようって……お母さん達に言ったの。けど……嫌だって、断られて。誰にもたよれなくって……だから……」
ぐすぐす、と女の子が涙を流す。
アスナさんがよしよしと頭をなでた。
「酷い、家族の絆を引き裂くなんて……」
ティナが吐き捨てるように言う。
「大丈夫、ぼくに任せてっ」
「ほんとぉ……?」
「うん! 悪い教団を倒してあげる!」
ということで、ぼくは女の子に道案内してもらい、邪神教団の支部がある山奥へと向かった。
一見するとただのコテージだった。
けれど近くに武装した男達が徘徊している。
ぼくは離れた場所で様子をうかがう。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫、任せて。アスナさん達はこの子をお願い」
ひとりだけで、ぼくは教団の建物へと向かった。
「お、お兄ちゃんっ、あぶないよっ」
「大丈夫よ。私たちのエレンは、最強なんだから」
ティナに言われて照れくささを感じながら、ぼくは建物へと近づく。
「あぁん? なんだてめえ……?」
「ここに監禁してる人たちを解放してください!」
「はぁ? だれが……って、勇者エレン!?」
まただ。
またぼくが正体を明かす前から、向こうが気づいてきた。
「お、おい! 支部長様を呼んでこい!」
教団員が建物に引っ込むと、すぐに【太った男】がやってきた。
「よほほっ。これはこれは勇者様ではあーりませんかぁ~?」
にやにやと笑いながら、太った男が言う。
「あなたは、何者ですか?」
「よほほっ、わたくしは邪神教団の支部長【キンマン】と申します」
キンマンはでっぷり太った腹をなでながら言う。
「それで? 勇者様がはるばるこんなところまで、一体何の用事ですかぁ?」
「ここにとらわれている人たちを解放してください」
「これは異な事をおっしゃりますなぁ~。彼らはみな自分の意思でここに来ているのですぞぉ」
ぼくは首を振る。
「ここから逃げてきた女の子に出会いました。それに、ここからは邪悪な気配を感じます。【洗脳】のスキル……使ってますね」
うぐっ、とキンマンが言葉を詰まらせる。
『な、なんとエレンよ。おぬし目に見えぬスキルの気配すらも感知できるようになったのか。さすがじゃな!』
「くっ……! お、おまえたち! このガキを引っ捕らえよ!」
ドサッ……! と建物周辺にいた、武装教団員たちが倒れる。
「なっ!?」
「悪いけど、【眠り】のスキルを使わせてもらったよ」
「そっ!? そんなスキルを持っていると、聞いてないぞ!」
「今習得したんだ」
『さすがエレンじゃ。欲しいと願っただけでスキルを手に入れ、自由に使いこなすとは。やはり精霊の神子、恐ろしいの!』
くっ……! とキンマンが歯がみする。
「悪いけど、みんなを解放させてもらうよ」
不死鳥の翼を広げて、羽ばたかせる。
炎の羽が建物に降り注ぐと、浄化を行う。
ワッ……! とたくさんの人たちが、建物から出てきた。
「くそぉ! せっかく教団員をよくもぉ!」
キンマンが遅い動きでぼくに殴りかかろうとする。
ぼくは足払いをして転ばせる。
「うげっ!」
「おとなしくするんだ!」
聖剣の切っ先を、ぼくはキンマンに向ける。
「この……こうなったら……邪神様ぁ!」
バッ……! とキンマンが両手を挙げて言う。
「このわたくしめに、邪神様のお力をお分けくださいぃ!」
突如としてキンマンの体から、邪悪なオーラが湧き上がってくる。
闇のオーラはキンマンの体を包み込むと、漆黒の巨人と変貌する。
『エレンよ。こやつ魔の物へと変化しておる。魔族……否、魔神じゃな』
「魔神……」
魔神化したキンマンが、高笑いする。
『ふはははぁ! どうだエレンぅ! いくら貴様が強かろうと! 魔神となったこのわたくしには勝てるまい!』
巨人が腕を振り上げて、ぼくめがけて勢いよく殴りつけてくる。
ピタッ……!
『なにいぃ!? う、受け止めただとぉおお!?』
『エレンがこの程度の攻撃でやられるわけがなかろうが。うむ、さすがエレン』
ぼくはキンマンの拳をひねって、転ばせる。
『くそっ! そんな小柄でなんてパワー! こうなったら本気を……!』
「【契約解除】」
ずぉ……と雪が解けるように、キンマンの体から闇のオーラが解けおちた。
「そ、そんなばかなぁ! じゃ、邪神様のお力だぞ!? なぜ貴様なんぞが解除できるぅ!?」
『エレンは母上、精霊王の加護がある。この世全ての奇跡の力の源を司る王がエレンの背後にいるのだ。この程度容易くコントロールできるわい』
「こ、このぉおおおおおお!」
焦ったキンマンがぼくに殴りかかってくる。
ぼくはカウンターで腹部に一撃を入れた。
「ほげぇええええええええええ!」
殴り飛ばされたキンマンは、ボールのように跳ねて、地面に激突する。
「おかーさん!」
橋で助けた女の子が、両親と再会していた。
「ごめんよ、私たちが間違っていた」
「ううん、ふたりがめをさましてくてれてよかった!」
女の子はぼくに向かって、笑顔を向ける。
「ありがとう! 勇者お兄ちゃんっ」
========
いやいやぁ、エレンは本当に強いなぁ。
敗北を知りたいね。
……さて、と。
邪神教団ねぇ。
あのばかども、そんなことやってるんだ。
ま、別に何をしようと、僕のやることは変わらない。
僕のエレンに楯突いたやつらにはペナルティってね。
========
【※お知らせ】
先日投稿した短編が好評だったので、新連載としてスタートしてます!
「無駄だと追放された【宮廷獣医】、獣の国に好待遇で招かれる~森で助けた神獣とケモ耳美少女達にめちゃくちゃ溺愛されながらスローライフを楽しんでる「動物が言うこと聞かなくなったから帰って来い?今更もう遅い」」
https://ncode.syosetu.com/n1158go/
リンクは下に貼ってありますので、そちらからも飛べます!
頑張って更新しますので、こちらもぜひ一度読んでくださると嬉しいです!




