1話 エレン、追放される
新連載はじめました! よろしくお願いします!
「【エレン】。おまえはクビだ。パーティから出て行け」
とあるダンジョンの、休憩スペースにて。
ぼくにそう言い放ったのは、このSランクパーティのリーダー【ザック】さんだ。
「そ、そんな……どうして……?」
「決まってるだろ。てめえが戦闘に1ミリも使えないからだよ。この無能のゴミが」
「ちょっとザック! そんな言い方はないでしょ!?」
ぼくをかばってくれたのは、パーティメンバーのひとり、魔法騎士の【アスナ】さんだ。
純白の鎧に、長い亜麻色の髪がとても美しい女性。
「アスナ。てめえもわかってるだろ。エレンがこのパーティで、足手まといだってことを」
「戦闘以外の部分で役立ってくれてるじゃない! 理不尽すぎるわ!」
アスナさんはぼくに近づいて、ぎゅっ、と抱きしめてくれる。
彼女の大きな胸はとても柔らかくて、良い匂いがして、気持ちが落ち着いてくる。
「エレンの【テイマー】としての能力は、索敵、荷物持ち、その他パーティを支える重要な役割を担ってくれてる。そんなこともわからないの?」
「はっ! 知らねー。おれさまが重要視するのは戦いに使えるかどうかだけだ。こいつの連れている【狼】が、いつ戦いに役に立ったんだよ? なぁ?」
ぼくの職業はテイマー。
動物と心を通わせる能力を持つ。
相棒は狼の【ラン】だ。
「ランは……確かに、ただの狼です。けど、この娘はがんばってくれてます!」
「アオォーーーーーーーン!」
「うるせえんだよ犬っころ! おまえは毎回毎回よぉ!」
ザックさんはランの頬に、蹴りを入れようとする。
ぼくはすかさず立ち上がり、ランの前に立ち塞がる。
バキィッ!
「うぎゃっ!」
ドサッ、とぼくは倒れ込む。
「きゅーん……」
「大丈夫だよ、ラン。君が、威嚇して敵を追い払ってくれてること……わかってるから……」
ランはただの狼にしては、【異常なほど】に気配に敏感だ。
敵がやってくる前に、遠吠えスキルで威嚇して追い払ってくれている。
不要な戦闘を避けてくれているんだけど、ザックさんは気付いてないようだ。
「ザック! 年下の子に手を上げるなんて最低よ!」
アスナさんがぼくに近づいて、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「うるせぇぇぇんだよ! てめえは毎回毎回! 気付けばエレンエレンってよぉ! ムカつくんだよ!」
「あなたって昔っからそう! ちょっと気に入らないことがあるとすぐに手を上げて!」
ザックさんとアスナさんは、同じ村の出身で、幼馴染みだそうだ。
「おいアスナ。てめえ毎回そうやってエレンをかばうのは、そいつのこと好きだからか?」
「か、関係ないでしょ! あなたには!」
ふんっ! とアスナさんがそっぽを向く。
もし本当にそうなら、どれだけうれしいことだろう。
「こんな親もいないみなしごの、無能のガキのどこがいいんだよ!? おれさまのほうがすげえだろ!」
「エレンをバカにしないで。この子は、病気のおじいさんのお薬を買うために、ひとりで街を出て冒険者をやってる。凄い子なのよ?」
「はいはい、誰にも治せない奇病で、【不死鳥の羽】が必要なんだろ? そんな超レアアイテム、こんな貧乏人が買える訳ねえだろボケが!」
ぺっ……! とザックさんがつばを吐く。
「ウゥ~~~~~……!」
ランが殺気立ち、ザックさんに噛みつこうとする。
「ラン! お座り!」
「きゅ~~~ん……」
耳をぺたんと下げるランに、ザックさんは不愉快そうに顔をしかめる。
「とにかく、おれさまのパーティにこんなガキは不要だ。この【S級ダンジョン】でのダンジョン探索が終わったら、即クビにするからな」
「そんなこと、わたしがさせない」
「おまえ本当にこいつを入れておくのか? かばったせいで、アスナ、てめえ足を怪我したくせによ?」
先ほどのパーティ戦で、ぼくは敵に真っ先に狙われた。
アスナさんはぼくを守ろうとして、右足を負傷したのだ。
「ただでさえ戦闘で使えないクズの癖に、【妙に敵に狙われやすい】ってマイナス要素まであるんだぜ? どんだけお荷物なんだよ?」
そう、足を引っ張っているのは、確かなんだ……。
「落ち込んじゃダメよエレン。あなたはよくやってるわ」
「アスナさん……ごめんなさい……ぼく……もう……」
「ちっ、べそべそ泣くんじゃねえよ。ほら、さっさといくぞ。ダンジョンボスまでもうちょっとだからよ」
ザックさんが立ち上がり、他のパーティメンバーさんたちがそれに続く。
アスナさんに手を引かれて、ぼくはその後を追う。
「くそ……強く、なりたいよ……」
=========
定時になりました。【精霊使い】の魔力を、体内の【不死鳥の精霊核】に自動充填します。
【不死鳥の精霊核】孵化まで、あと480秒です。
ザックの【勇者の精霊核】を喪失させますか?
※精霊の加護を失うことになります。
==========
「うっ……」
「どうしたの、エレン? またいつもの頭痛?」
「はい。また聞こえてきました。精霊核がどうとかって」
「疲れてるのね。このダンジョン探索が終わったら、そうだ、一緒に温泉でもいかない? きっと元気になれるわ」
……正直、ぼくがこのパーティを出て行かないのは、アスナさんがいるからだ。
行き場のないぼくをひろってくれた、優しい彼女がいるからこそ、頑張れる。
いつか彼女を、守ってあげられるように、なれたら良いなって思うのだ。
【※読者の皆さまへ、大切なお願いがあります】
少しでも、
「面白かった!」
「続きが気になる!」
と思っていただけましたら、ブックマークや評価を、是非お願いします!!!!
評価はページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。
今後も皆様に喜んでいただけるような、面白い物語を提供したいと思っています。
是非ともブックマークして、連載追いかけてくださいますと幸いです。
読者の皆さまのポイントが、ものすごく励みになります!
なにとぞ、よろしくお願いします!!!!!