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6月15日木曜日 昼休み アンケート投票立会人

角田亜佐美


 昨日、麻野くんと加美さんがやってきてアンケート投票の立ち会い人をやって欲しいと頼まれた。

 加美さんはA組、麻野くんはB組。たまたま二人と私は知り合いだ。加美さんとはクラスメイトだし、麻野くんとは選択科目で一緒になっていて席が隣になったら話したりするから、二人の共通の知り合いとして白羽の矢が立った、らしい。


 二人とも自治会長選挙なんて事にのめり込んでいて不思議だったけど、一生懸命そうな姿は悪くないなとも思ったから付き合う事にした。

 手伝う事にした最大のポイントは加美さんから美味しいパフェの店を教えるからって言われた事だった。私、スイーツは大好きでお店で写真撮ってSNSにアップしたりしている。ただ教える際の条件は秘密にする事っていうのがちょっと残念だけど楽しみ。


 昼休み、さっと弁当を食べて集合場所に指定された中庭連絡通路下に行った。古城先輩と吉良先輩たちが机を持ち込み大きな投票箱を据え付けていて思ったより本格的な感じだった。

 加美さんから古城先輩と吉良先輩に紹介された。二人からは時間使わせて悪いねって言われた。そして加美さんからは安全ピン付の赤いリボンを渡された。

「付けて」

「何、これ?」

「立ち会い人だって分かるように目印。放課後も付けて」

「うん。分かった。胸のあたりに付けておけば良い?」

何故か首を横に振る加美さん。

「付ける位置は自由。かわいく、但し一目で分かる位置ならいいから」

加美さんか「かわいく」なんて言われるとは。もうきっと機会のない奇跡だ。これだけでも引き受けた甲斐はあったかも知れない。


 投票がほどなく始まった。最初の一人が投票箱が空の事を確認して署名、私達6人の立ち会い人も合わせて署名した。

 学年毎に2列(クラスで分けた)に分けて設けられた選挙名簿確認と投票用紙交付の各列には常に10人ぐらい並んでいる状態。学生証を確認して名簿に印を入れて多重投票を防ぐ。立ち会い人はこれが適格に行われているか確認する役割があって大変だった。結局、お昼休みは200人ほどが投票して終わった。放課後を考えるとパフェは2杯奢ってもらわないと割に合わないかも。


音田しのぶ


 私は昨日選挙運動で図書室へ回ってきた古城さんに妹さんの海外ミステリーオタとしての成長を聞こうと近付いたのが運の尽きだった。

「音田先輩。随分と私、先輩の育成ゲームに付き合わされてますよね.この間はミアキを市の中央図書館で9分類へ連れて行く羽目になったのですけど」

といきなり真顔で言われた。説教が続く!と思いきや彼女はニヤリとすると平然と私にこう言ったのだった。

「だから、たまには音田先輩も私の苦労に報いて下さい」


 そのせいでこうして昼休みに引き続き、放課後も中庭に来る羽目になった。私自身は古城さんに一票入れているし夏服にポロシャツが追加されたらとってもいいなあと思うので姉御としてたまには古城さんのために一肌脱ぐのもいいかなって思ったのは彼女には秘密だ。当面被害者ぶってミアキちゃんへの啓蒙活動の梃子にする。うん。一挙両得だ。


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