6月15日木曜日 三重陽子の投開票日の朝
三重陽子
6時過ぎに起きた。いつもの通り。案外私は今日のような日でも変わりなく過ごせるみたい。高校の受験の時も、合格発表の日もこんな感じだったと思う。
もし今日負けたとしても制服の件は吉良陣営も受け入れた事なので交渉していかなきゃという次の目標が生まれていた
うちは家事当番制になっている。パパもママも仕事をしている。小さな頃は二人の事務所に連れて行かれてそこで遊んでいた。そんな環境だったから二人どちらか手が空いた方が家事をやるというのは当たり前になっていた。当然私も今じゃ当番を引き受けている。
今日は冬ちゃんを勝たせたいという気持ちはあるから私にしては珍しく縁起担ぎ。朝食にカツサンドを作った。昨夜帰ってくるときにスーパーで1枚出来合いのものを買っておいて冷凍しておいたのだ。
脂っこいのはいい歳になってきた両親に申し訳ないのでウースターソースに液体だしを合わせて薄めたものにトンカツをくぐらせて油を落としてからアルミホイルに包んでトースターで加熱したものをトーストした食パンに挟んで出した。あとはさっぱりと和風ドレッシングのサラダ。これは昨夜のパパの作った残り物を流用。ホットティーを淹れた。
「今日は朝からカツサンド?ああ、今日が学校の投開票日なのか」とパパ。
「油分は少なくなるように手は加えているから胃にもたれないかなって」
ママはじっとカツサンドを見て、
「こういう供応が公職選挙法の買収に当るかって結構面倒だったのよね」
「ママ、娘に対して真顔で言う台詞と思えないんだけど」
「冗談よ、冗談。選挙とか聞くとつい昔の仕事を連想しちゃうのよね」
ママも娘が一大事だと思っているような日でもわりと普通に接してくれる。私があまり慌てないのはそういうママに似たのかも知れない。