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6月14日水曜日 選挙運動終了

三重陽子


 放課後。文化部を回り終えて運動部へ向かおうと中央校舎の1階に降りたところで吉良さん達とすれ違った。彼女らもちょうど運動部を回り終えたらしい。

 私は松平さんに声を掛けた。

「明日のアンケート投票の件、運動部は反応はどうだった?」

松平さんは笑顔で答えてくれた。

「彼らはポロシャツ歓迎だから行くって言ってくれた。文化部はどうだった?」

「楽な服装はみんな歓迎だから同様かな。吹奏楽部はすごくうれしそうだったよ」

「泣いても笑っても明日までだね」

「うちの古城さんは吉良さんには負けないから」

「こっちこそ負けない。明日の結果が楽しみ」

「お互い最後まで全力でやりましょう」

そう言い合うと手を振って別れた。


大村敦


 放課後に放送で職員室へ呼出を食らった。宮丈みやじょうはこの件から外れたらしくまさかの日暮教頭先生御自らの呼び出しだった。

「アンケート投票って何だね?」

「生徒の自主的な活動です。生徒自治会として後援してます。これは生徒自治会規則の会長の職権に含まれている自主的な活動の後援の条項によるものです。内容的には制服について両陣営とも同じ見解を持つに到っていて選挙では生徒の考えが分からないのでという事で両陣営が自主的に実施するものに過ぎません。結果を公表して今後行われる制服に関する基礎的な資料にするんだと思いますよ。何か問題がありますか?」

 教頭先生は怒ろうとしたように見えた。ただ何かを思い出されたようで一線を越えるのは思い止まったらしい。

「もういい。呼んで悪かったな」

そういうと日暮教頭は席を立って職員室を出て行った。

 周りを巻き込んで急激に台風に成長した会長選挙。こんな盛り上がった事は近年なかったと思う。制服の件はともかくとして選挙は明日で終わる。少しは肩の荷が下りるといいけど。


吉良小夜子


 選挙運動最終日が終わった。昨日からの急展開。かなり巻き返せたと思う。別にもう勝ち負けはどうでもいい。全力を尽くせたかどうか。そして今後の活動こそ考えるべきだろう。

 会長なんてポストは古城さんが苦労したらいい。ただ私は彼女のやる事を皮肉で眺めているのではなく、私の目標を実現するために彼女と折り合いを付けながら組める事、協力し合える事は一緒に取り組んでいく。それでいい。でなくても私がやりたいって思う事は多いんだから。


 私の陣営に参加してくれた松平さん、水野くん、麻野くんと渡先輩と私の取り組みに興味を持ってくれた他の生徒数名が最後に中央校舎1階の空き教室『選挙事務所』に集合してくれた。

「みなさん。今日まで選挙戦の協力ありがとうございました。選挙運動自体はこれで終了です。あとは明日夕方の開票を待ちましょう。ただ制服追加に関するアンケート投票があるので昼休みと放課後は手を貸して下さい。お願いします」

 みんなは拍手してくれた。そして松平さんが言った。

「泣いても笑っても今日が最後。みんなで何か食べて帰ろうよ」

「桜子ちゃん、いいねえ」という水野くん。

麻野くんが渡先輩を捕まえていた。

「さ、渡先輩も行きますよ」

私はこういう仲間を持ててうれしかった。

「さて、どこがいいかな?やっぱイタリアンカフェレストランしかない?」


古城ミフユ


 選挙運動最終日が終わった。私達は北校舎3階の物理化学準備室『選挙事務所』へ戻った。

 みんなはそこまではと思っていそうだけど、吉良さんは私の事を良く分かっている。あの質問は的を得ている。私は勝ちに拘っていた。

 制服の事もあるし、手を付けた文化祭の事もある。選挙戦を途中で降りるという選択肢はあったと思う。吉良さんと協定を結んで制服と文化祭運営体制の見直しを実行してもらえば良い。そして私もそれを手伝うという選択肢もあった。

でも、それでは手伝ってくれた陽子ちゃんや加美さん、肇くんに秋山さん、姫山くんたちの期待に背く事になるし、吉良さんがそこまで頼りになる人かそれこそ昨日までは革新が持てなかった。だからそういう考えは一切封印して、吉良さんに対して勝てるが追い込みすぎないように手加減して勝利を目指した。それもこれも明日には全て終わる。

 昨日は勝てたと思ったけど今日の反撃ぶりを見ていると吉良さんも凄いなと思う。ええい、明日の投開票と制服アンケートがまだある。まだまだテンション高く行かなきゃ。


「ねえ、みんな。パフェ食べに行かない?」

「おい、まさか俺の店を」と慌てる肇くん。

「正確には陽子ちゃんとの初デートの店でしょうに」

『断じて違う。私達は仲が良い親しい友達なだけだよ』

だから、そこで付き合ってないとかいうのが変なんだって。どうしてハモれるのかって疑問を持たないのかな。

「いいから、いいから。さ、みんな行こう」

「はーい」

秋山さんや加美さん、その店に興味があるようで2人の返事がハモって響いた。


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