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6月14日水曜日 3年生教室へ乗り込む合同交渉団

加美洋子


 大村先輩は幸い3年C組の教室にいた。ちょうどお弁当を食べ終わったところだったらしい。松平先輩を見ると言った。

「息吹き返して凄いね。こんな選挙戦になるとは思わなかったよ」

松平先輩は両手を上に向けてパッと広げた。

「諦め悪いんですよ。吉良さんも私も」

「会長やっていて思うよ。諦めない奴は折れない。そして正しい負け方を知っているってね。交渉じゃ大事な事だ。で、両陣営の人が揃って何かな?」

 私は深呼吸すると言った。

「明日の投票で制服追加についての賛否だけ別途取りたいんです」

大村先輩は眉を上げた。

「理由は?」

「元々対立軸として選挙戦をやってきましたが、吉良さんの陣営も制服の追加については賛成に転じていて選挙結果が制服追加の支持と言えるか分からなくなっています。古城先輩が勝てば校長先生は話を聞くと言っておられたそうですけど、大村会長はその場で聞かれてますよね?」

「うん。確かに聞いたよ」

「票が割れたら、それを理由に話を聞き入れない可能性があると古城先輩と私は予想してます」

「この子が来て吉良さんと話をした時、私も吉良さんもその公算は強いとみてますが、大村先輩もそう思われませんか?」

「みんなの言う通りだと思うよ。校長先生の腹は読めない。受け入れるとは言ってない。ただ話を聞いてあげますって言われただけだからね。だから確実な生徒の支持がある事の証明が欲しいって事かな?」

「はい。それが今日松平さんにも吉良さんの名代としてついてきて頂いた理由です」

 大村先輩は少し瞼を閉じて考え込んでいた。

「生徒自治会長選挙としては無理だと思う。HRで投票を行うから先生方の介在はあるからね。今からでは話を通す時間がないが」

大村先輩は微笑みながら言った。

「明日、昼休みと放課後に中庭で投票を自主的に行う事を妨げる規則もないな。選挙管理委員会は開票で手が一杯だから動かせないから、やるなら君たちでやってもらうしかないけど。生徒自治会後援としてやる分には問題ない。チェック用の名簿は選挙チェック用のものを複写したものを提供できる。これなら二重投票の防止は出来るよね」

「はい。それで構いません」

「あと告知は放送委員会に頼むか。明日のお昼休みの番組で案内してもらうようにしようか?」

「是非お願いします。時間とかどうしましょうか?」

「話はすぐしておくから放課後早いうちに放送室に届けて。委員長の加藤さん宛てにしてもらった方がいいかな」

『はい。助かります。』

私達は揃ってお礼を言った。


 松平先輩と廊下に出ると対応を協議した。

「明日の昼休みと放課後に投票所を中庭に作ってお互いに人を出して運営する」

「異論ありません」

「投票用紙はどうする?」

「A4用紙で10枚取れるとして60枚あれば作れますね」

すると大村先輩が廊下に出てきた。

「盗み聞きする気はなかったんだけど聞こえたから言うけど。二人とも。投票用紙は今日放課後来たらPCとプリンタ使わせてあげるからそれで作ったらいい。紙も60枚ぐらいなら使ってくれていいからな」

『ありがとうございます』

「あと投票箱もいるな。以前使っていて記念に保管している奴がある。3個貸し出すからそれは明日の昼休みに取りに来てくれ。あ、大きいから力持ちがいいかな」

『ありがとうございます』

 放課後の作業については私がやりますよっていうと麻野くんか誰かを私に付けるから使ってあげてと言われた。


 こうして折衝を終えると今日、明日の連絡用のメッセのアドレス交換をして松平先輩とは別れた。私も報告するために教室遊説中の古城先輩達を探した。


 放課後はまず正門で帰宅する生徒への呼びかけを行った後にクラブ活動などの場を回って最後のお願いをする予定になっていた。古城先輩と松平先輩の間で運動部、文化部どちらから回るかを休憩時間中に取り決めていた。私はというと放課後、吉良さんと松平さんから指示を受けてやって来てくれた麻野くんに手伝ってもらい30分ほどで用紙を印刷してカッティングまで済ませて枚数を確認した。明日投票箱を借りる事もあったので生徒自治会室に置かせてもらった。

 作業が終わると麻野くんと明日まで精一杯戦おうと言って別れた。そして私は文化部から回り始めていた古城先輩たちを探して加わった。

図書委員会や放送委員会などの独立委員会、お料理クラブやブラスバンド部などの文化部を回り、明日の朝の投票と昼休み、放課後の制服追加に関するアンケート投票への参加を呼びかけた。


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