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6月13日火曜日 討論会 生徒から先攻候補への質問と回答

加美洋子


 選挙管理委員が2人ほど出てきて演台が舞台袖に移動され椅子が二脚中央左右に置かれた。

 大村会長が左端の演台の前に立つと古城先輩にも壇上に上がるように言われた。吉良さんと古城先輩は舞台中央左右の椅子に座ると委員からワイヤレスマイクを渡された。


 大村会長は軽く咳払いすると最後の題目に入った。

「最後に生徒からの質問です。急な開催決定で昨日放課後しか受付してないのですが15人ほどが質問を選挙管理委員会に届けてくれました。まずその人達に興味を持ってくれてありがとうと言わせて欲しい。全員分を聞けるだけの時間がないので私がこの中から選ばせてもらったのでその点は了承願いたい」

 頷く古城先輩と吉良さん。大村会長は続けた。

「では質問は演説順でやります。まず古城さんへ」


 古城先輩は席を立ち上がると一歩前に出た。

大村会長はメモを一瞥すると最初の質問を発した。

「制服改革は3年生には利益が乏しい。3年生にとてのやる意義を説明して欲しいんだそうです。古城さんの回答は?」

 古城先輩は間髪入れず答えた。

「まず演説でも触れましたが夏のポロシャツについてはできるだけ早く実現を目指します。学校側との交渉、保護者の方の支持も不可欠ですが今、生徒である人達全員が少しでもメリットを享受できるように努めます。あとこの学校は親や兄、姉の母校だという人も少なからずおられますよね。今、全てのメリットを受けられなくてもあなたの弟や妹、ひょっとしたら子どもや孫がその恩恵を受けられるかもしれない。そういう未来への一石にもなると思うんです」


 古城先輩がこう言い切ると見学席から熱心な拍手がいくつか出た。さて2問目はどうくるのか。大村会長は淡々と質問を読み上げた。

「制服の改正は生徒の領分を越えていると思います。学校側が与えてくれた自由を侵してませんか?」

 古城先輩は右手のマイクを口元に寄せると腕組みをしたように見えた。

「私は出馬を決める前に図書室の中央高新聞のバックナンバーを一通り目を通しました。過去に学校と生徒の間でどのような事があったか知りたかったんですけど、80年代に行われた今のブレザーへの制服改革は生徒自治会がリードして学校が支援する形で実施されました。なので前例はあります。この時の生徒自治会長の写真なんかも掲載されてましたが古い漫画で見かけるような学生服を着崩したいわゆる不良なんですよね。でもそういう会長が今のブレザーを作り卒業式ではきちんと着こなしていた。これって自ら勝ち取った自由に対して最後に敬意を表したのかなあって思ってるんです。自由は学校が与えてくれるものじゃないんです。我々が作り守るもの。私たちがお子ちゃまならその自由の枠は小さくなります。でも大人なら?大きくなるしその責任を自覚すべきじゃないでしょうか」


 古城先輩はそう言い切ると見学席からは熱心な人たちの拍手が出た。古城先輩は軽く一礼すると壇上の席へ戻った。


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