表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/70

6月 2日金曜日 策謀2

吉良小夜子


 2年A組の教室へ行った。古城さんがいたら気まずいなあと思ったけど、教室以外の場所で食事しているらしくいなかった。そしてA組の学級委員長の松平まつだいら桜子おうこちゃんと目が合ったので、ちょっと出てきてくれる?と手で合図を送った。彼女は頷いてくれた。

桜子ちゃんが廊下に出てきた。

「ちょっと話したい事があって。あっちでいい?」

「いいよ」

桜子は気持ちよく了承してくれた。私たちは北校舎西端側にある非常階段へ出ると3階の方へ上がった。幸い誰もいなかった。秘密の話をするにはちょうどいい場所なのだ、ここは。


 階段の踊り場で桜子と並んで外を眺めた。

「小夜子、どうかしたの?」

「うん、教頭と生活指導の宮丈みやじょうに呼ばれて会長選に出ないかって言われた」

 桜子ちゃんは私の顔を見た。喜んでくれている?

「へえ。凄いじゃん。うちの古城が出るのってどうよ?って思ってたし、小夜子なら出来るよ!」

 私は軽く頷いてから桜子へのお願いを切り出した。

「で、さあ。桜子ちゃんに推薦人の一人になって欲しい。あと、当選した時は執行部にも参加して欲しいんだ」


 松平桜子ちゃんは去年風紀委員で一緒で親友になった。私の考えはよく知っていて賛成してくれている。桜子はわりと権力志向が強いと思っていた。だから学級委員長になったんだろうなと思っていた。自分じゃ会長はちょっとと思っていたとして副会長や監査委員といった三役に入る事は躊躇しないだろうと思っていた。

「推薦人は良いし、当選した後も手伝うけど副会長とか幹部はちょっと」

これは正直意外な反応だった。ただ、この時点では推薦人を一人確保できた方に意識がいっていた。

「分かった。三役はまた考えよう。まずは推薦人はお願い」

「小夜子のためなら選挙運動は精一杯やるよ」

放課後、桜子ちゃんに一緒に会議室に来て欲しいと頼んだ所、今日は選管の仕事もないからいいよとの事でついてきてくれる事になった。学校側がもう1人推薦人を確保してくれたら桜子も私も選挙管理委員は辞退する事になる。そして古城さんとの対決に突き進むだけだ。


水野みずのただし


 2年C組の学級委員長の水野直は朝礼のHRで担任の平井先生から総務委員会の事で話があるから13時に南校舎の会議

室へ来るように指示を受けていた。南校舎の会議室へ行くとD組の吉良さんが「失礼します」と言って出てきたのが見えた。彼女は何か考えているようで廊下ですれ違ったけど足早に階段の方へと消えて行った。

会議室の引き戸をノックすると「どうぞ」と言われたので開けて入った。中では教頭先生と生活指導担当の宮丈みやじょうが待っていた。

 

 宮丈からはD組の吉良小夜子を会長選に立候補させたいが推薦人を探している余裕がなさそうなので助けてやってくれないかと言われた。道理で吉良さんがこの部屋から出てきたわけだ。なるほどね。


「それって、彼女が当選したら副会長か監査委員のポストはもらえるのですよね?」

 学校の後押しする陣営の候補者を当選させる事が出来れば(その可能性は普通高い)生徒自治会の三役は確保できる。それって進学の時に結構な「実績」になる。それは俺にとって悪い事じゃない。利益だ。

「それはちゃんとこちらから吉良さんに話をしておく」

そう宮丈が請け負ってくれた。

 教頭先生からは放課後にまた来るようにと言われたので頭を下げて会議室を出た。俺のターンが来たのかも知れない。


松平桜子


 終業HRが終わると小夜子ちゃんが迎えに来てくれた。二人連れだって南校舎に向かった。

 私は小夜子ちゃんの真面目さが好きだ。風紀委員を一緒にやっていて少し厳しい気はしたけど、その凜とした姿勢や他者を思いやる姿勢は良い子だと思っている。ただお節介が過ぎるように見えてしまい損をしているんだろうと思う。


 2年A組は1年A組からのメンバーが多い。そんな中で日向くんがB組となっていて、私はE組からA組に変った。A組は部活動に入っていない帰宅部組が多い。昨年はその帰宅部組の筆頭と目された古城さんが意外な活躍をしていて一目置かれていた。彼女は日向くんやE組のクイーンである三重陽子さんと仲が良い。私から見ると凄く要領の良い子に見えるのだ。

 小夜子にはそういう要領の良さよりも不器用さ、生真面目さが目立っていて私にとっては大事な友達だと思っている。少なくとも彼女のために選挙の推薦人になる事ぐらいは当然の義務だとすら思った。


 推薦人をあと1人どうするのかと思ったら学校側が動いて2年D組の水野直くんがやってきた。彼は要領よく利益だけ吸い上げたいタイプの筆頭だ。古城さんたちより質が悪い。小夜子ちゃんの挑戦に影を射す人選だと思うけど時間がなく、彼の三役入りの要望と合わせて飲み込むしかなかった。


 私達は土曜日に集まって公約を詰めていった。月曜日には立候補届を出したい。時間はなかった。吉良さんが実現したい公約に私や水野くんが肉付けしていった。

「水野くん。それ、実現できるの?」

と問いただしたアイデアもあった。それに対して彼はこううそぶいた。

「交渉する所までは場合によっては学校側にも協力要請すればいい。大丈夫。交渉まではいけるよ。それでダメなら仕方ないだけだよ」

いろいろと疑問はあったのが飲み込まざるを得なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ