8月25日 電話の助
パッと目が覚めた。すぐに、憂鬱が襲う。
ブー、ブー。
バイブ音が、煩い。渋々、ベッドから起き上がった。
鞄の中からスマホを取り出す。すると、液晶画面には、「実家」と表示されていた。何の用だろう。一瞬、そう考えた後、通話ボタンを押す。
「美里か?」
大きな声が、頭に響いた。思わずスマホを耳から離した。
一呼吸置き、また、ゆっくり耳に近付ける。
「○○寺とかも、観たいって話になって。お前の家の近くだろ?」
「うん」
「久し振りに、家族で過ごさないか?」
「えっ」
「お前の部屋に泊まれないか?」
その言葉で、鈍かった頭が、急に、回った。
「無理だよ。予備の布団とかないし」
「そうか。・・・そう言えば、稔君に野菜を送ったんだが、何か言っていたか?」
急に、話が変わり、付いていけない。漸くその事を思い出して言った。
「あぁ、美味しそうだったって」
「そうか。美里は、いらないだろう? そう思ったから、連絡しなかったよ」
「そうなんだ」
素直に納得するのが、賢明だ。食い下がった所で、「いらないのなら、連絡しても、仕方ないじゃないか」となるに、違いないのだから。近しい存在だから、何もかも、分かり合えるというのは、幻想だ。
その後、少し話すと、通話終了のボタンを押した。スマホを、ガラステーブルの上に置いた。また、ベッドへ倒れ込む。
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