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その一・男だろうが女だろうが自分勝手なヤツは頭にくる 後編


※注意


今回ちょっとえっちいかも知れないシーンありです。


なんでいきなりトバしてんだ自分。



 





強力な光を突如浴びせかけられて、俺の意識は無理矢理覚醒させられた。

 

投光器のような物で直接照らし出されているらしい。まぶしさに思わず光を手で遮ろうとして……自分の身体が椅子に縛り付けられている事に気付く。

くっ、どうなってるんだ? 呻きながら拘束から逃れようと試みてみるが、堅く結ばれた縄はびくともしない。俺はすぐに抵抗を諦め、さてどうするかと考え始める。そこで何処からともなく声が掛けられた。


「お目覚めかね南田君。手荒な招待になってしまったが……まずはようこそと言っておこう」

 

機械を通した合成音で、性別が判断できなくなっている声。だがあくまで人を見下した、傲慢とも言える気配がありありと分かる声だ。

手の込んだことで。表情には出さずに俺は内心呆れていた。何のつもりかは知らないがこんな大げさかつ芝居じみた演出なんぞをやってる時点で真っ当な人間じゃない。正直相手すんのも馬鹿馬鹿しいんだけど……向こうさん簡単に解放してくれやしないだろうなあ。

まったくまいったね。密かに溜息を吐いてから、俺は皮肉げに唇の端を歪めてみせる。


「ご丁寧にどーも。そんで、この俺ちゃんに一体全体何用でござんしょうか? 見てのとーり金も力もないどこにでも居るよな色男ですんで、ご期待に添えるかどーかは分かりゃしやせんぜ」

 

挑発するつもりはないが、どこかひねたような物言いになってしまうのは仕方がない。この状況で愛想良くできるやつぁ大物か変態だけだ。俺はどちらでもないからな。

果たしてどのような反応が返ってくるかと見ていれば、含み笑いの気配と共に先の合成音での返事が。


「ふふ……威勢の良い事だ。その態度、どこまで持つのか見物……と言いたいところだが、我々は暴力に訴えるを良しとはしていない。時と場合にも寄るが、ね」

 

ようは時と場合に寄っちゃあ遠慮無く暴力を振るうつってんだろが。おもくそ脅してんじゃんよそれ。唾でも吐き捨てたいような気分だったが、いらん事して状況を悪化させるわけにはいかない。あー、ストレス溜まるなあ。

心の中に何か黒い物が澱んでいく。そんな俺を差し置いて、声の主はどこか期待を込めたような気配を漂わせつつ言葉を紡いでいく。


「我々が君に要求するのはそう大した事ではない。そう、ほんの少しだけ話を聞かせて欲しいだけだ。……昨夜、君と西之谷 夕樹君との間に何が起こったのかを。具体的に言うと……二人の“愛の営み”の内容を! 微にいり細にいり頭から尻までばっちりしゃっきりと詳細を!!」

 

………………をい。

 

3分くらいは保たせろや緊迫したシーン。……じゃなかった、誰が誰と何したって? んな事実無根な事聞かれるために俺ちゃん拉致られたワケ? 

気力を削がれて脱力する俺。それに構わず声の方は好奇の色を隠すことなく矢継ぎ早に言葉を投げかけてくる。


「さあ、正直に聞かせてくれたまえ。君がどのような口八丁手八丁で傷心の西之谷君を口説き落とし、どのような手管でもって彼を快楽の彼方へと連れて行ったのかを。そうでなかったというのであれば西之谷君がどのように君にすがり、そして君がどんな感じで流されたのかを! さあ、さあ! さあさあさあさあさあ!」

 

うわーい想像力が突っ走ってますよこの人ー。勘弁してくれ最低でも俺はノーマルだ西の字が可愛いのは認めるにやぶさかじゃないけれど! 手を出すほど飢えてもなければ人としての道を踏み外してもいねえっつの!

……まあこの類の人間には言っても無駄なんだろうけど、言わずにはおれんよなあ。俺は正しくのれんを腕で押す心境でもって口を開いた。


「あ〜、ないから。全然ないからそゆ事」

「そんなわけがあるまい!」

 

間髪入れずに否定されました。どうやら何かのスイッチが入ってしまったらしい声の主は、一方的に捲し立てまくる。


「あんな可愛い男の子を目の前にして手を出さないなんて事があるはずがなかろう! ましてや無防備な姿をさらけ出してもういつでも頂いちゃっておっけーなシチュエーションなのだぞ! 君はアレか、起たないのかこの●●●野郎! そうでなければこうなっているはずだ――






ん……はぁ……キス、じょうず……。

お前が反則的に可愛いからな、つい貪り食っちまう。

ね、もう一回……んっ……。

欲しいんだったら何度でも、な。けどそろそろ……。

……やだ、おっきい……。

お前が可愛いからこうなったんだぜ……それにお前だって。

んっ! やあ……もっとやさしくして……。

……こんなになってるし、もう、いいよな?

うん……きて……。






――とか!






うぁ……や、やめろ……。

くす、ここはそう言ってないよ、ほら。

くうっ……。

ふふ、縛り付けられてるのにここをこんなにぎんぎんにして……変態さんだね。

て、てめえ、覚えてろよ……くぁっ!

説得力がないよ、今のでまたおっきくなった……ここまでなって出せないの、キツイよね?

…………。

出したい? でもだ〜め。今日はとことんいぢめてあげるんだから。……せめてものお情け、足で……シテあげる。

うああっ! ぐうう!






――あるいはっ!!






やあ、やだあ! 抜いて……抜いてぇ!

根本まで飲み込んでおいて良く言うぜ。それにここもこんなにしてるくせに。

ひあっ! だ、だめぇ! ずぽずぽしながら擦っちゃだめえ!

……へえ。じゃあ、やめるぜ?

っ! ……あ、や、ち、違う!

シテ欲しいんだろ? 素直になれよ。

………………して……。

もっとちゃんと、はっきりとお願いしような? 言い方は分かってるだろ?

お、お願いします! もっとずぽずぽして! 激しく擦ってぇ! がまんできないよお!

良い子だ。じゃあ激しくいくぜえ!

いい! いいよお! 僕おかしくなちゃうよおおお!!






――というようなドリームが、パラダイスが! ああ、ああっ!!」

 

………………これは新手の拷問なんだろうか。背中側に嫌な汗がどばどば流れるのを感じながら、放っておかれる形となった俺は現実逃避気味に考える。

はっきり言ってとてつもなく嫌な妄想を聞かされまくって、なんかこう、正気的なものがごりごり削られていくのが良く分かる。しかし……この場に西の字が居ないだけまだマシだ。アイツが居たら絶対キレる。キレて暴れる。そんで俺が巻き込まれる。そんな最悪なコンボがぶちかまされるのは目に見えていた。

それに比べりゃまあ、本来俺らが買っちゃいけない領域のゲームを実名プレイでやってるようなモンだ。……すげえイタいな、それ。自分で考えついて自分で落ち込んだぞ。まあ考えてても仕方ないんだけどな、どのみち動けないし拷問受け続けるしかないんだから俺。うわ激しく鬱だ。

何かさっきから思考が悪循環しているが、ほかにどうしろっていうんだ。もしこの状況で明るく物考えられるヤツが居たら是非ともここに来い、そんで俺と代われ。

 

げんなりと、もうどうでもしてつかあさい的な態度で脱力してる俺。未だに妄想を展開している声の主満足するまで解放されないのだろう多分。もう面倒だから適当にエロい作り話でもぶちかましてやろうかな〜などと半ば自棄になって考え始めた俺だったが、状況は意外な形で劇的な展開を見せる。

 

まず最初は暗闇の中で微かに響いた風切り音。続いて部屋のあちらこちらから「うっ!」「ぐあっ!」などという呻き声。ん? 今のはと疑問に思う間もなく、今度は四方八方からどかんごがんばきりという破砕音だか乱闘だかの音が響き渡る。そしてスピーカーの向こうからこっちの世界に帰ってきたらしい声の主の驚愕した台詞が聞こえた。


「なっ、貴様らは! ええい折角の生やおい話が聞ける機会逃してなる物か!」

 

その後さらに激しく響く争乱の音。オイオイ大丈夫か? 部屋の中まで振動が響いてるし、何か上からぱらぱら埃とか細かい物が落ちてきてるぞ? 崩壊するんじゃなかろうなここ。そう思ってたら、しゅばっと音を立てて何かが天井から降ってきて、背後に人の気配が生じる。誰だと誰何する前に、耳元で誰かが囁きかける。


「お静かに。今お助けします南田殿」

 

この声、女か? 確かめるより先にぶつりと縄が切れた音がして拘束が解かれる。後ろ手に縛られた腕に異常がない事を確かめてから俺は立ち上がり振り返った。


「誰だか知らないけれど助かった……よ?」

 

振り返って救助者の姿を確認した俺は状況を忘れて言葉を失う。いやだってさ、“忍者”だぜ忍者。上から下まで隙なく忍者装束を着込んだ女が目の前に立ってるんだぜ? そりゃ絶句するってモンだろうよ。

俺の戸惑いが分かっているのかいないのか忍者女は軽く頷くと、覆面の隙間から覗く目で真っすぐ俺を見詰めつつ言葉を紡ぐ。


「色々聞きたいこともございましょうが、まずはここより脱出を。さ、こちらへ」

 

忍者女に促されるまま、俺は争乱続く場から逃げ出す事にした。正体不明の人間にほいほい付いていって大丈夫かという思いがないでもないが是非を問うてる場合じゃない。この場で腐った妄想聞かされているよりは建設的だ。

 

思った以上に遙かにあっさりと監禁されていた部屋から抜け出す……ってここ、部室棟じゃないかよ。眉を顰めて部屋の扉を確かめてみたら【文芸部】とある。

ああなるほど分かった。やんなるほど分かった。もしかしたらって思っていたけどやっぱりそうかい。俺を拉致したのがどういった人間で、どのような意図を持っていたのかはっきりと悟ってしまった。


「南田殿?」

 

頭痛を憶え頭を抱える俺に向かって忍者女が問い掛ける。おっとこんな所で世を嘆いている場合じゃない。俺は何でもないと答えを返し、彼女の後を追って移動しようと――


「!」

 

忍者女が足を止める。何事だと彼女の視線を追ってみれば、俺たちの進路を遮るかのように誰かが立ち塞がっていた。

 

性別は女。ただ女性として大切な物を全てかなぐり捨てているかのような姿をしている。具体的に言うと四方八方に伸びまくってばっさばさの髪の毛、よれよれの制服、前屈みで髪の毛の隙間からぎらぎらした目を覗かせる幽鬼のごとき女だった。

 

女は不気味な笑い声を上げながら、ゆらりとこちらへと歩を進めてくる。


「くけけけけ、文芸部に先を越されたと歯噛みしておったが……まだ我等にも運が残っておったようだのお。……さ、その男をこちらに渡してもらおうか。“締め切り”が迫っておるでの」

 

忍者女は無言で反応。目にも止まらぬ速度で懐から何かを抜き打ちする。それが手裏剣だと分かったのは、相手が放った何かに弾き返され四方の床や壁に突き刺さってからだった。

手裏剣ともろともにつき刺さっているそれは、ペン先。やはりか、俺は確信して我知らず言葉を零す。


「……女子漫研、ハードジュネ派かっ!」

 

先に俺を監禁していたであろう連中――文芸部BL派と並ぶある意味“最狂”の女達。天上天下に存在する有りとあらゆる物でカップリングを想像し、妄想の中で犯して犯して犯しまくる蹂躙者。それを己の中で収めておくだけならまだしも、作品として世にばらまき感染者を増やすゾンビよりタチの悪い連中である。噂には聞いていたけど、まさか自分がやり玉に挙げられるとは。嫌な汗が止まらない。

 

不気味に笑う漫研女に対して、忍者女は腰から警棒のような物を引き抜き身構える。刃のような鋭い殺気が放たれる中、漫研女は気に留める様子もなく笑みを深めた。


「ふむ、あくまで邪魔だてしようとな。……じゃが、風下に立ったがうぬが不覚よ」

 

言い放って漫研女は、懐から取出した何かを空中にばらまく。


「秘奥、乱れ原稿の舞」

 

宙を舞うのはケント紙とか何とかいう、漫画が書かれた紙。別にこちらへ向かってくるわけでもない、ただ乱れ飛ぶだけのそれに何の意味があるのかと思った途端、忍者女が「ぐうっ!」とか呻きながら口元を押さえつつ膝を付いた。

な、何だ? 毒!? けど俺には何にも感じられないしどうなってんの? 疑問に思っているところへ舞っていた紙の一枚が偶然手元へ滑り込んで来る。

 

何の気もなしにそれを手にとって覗き込んで……俺は盛大に噴いた。

 

そこに描かれていたのは、どっかで見たようなソフトハットを被った美化されすぎの男と、異様に可愛くなっているがどっかで見たような美少年がぐっちゃんぐっちゃんのくんずほぐれつしているとても青少年には見せられない内容の漫画だった。


もうやだよう誰か助けてよう。……はっ! あ、あまりの事に一瞬幼児退行しちまった。なんちゅう人権と肖像権の侵害。噂通りの恐ろしい連中だ。戦慄する俺の前で、漫研女は勝ち誇り忍者女に向かって語り掛けていた。


「けけけ、流石は【影忍の涼華】、よくぞ堪えた。じゃがその目の良さが命取りよ、うぬも乙女であればこれを見て疼かぬはずもあるまい」

 

……ダメ人間ばっかりか俺の周りの女。だからまともな恋愛できないんだよ俺。と、さりげに彼女がいないのを外的要因にしたところで問題が解決するわけじゃない。どうする? さすがにここで忍者女を見捨てて逃げるってのは人としてダメだろう。しかしこのまま留まっていたら間違いなく漫研女の餌食だ。こう言う時自分の優男っぷりが恨めしくなるがどうしようもない。そう迷っていたら忍者女に動きがあった。


「けけけ、まだ動けるとはのお。じゃが……次で終いよ!」

 

勝利を信じて疑わない漫研女の言葉に忍者女は応えない。ただ素早く印のような物を組み、何やら唱え始めた。


「臨・兵・闘・者・皆・陣……」

「今時そのような印を結んでどうなると……」

 

そう忍者女を嘲笑う漫研女だったが――


「……“没”!!」

 

呪の最後の一言でビキリと硬直する。

その隙を忍者女は無論見逃さなかった。漫研女も瞬時に我を取り戻すが遅い。

 

交錯は一瞬。そして――


「……見事」

 

呟くような一言を残し、漫研女はどう、と倒れ伏した。

 

し、シリアスだったけどあほな戦いだなあ。俺は額の汗を拭いながらとりあえず安堵。そしてこれ以上この場に留まっていたらまたぞろあほな目に遭わされてしまうと、忍者女に案内を続けるよう促す。まあ彼女が案内する先もまともではなさそうではあるが、ここよりは遙かにマシだろう。多分。




















――そう思っていた時期が、俺にもありました。


「良く来てくれた。無事で何よりだ」

 

連れてこられたのはこの二高で最悪の魔窟、生徒会室。そして俺をねぎらったのは二高学生最高地位につく壮絶問題児、生徒会長その人だった。

四六時中誰かを侍らせているイメージのある会長だったけど、今この時点では一人。よく考えてみたら今授業中だよなあ、生徒会長だからって授業免除になるわけでもないし、何やってんだこの人。そんな疑問を抱いたが藪を突いて蛇を出す気はない。俺は黙って事の推移を伺う。


「助かったよ涼華。いつもすまない」

「勿体なきお言葉、痛み入ります」

 

会長の前で跪いた忍者女――涼華という名らしい女が頭を垂れる。いや似合ってる、似合ってる雰囲気なんだけどね? ちっとは自分らのやってる行動に疑問を持とうよ。多分言っても無駄だろうから絶対言わないけどよ。

 

ともかく時代劇チックな雰囲気の中、二人は会話し続けている。


「報酬はいつもの所へ。少し色を付けておいた」

「有り難く」

「ところで……例の話、考えておいてくれたか?」

「……申し訳有りませぬ。それがし所詮影に生きる者、御身のご期待には添えぬかと」

「そうか……いや済まなかった、忘れてくれて良い。しかし気が変わったらいつでも声を掛けてくれ」

「御意。……ではそれがしこれにて」

「ああ、また何かあれば頼む」

 

会長の言葉を最後に会話は終了し、涼華とかいう人はしゅばっという音と共に消えた。……ってちょお待て。この場俺と会長の二人きり!? わ〜危険を感じますよ〜肉体的じゃなくて精神的な方向で。

内心戦々恐々とする俺に対し、会長は鷹揚な態度で語り掛けてきた。


「さて南田君。災難にあった直後で何が何やらさっぱり分かっていない状況だろうに悪いと思うが……少し話を聞いてはくれないだろうか」

 

状況は何となく分かっているんだけどね。そんな事よりなんかいつのも会長と違って妙にシリアスなのが不気味だ。アレか、また猫とかあのへんの話なのだろうか。しかし現状でその話が出てくるのもおかしいいし一体なんだろう。

考えても仕方がないな。助けてくれた事には違いないし恩は返しておくか。俺は軽く頷く事で承諾の意を示した。

会長も頷き返し、俺に背を向けて後ろ手に手を組み窓の外を見上げる。え? もしかして語るの? 長いの?


「最近、女子の一部の中に不穏な動きをする者がいる。調べたところによるとどうやらいくつかの派閥に分かれてはいるらしいが、その目的はある部分において一致しているようだ。……何か分かるかね?」

 

突然話振られても分かるわけねっつの。俺は「いえ……」とか答えを返しつつ心の中だけで顔を顰めた。勿論そんな事に気付くはずもない会長は、淡々とした調子で語りを続けている。


「彼女らが中心としているのは君の友人、西之谷 夕樹。この事と先の状況を照らし合わせてみれば察しがつくのではないかね?」

 

ああ、なるほど。つきましたよ察しがつきましたともさ。テンションが下がっていくのを自覚しながら、おれは億劫なのを我慢して口を開く。


「ようはアレですか、妄想たくましいホモ好きな連中がこぞって西の字……西之谷をネタにせんと暗躍しまくっているっていう事ですか」

「……さらに悪い」

 

間髪入れずに返ってきた答え。おいおい、さらに悪いってどういう事だよ。訝しがる俺に向かって、会長は肩口だけで振り返りつつ言う。


「“実際にくっつけようとしてる”連中がいるのさ。しかも“自分のお気に入りのカップリング”でな」

 

激しく待ってくれや。ついドスの効いた声を出そうとして何とか飲み込む。何じゃそりゃあ、妄想するだけじゃあ飽きたらず現実にしようってか!? 冗談は二次元以下の世界でやってくれやまったく。

しかしここで憤慨したところで状況が変わるわけじゃあない。ともかく続きを聞いてみる事にしよう。はっきり言ってイヤな予感しかしないけど。


「幸いと言ってはなんだが、元々少数派だったところに加えてカップリングによって幾つかの派閥に分かれているから、今はまださほどの影響力を持ってはいない。しかし女子とは本来潜在的にBLを好むもの。もし嗜好の垣根を越えて一致団結すれば一大地下勢力と成りかねん。実際触発された文芸部と漫研は君の確保に動いたしな」

 

今台詞の一部で不穏な事を断言しやがったような気がするがそれはどっかにおいといて、またぞろろくでもない連中に目を付けられたな西の字。おかげさんで激しく巻き込まれましたよ俺ちゃん。かっくりと肩を落す俺を見て、会長は苦笑を漏らしてから話を続けた。


「しかも彼女らはやり方がえげつない。この間西之谷君へと告白を行った相手が前触れもなく前言を撤回したろう? あれはどうやら彼女らが介入した結果のようだな。いかなる手段を用いて決意を翻させたのかは知れんがね」

 

えげつないって、アンタが言う事でもないでしょうよ。……まあこの人はえげつないって言うよりノリと勢いだけで突っ走るつった感じなんだけど。それはそれとしてあの事件の裏側は分かった。けどこの人それを俺に話してどうしようってんだ? それに何でホモ好き集団を敵に回そうとするんだろう。どっちかって言うとそう言うのが好きそうなのに。

 

疑問が顔に出たのか、会長は俺が尋ねるより先に答えを言う。


「今西之谷君とカップリングが組まれている中で、君が一番冷静に話を聞いてくれそうだったからな。西之谷君本人に言ったらバイオレンスの嵐が吹き荒れかねんから怖くてとても言えんさ。それに君は結構人脈があって顔も広いだろう? 我々生徒会が介入するより効率的に対策が練れるのではないかな」

 

会長は一旦言葉を切り、全身でこちらに向き直る。


「実のところ今回の件で生徒会は動けない。この間の犬派との対立が原因で色々な方面から圧力がかけられているからね、動きたくても動けんのさ。淡夢路――風紀委員の連中のほうがまだ手綱は緩いが大差はない。基本的に君達自身で火の粉を払ってもらわなければならないのだよ。個人的にも組織的にも自分達以外の派閥が力を持つのは避けたいのだが、自業自得とは言えこの有り様だ。だから“誰かに代わりに動いてもらう必要がある”」

 

……なるほどね、つまり――


「俺とダチどもにその代わりになってくれって事ですか。都合のいい話ですなあ」

 

皮肉を込めた俺の言葉に会長は動じない。むしろ得たりとばかりににやっと笑ってみせた。


「できれば、で構わんよ。どのみちもう君は巻き込まれている。嫌と言っても逃れられんし、放っておけばどういう目に遭うか今日身に染みて分かったろう?」

 

最初っから逃す気なかったんだなこのヤロウ。反抗したいのは山々だが会長の言うとおりだ。俺一人でどうにかできる問題でもないし、多分間違いなく旦那やのぶやんも巻き込まれるだろう。放っておけば確実に変質者の餌食だ。それを良しとしない以上こちらも動かなくてはならない。

にたりと笑いながら情報の面ではこちらも協力を約束しようとかいう会長の言葉を半ば聞き流しながら俺は内心歯噛みする。くそったれが。どいつもこいつも身勝手な連中ばっかりだ。だがそう簡単に餌食になると思うなよ、俺はともかく俺のダチはハンパねえぞ。

 

腹の底に怒りとも何ともつかないモノが澱んでいくのを実感しながら、俺はこれからの方針を考え始める。

 

さて、どう戦い抜いてやっかな?






 


ついノリと勢いでやってしまった。


反省はしていない多分またやる。

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