表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

そのさいご・もう恋なんてしない。マジしない

 





はふうと溜息が漏れる。ソファーにぐったりと体重を預け、俺は沈みそうになる意志を何とか繋ぎ止めていた。

 

疲れた。ものごっつい疲れた。骨折り損のくたびれもうけってのは正に今回の騒動のような事を言うのだろう。

一刻も早く寝たい。寝て全てを忘れたい。

 

しかしまあ、そうは問屋が卸してくれないわけで。


「ふにゃあ……ん」

「ごろごろごろ……」

 

俺の両膝に身体を預けてふにゃけるでっかい猫が二匹。


「んふ、お姉さん、少し酔っちゃったかも」

「……香月君の身体、暖かいね」

 

必要以上に左右から身をすり寄せる姉二人。


…………勘弁して頂けないでしょうか。

 

何してるかって? 以前姉妹全員に対し役に立ってくれたらなでなでしちゃると空手形切っていたのだが、そのツケを纏めて払う羽目に陥っているいわけですよ現在。

羨ましいとか思っているそこの貴様。代われ。即座に代われ。こちとら身内に懐かれて喜ぶようなインモラルな趣味はないんじゃあ!

どこともしれない虚空に文句を付けても状況が変わる訳じゃあない。精も根も尽き果てて機械的に姉妹を順繰りで撫で回す俺だった。


「ところで香月君?」

「……何だよ」

 

上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる奈月姉に応える。ええい、弟相手にしなを作るんじゃない。


「……彼女の事、良かったのかい?」

「……本人が良いって言ったんだ。もう俺らがどうこう言う話じゃない」

 

俺は天を仰ぎながら、昼間の事を思い出していた。


 














拳が唸り蹴りが空を裂く。

 

あれ以降色々と吹っ切れたのか、西の字と夏川ちゃんは二人で連んで行動する事が多くなった。そのほとんどが喧嘩というのはどうかと思うんだが……まあアイツららしいちゃあアイツららしい。

元々名が売れていた事もあって、二人を征して名を上げようなどと考えるあほが次から次へと現れるため喧嘩相手には不自由していないようだが、飽きない物かねえ。殺伐とした青春送ってんなあ年頃の男女が。こっそり様子をうかがいに来た俺は肩を竦める。

 

しかしどーしたもんかね。


「小春ちゃんを紹介するタイミングちゅーモンが計れんなあ」

 

嬉々として有象無象をぶっ飛ばしていく二人の様子を見て、思い悩む。しばらくしないと状況落ち着かないかなあ。

とか考えてたら。


「あたしがどうかした?」

「どああっ!? ……い、いきなり背後に現れないでくれや」

 

突然かけられた声に驚いて飛び退く俺。現れたのは言うまでもなく、小春 ひよりその人。

あの件以来妙なスキルを身につけたらしく、行動がちょっと非常識になったようだ。そのうち涼華ちゃんみたくなるんじゃなかろうな。

……っと、んな事を心配している場合じゃなかった。この目の前の光景、どう説明した物だろう。頭の中で考えを巡らすが、それは無駄に終わった。


「……やっぱり、こうなりましたか」

 

冷静に、それでいてどこか寂しげな声を出し、小春ちゃんは訳知り顔で頷いている。もしかして……気付いてた?


「何となく、なんだけどね」

 

気丈な態度で言うも、どこかしら無理が生じるのは否めない。俺の問いに対して答える小春ちゃんの声は僅かに震えていた。


「別に様子を見ることを禁じられていたわけでもないし、見てたら分かってくるもの。あの二人がああしてると、とても自然で、屈託なく笑ってる」

 

凄まじく殺伐とした光景だがな。あれはどう見てもカップルじゃなくててっぺん狙う喧嘩屋だぜ? スクープ狙って突撃取材とかを敢行しようとしていた報道者どもまでちぎって投げしだしたヤツらを見て、諦めるのは早いんじゃないかと聡そうとする。

 

けど、小春ちゃんは頭を振った。


「あたしの横じゃ、西之谷君はあんな風に笑ってくれないよ、きっと。それに――」

 

目尻に涙を浮かべ、小春ちゃんは儚げな笑みを見せる。


「――あたしの時には3日悩んだ。彼女の時にはあっさり答えが出た。埋められないの。この差は」

 

……なるほど、ねえ。俺は視線を逸らしボルサリーノを深々と被り直す。彼女の中で勝負は決した。ならばこれ以上死者に鞭打つような真似はすまい。


「ま、アンタが納得してんなら、これ以上は何も言わないさ」

「以外。もっと軽く胸貸そうかとか言うと思った」

「人の弱みにつけ込むような真似は好かないんでね。……じゃな」

「うん。じゃあね」

 

ひらひらと手のひらを振って背中を向ける俺の背後で、小春ちゃんも立ち去っていく気配がする。

彼女はもう振り返らないだろう。そして俺たち――西之字とは二度と関わるまい。何となくだが、そんな気がした。

 

いい女になるんじゃないか? 多分。


 














あそこでやせ我慢せずに声の一つもかけときゃよかったかなあ。今さらになって惜しいかなと思う。ああいういい女候補は滅多にいないし。

考えてみりゃあ、のぶやんは二股かけてるし、西の字たちもああなって、旦那と秋沼ちゃんも最近ちょいと怪しい。つまり仲間内で俺だけ浮いた話がないのだ。普通こう、想い想われの複雑に絡んだ関係になってドラマが展開すると思うのだが早々に人間関係が決定してしまった。今さら横恋慕するのは無粋だし、第一仲間内の女どもは個性的すぎる。個人的な好みとしてはもう少し普通な人間がいい。

 

……って、俺の知り合い普通の女ってほとんどいないじゃねえか。筆頭は仲間として、生徒会長然り、麗射さん然り、涼華ちゃん然り。小春ちゃんですらちょっと変わったところがある。BL? 問題外。

見た目は極上の粒ぞろいなんだがなあ。個性とはっちゃけぶりを取り違えたような連中だ。心の棚の上に何かをどかりと上げたような気がするが、間違ってないよな? 俺。

 

はふうと再び天を仰いでみれば、心配そうに美月姉が声を掛けてくる。


「どうしたの? 色っぽ……アンニュイな顔して」

「いや、なんつーかさ……俺の周りだけ浮いた話とかないって言うか……」

 

答えながら視線を巡らせてみれば……何だよその不満げな表情は。


「……これだけ美女美少女が揃ってるのに何が不服です?」

「しかもみんなかづにぃ一筋っすよ?」

「あほをぬかすな。実の姉妹に傾倒したらそれこそ最低野郎だろうが俺」

 

もう充分最低野郎だとか言うなよ? それだけは絶対に譲れないんだかんな。

 

……って、オイ。何ですかその不穏な笑みは。

 

おののく俺に、にんまりと笑った奈月姉が蠱惑的な態度で言う。


「たとえ世間がどう言おうと、我々にとっては君以外の男なんぞ眼中にないのさ。それに……」

 

アイコンタクトを受けた美月姉が言葉を継ぐ。


「……本当はお姉さんたちと香月、実の姉弟じゃない……としたら?」

 

………………………………………え゛?

 

ちょ、ちょ、ちょ!? 思考が混濁するパニックになって反応できない。

 

いやその、え? だから、あれ!?

 

お、お、お、お、ちょ、人の考えが纏まらないウチにみんな揃って服に手をかけるな息を荒くするな変なところまさぐるなあああああああ!!??


 














学園の危機はひとまず去ったようだが、俺の危機はどうやらこれかららしい。

 

やれやれホントにまいったねこりゃ…………………………どころじゃねえええええええ!! 誰かヘルプ助けてマジホントに食べられちゃうううううう!!!!!













          〜おしまい?〜








によによするよなラブコメが書きてぇーー!!(挨拶)


ども緋松 節です。



今回は執筆している最中あっれェと首を捻りっぱなしでした。思った通りに事が進んだのは冒頭だけ。おかしいこんな展開になるはずじゃなかったのに。

なんかクオリティも下がりっぱなしのような気もするしなあ。むむむ、もう一方の方に気を取られたか? こっちの方がすらすら書けたんだけど。


一応続きの構想はあるんですけどどうしましょう。


……とりあえずおまけ書いて考えるか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ