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ナンセンス自殺

 飛び降りても首絞めても焼かれても

 何も変わらないよ。

 変わったのは、僕の状態が

 「生」から「死」に変わっただけ。


 たとえば夏休み明けに学校に行くのが嫌で、

 出来るだけ悲惨に大通りに飛び降りたとしたって、

 その日同じようなことをして死んでいる人は全校生徒よりも多いんだから、

 どこでも報道されないし、誰にも悲しんでもらえない。

 迷惑がられるだけだ。

 生きていた時と同じように。

 変な人だって目で見られて、

 どことなくいつもお邪魔虫にされて、

 死んでもなおその扱い。

 でももう死んでしまったから、もう一度死ぬことはできない。

 あーあ、永遠にバカと見なされるよ。

 やっちゃった。


 この世は広い。めちゃくちゃ広い。そのなかに72億人も人が住んでいる。

 だというのに君はたった30人あまりの教室に、20人程度の職場に絶望して死ぬのかい。

 君は一度でも隣のクラスに行ってはみたか。

 君は一度でも別の課の人と話してみたか。

 何もしないうちに死ぬのか。


 病、市に出せ。

 物語を書け。詩を書け。絵を描け。

 動画を撮れ。作れ。ネタにしろ。

 そして、つぶやけ。発信せよ。


 報道されない死の中に君が埋もれてしまうのか。

 世界を恨みながら死んで、そしてあいつは生き続ける。

 それのどこが嬉しい。それのどこが復讐だ。

 目の前で臓腑まき散らして死ぬのでもない限り、

 君がどれだけ死んだって死んだだけ。


 泣いて、泣いて、泣きわめいて、

 だだをこねて、怒り狂って、泣き疲れて眠ったあの日を。

 その時そっと毛布をかけてくれた人を。

 思い出せ。

 忘れるな。

 君は一人じゃない。


 落下するお前と目があう。

 どうやったって助けられないヒーロー気取りの僕を、

 あざ笑うようにお前は落ちていく。


 ちょっとそこまで。

 そう言って散歩を始めた。

 足元を木枯らしがくねる秋の初め頃、

 独りぼっちで歩く僕は、

 ただ夢の世界を拡張したがっている。

 夢に逃げるのも手かもしれない、なんて気づいて、

 すばらしいあの日の夢をもう一度、

 そのために現実の経験を増やしていく。


 うたう時、まず息を吸う。

 死ぬ時も、息を吸う。

 うたう事と死ぬことはよく似ている。

 声を出すこと。だんだん泣きたくなってくること。

 うたうことも死ぬことも、生きていなくちゃできない。

 どちらも最高の生の証だ。


 だけど、逃げるために死ぬのはやめて。


 なぜか。

 死んでも逃げきれないから。

 死んだところで変わらないから。

 死ぬなんてただ痛いだけ。

 死んだら居場所がなくなる。

 死んだって永遠に、

 僕は僕だ。

 魂論を信じるなら、

 恨みを持って死んで、いじめっ子に復讐しようとしても、

 生きているときだって「やめて」と言えない自分なんだから、姿が見えなくなって死んでは何もできな い。

 かといって天国に行ったり霊になったりしたって、結局自分だから、

 いつか嫌気がさしてくる。

 死んで逃げきれるのは明日だけ。

 生きたって、死んだって、結局は僕だ。

 逃げきれないってそういうことさ。


 決死の覚悟で死ぬの。

 バカみたい。


 死ぬんじゃなくて、殺されて。

 せめて他人に殺されて。

 でも何でもいい。

 本当は何でもいいから生きてほしい。

 生きて、明日も会おうぜ。



 顔も知らない君だけど。



こんにちは。きらすけと申します。

夏休みが終わってしまいました。私も学校に行くのがめんどくさいです。

そして、学校や職場に行くのが「死ぬほど」嫌なあなたたちへ。死なないでほしいな、と思っています。

私はあなたたちの名前を知らない。顔も、年齢も、どうして死にたいのかも知らない。だけど死なないでほしいと思います。

きらすけでした。


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