表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

第六話 サビとルリ⑥

「足りないなら、借金して払うわ。」


 ルリが思い詰めた様な表情で言った。

 サビは悪いことをしてる気分になった。


「冗談だよ。そんなに大事な物なんだな。」


 ルリはホッとした顔になった。

 本当に払う気だったらしい。


 銀貨で飯が買えるかと聞いてきたし、世間知らずなのかもしれない、とサビは思った。

 ソウキュウはここと通貨が違うんだろうか。


「あんたの国の物らしいし、これは拾い物だ。大丈夫。ただで渡すよ。」


 だからその包みはとっておきな、とサビは言った。

 ルリは金貨や銀貨の価値を分かってないらしかった。


 今ルリの全財産を受け取ったらまたどこかで行き倒れそうだった。


「ありがとう!」


「ただし、親父が帰ってくるまで、2、3日待ってくれ。見せたいんだ。」


「分かったわ。」


 ルリは笑顔になった。


「ところであんた、旅をしてるって言ってたけど、行く当てはあるのか?」 


 サビが尋ねると、ルリは首を横に振った。

 ルリはうつむいた。


「行くところ…無くて。外は見たこと無い化け物がいるし。」


 ルリは言った。

 恐らくカゲロウの事だろう。

 空の国にカゲロウは出ないらしかった。


「そうか。」


「あれはなんなの?」


 サビは簡単に話した。


 生き物ではないこと。

 人が居ない所で増えること。

 倒せば何も残らずに霧になって消えること。


「飛んでる途中で黒い鷲につつかれて、羽を何枚か持って行かれたのよ。やり返せば良かったわ。」


「そんなに強くないのが多い。魔法で倒せるのが大半だと思うぞ。」


「勉強になったわ。」


「やり返すのは今度な。今日はもう遅いし、寝よう。ベッドはこのまま使っていいぞ。」


「本当にありがとう。宿代は払うわね。」


「いいよ。じゃ、おやすみ。」


 ルリに声をかけ、サビは部屋から出た。

 居間に行きソファーに横たわった。

 灯りを消して目を閉じ、眠ろうとすると、声が聞こえてきた。


《…けて…ぎ……攻撃…》


「は!?」


 サビは驚き目を開け周りを見渡した。

 ルリの声ではない。

 声は頭に直接響く様だった。


 ためしに耳を塞いでみた。

 聞こえかたは変わらなかった。


《…来て…待ってる…》


 サビは声を聞こうと意識を集中させた。

 耳を澄ませたが耳からは虫の音しか聞こえてこなかった。


 ノイズ混じりで途切れ途切れの声はいきなり途絶えた。


「なんだったんだ…」


 サビは一人呟いた。

 どこかで聞いたことがある声だったが、思い出せなかった。


 横たわって考えていたが、知らない間に眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ