第四話 サビとルリ④
うう、と呻き声を上げルリが目覚めた。ルリはすぐにハッとして、急いで体を起こした。
「気がついたか?」
サビがルイに声をかけた。
「ここは…」
「俺の部屋だよ。店に武器を売りに来て倒れたんだ。」
「それは…ご迷惑をおかけしました。」
「いいよ。来たときからフラフラだったのに、のんびり鑑定をしてた俺も悪いし。」
「すみません…」
ルリが申し訳なさそうにうつむいた。
倒れるまで疲れてるのに武器を売りに来るなんて、何か事情があるのだろうか、サビは思った。
「自己紹介がまだだったな。俺はスズ・サビ。鑑定士の見習い。16歳。」
「私は天狗のルリ。16歳です。」
「敬語じゃなくていいよ。同じ歳だし。」
「じゃあ…そうするわ。」
「天狗って、西の山の頂上に住んでるって言う?」
こくりとルリが頷く。
「あんたは空が飛べるのか。」
「ええ。ちょっと待って。」
ルリの背中から羽が生えた。
この為に背中が開いた服なのかとサビは納得した。
綺麗な羽だ。
角度によって瑠璃色や黒色に見えた。
サビが羽を見ていると、グルル、と盛大にルリの腹が鳴った。 サビは思わず吹き出した。
「羽を出すのはお腹が空くの。」
ルリは気まずそうにいい、羽をしまった。
「ちょっと待ってろ。」
サビはそう言い、立ち去った。
しばらく後、盆を持ってきた。
「りんご。食べられるか?」
「ありがとう。頂きます。」
ルリの食べ方はえらく綺麗だった。
良いところのお嬢さんなんだろうかとサビは思った。
「…おいしい!」
ルリは目を輝かせてパクパクと勢いよく食べた。
皿はすぐ空になった。
「あんなに高価な武器、どこで手に入れたんだ?」
「あれは全部家のものよ。軍資金として旅に出る前に持たされたの。」
ルリは本当に金持ちだったらしい。
ぜひコレクションを見せてもらいたいとサビは思った。
「コレクションが趣味の家なんだな。」
「そうね。あまり使ってなかったし。」
「どこから来たんだ?」
「ソウキュウよ。幽石を探しに来たの。」
「幽石…聞いたこと無いな。」
「地上にはほとんど無いはずよ。」
「国が地上以外にあるみたいな言い方だな。」
「そうよ。私たちの国は空の中にあるわ。」
サビはポカンとしてルリの顔を見た。
嘘を言ってる訳では無いらしい。
「空の中の国って、山の頂上ってこと?」
雲より高い山もあると聞いたことがあった。ルリが首を振った。
「信じてもらえないかもしれない。私も地上を見るまでは空以外に国があるなんて信じてなかった。」