証
どうぞご覧下さい。
城塞都市ノースハイ、サーウクル王国の北端にあり魔王の侵略を防ぐ王国防衛の要である。 魔王復活の三現象から早5日が過ぎようとしている。 現在までは幸いな事に魔物の侵攻はなく平穏を保っていた。
ノースハイ領主、ハイランド・ノースハイドは過去数百年の文献を調べていた。 魔物の侵攻に対しての有効な作戦を模索する為である。
「…………一貫性がないのはなぜだ? 魔王は復活の度に戦い方が違う」
魔物の軍勢は力で来るとだけ思いきや、魔法の部隊だけの時代も又は少数精鋭の時代もあり一貫性がなかった。 まるで魔王が甦る度に性格が変わっているかの様だった。 これではその都度対策を講じる事になり常に後手に回る事になる。 ハイランドが頭を抱えている時、王都からの早馬到着の知らせが来る。
「閣下、王都から早馬です」
「おお、来たか。 で何と言って来た?」
「はっ、増援部隊2000及び数ヶ月分の補給物資です。 なお増援部隊はカイゼル殿下ご自身が率いていらっしゃるとの事です」
「何と! 殿下自ら来て頂いているのか? 何と恐れ多い……いや有難い事か。 これで兵や民の士気も上がろうと言うものだ」
「はい、とても尊敬出来る御方です」
一方、増援部隊を率いているカイゼルはノースハイまであと1日程の距離にいた。 この男非常に要領が良く幼少の頃より天才と呼ばれた男ではあったが、欲深く欲しい物は全て手に入れる性格だった。
その為陰でこの男に泣かされた者は男女問わず多数に及んでいた。 更に持ち前の要領の良さを発揮して表沙汰にならない様に手を回す念の入れようである。
(ちっ思ったより掛かってんな。 早くパーッと騒ぎてーぜ)
騎馬だけならば素早く移動する事も可能だが歩兵更には補給部隊迄引き連れていてはそうはいかなかった。 置いて先行する訳にもいかず彼の鬱憤は更に溜まりつつあった。
翌日、ノースハイにカイゼル率いる増援部隊が到着した。 領主ハイランドを始め守備兵、住民代表が門に揃い下馬して王子を迎え入れた。
「御待ちしておりました殿下。 この度は殿下自ら率いての増援、誠に恐悦で御座います」
「出迎えご苦労。 ノースハイド卿変わりはない様だな。 貴殿はこの都市の要、体を厭えよ」
「はっ、勿体ない御言葉有り難く。 では殿下僭越ながら私が先導致します故、御疲れとは思いますがこのまま中央広場へ、民が殿下の御越しを今か今かと待ちわびております」
「よい、私の事は気にするな。 これもまた民の為よ」
こうして一行は中央広場へと進み出した。 広場へ向かう中央道は都市中の人で溢れていた。 皆待ちわびた増援をそれを率いた王子を大歓声を持って迎えた。 窓から花びらを散らし、兵の勇気を讃え、皆笑顔で迎え入れた。
カイゼルは歓声を送る民に笑顔で答えやがて広場に辿り着いた。 広場には壇上があり王子の言葉を心待ちにしていた。 先ずはハイランドが壇上に上がり民に向かって語り出す。
「ノースハイの民達よ、今恐るべき力がこの地を襲わんとしている。 だが恐れるな、挫けるな、王都から力強い援軍が今到着した。 そしてこの方御自らこの地に来てくださった」
ハイランドの紹介を経てカイゼルが壇上に上がった、その姿を見た民達は歓声を上げる。 カイゼルは腕を振り上げその声に応えた。
「勇敢なるノースハイの民達よ、我が愛するサーウクル王国の民達よ。 絶望に負けるな、王国は諸君らを見捨てはしない。 希望を忘れるな、神に選ばれし勇者は必ず現れる」
カイゼルがそう叫んだ瞬間、彼の右手の甲に突然眩い光を放った。 本人は元より周りの人々も目を庇いパニックになりかけた。 が、やがて光が収まるとその後にはYとUを合わせた様な文様が刻みこまれていた。 カイゼルが呆気に取られていると、ハイランドが文様を確認し叫ぶ。
「でっでっ殿下! これは……これは勇者の紋章です!」
その瞬間ノースハイ全土はとてつもない歓声に包まれた。
下絵を書き、骨組みを作り、肉を付ける。 何時の間にか骨が組変わり肉が多くなる。 なぜだろう?
ここまで読んで頂き有難う御座いました。