復活
意外と早くまとまったので、どうぞご覧下さい。
大陸暦2110年、それはまだ肌寒い早春の夜明け頃の事だった。 ここは王国の北端、城砦都市ノースハイ、人と魔物の境界線を守護する城砦都市である。 そして魔王の領域を監視する為にある監視棟に夜勤の二人の兵士が居る、その姿は寒さに震え吐く息は白かった。
「うう~さみ~、今朝は冷えるなあ」
「ああ、夜明け迄あと30プもない、交替迄あともうちょいだ」
「どうだい? 帰りに夜勤明けの一杯」
「いや、止めとくよ、早く帰って女房に会いたい」
「か~これだよ、新婚さんは羨ましいねえ。 ったくよ~」
同僚の言葉に苦笑いしながら辺りを監視する。 魔王の領域とはいえこの近辺はまだ緑も多く平穏と言えた。 時折現れる魔物も小さく弱い物しかいなかった。 東の空が明るくなり夜が明けてくる。 今夜も何事もなく終わったと兵士が思ったその時、異変は起こった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
突如起こった地震が都市を襲う。 殆どの人々はまだ寝ていた為いきなりの地震に対処が遅れパニックとなる。 監視棟の二人も柱や縁に捕まって収まりを待つのが精一杯だった。 地震は10ビ程続くと収まった。
「うわーびっくりしたー。 いきなりかよ」
「ああ地震何て何年振りだ?」
二人は気を持ち直すと急いで辺りを確認する。 幸い揺れ事態は強くはなく、被害は最小限の様だ。 だが一部の小さな建物は外壁のひび割れ、剥離等の被害があるようだ。 被害の少なさにホッとしていると次が起こる。 不意をつくように北、魔王の領域から突風が襲ってきた、まるで大型の嵐の様な風が都市を吹き抜ける。
「うわあああああああ」
「目が、目を開けてられねぇぇぇ」
外にいた人々も突然の突風に転倒する者もありあちこちで悲鳴が上がっていた。 すると突風は何事も無かったかの様にピタリと止んだ。 皆恐る恐る目を開けて辺りを見回した。 監視塔の兵士二人も恐る恐る辺りを見回す。
「一体全体なんだ今朝は? 何かの前触れかよ?」
「分からない……おい! 見ろあれ!」
兵士の一人がはるか北の方を指さした、魔王の領域のはるか先に現れたそれは巨大で黒く光る柱だった。 天にも届かんとする黒く明滅する柱は時折稲妻がほとばしっている。
「おっおい……あれ、一体何だよ?」
「俺に聞くな、分かるわけないだろ」
「領主様に報告した方が良いんじゃないか?」
「あっああ、俺もそう思う。 それとこれは直接見てもらった方が良いかも知れないな」
「わっわかった。 行ってくる」
兵士が一人領主を呼びに階段を駆け下りて行く。 その後ろ姿を見送りながら兵士は家にいる妻の事を考えていた。
「アンナ……無事でいてくれ……」
30プ後兵士が領主と共に監視塔へ戻って来た。 城塞都市ノースハイ領主、ハイランド・ノースハイドは落ち着かない様子で兵士に尋ねる。
「黒い柱とは真か? 何処だ?」
「こちらです、閣下」
ハイランドは北を望める窓辺へ速足で近づいた。 はるか北に立ち上る明滅する黒い柱、それを見た彼の顔は青ざめていた。 汗をかき縁を掴む手も無意識に力が入る。
「何たる事だ、急ぎ王都の陛下の元へ早馬を!」
「はっ」
「それから今より我が城塞は非常警戒態勢に入る、各所に伝えよ」
「かしこまりました」
そば仕えの騎士に命令しハイランドは深く息を吐く。 慄きながら兵士が領主に尋ねた。
「……閣下、あの柱をご存知なのですか?」
「……あれはな……先の地震や突風もそうだが、地震は鼓動、突風は息吹、そしてあの黒い柱は咆哮と呼ばれている。」
「? ……え何です?」
領主は黒い柱を睨みつつ呟いた。
「つまり、……魔王の復活だ」
今回はここまでです。 読んで頂き有難う御座いました。