謁見
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謁見の間、そこは今微妙な空気に包まれていた。 普通市井の者がこの様な場に出れば緊張してしまう物だが、将軍と共に入って来た男は全く動じていなかった。 そればかりか国王が入って来るのを待つのに飽きたのか、欠伸までする始末である。
「ガイナス殿、欠伸はまずい。 堪えてくれ」
「悪い。 王様はまだなのか?」
「時間迄あと10プ程ある。 もう少しだ」
「了解だ」
囁く様に会話をし国王が来るのを待つ二人だった。 やがて侍従の一人が国王の到着を宣言する。
「サーウクル王国国王キングス・ドワ・サーウクル様、御入来」
奥の扉が開きキングス国王が入って来る。 略式の王冠と錫杖を持ち華美ではないが見事な服をまとい威厳に満ちた姿だ。 その後少し離れて現れたのは、カイゼル・イワ・サーウクル、王国の王子である。
王は静かに玉座に腰を降ろし王子は傍らに立った。 一方ガイナスは王が入って来たと同時に将軍が頭を下げたので、倣って頭を下げていた。 その二人に王が声を掛ける。
「両名共、面を上げよ」
王の言葉に二人は頭を上げる。
(ほう、思っていた以上に若いな。 王子と余り変わらない歳に見える)
王はガイナスの若さに内心驚いていた。 将軍から聞いてはいた物の国内最強と言われるからには30程の男を想像していたのだ。 だが目の前にいるのは20位の若者ではないか、最強と言う噂は本当か分からなくなっていた。
(こんな俺と歳が近い男が国内最強だと? 何の冗談だ。 将軍も耄碌したな)
王子は目の前の粗末な格好をした同年代の男が国内最強などとても信じられなかった。 試練の時も単なる偶然か内容を知っていた可能性もあるとさえ考えていた。
「ジェネガ将軍、この若者がそちの申していた者だな?」
「はい陛下、左様でございます」
「若者よ、名をガイナスと言ったか?」
「ああそうだ、お初に王様。 俺がガイナスだ、宜しく」
王族に対してガイナスの有り得ない言葉にその場にいた者は一瞬耳を疑った。 だが我に返ると皆激怒した。
「き、き、貴様! 陛下に対してなんたる口を」
「無礼にも程がある! 近衛隊この無礼者を捕縛せよ」
「陛下、この様な輩は即刻処刑すべきです」
その場に居合わせた重臣達は口を揃えてガイナスを非難する。 さしもの将軍も頭を抱えていた。 近衛兵は柄に手を掛けジリジリと近付いて行く。 王といえば下を向き手が震えていた。 近衛兵がガイナスの肩に手を掛け様とした時。
「ワアッハッハッハッハッハッハ!!」
突然王が大声で笑いだした。 周りの目も気にせず腹を抱えて笑っていた。 皆突然笑い出した王に呆気にとられて動けなかった。 傍らにいた王子は一連の事と、王が笑い出した事でパニックになっていた。
(一体何がどうなった? 何だあいつの言動は? 父上も突然笑い出して、こんな事いままで一度もないぞ。 どうすれば?)
「王族として生きてきてこんな挨拶は初めてだ。 無礼を通り越して愉快極まる」
王は笑いながら言うが重臣は納得がいかなかった。
「しかし陛下、このままでは……」
「良い、言葉使いを修得していない者に使う様命令しても意味をなさぬ。 しかも事前に不問にすると約して有ったのだ。 王から破る訳にはいかぬ。 皆も良いな?」
「……はっ畏まりました」
重臣達は王の言葉に逆らう訳にはいかず渋々頭を下げ納得する。 一先ず場が落ち着いた事で将軍は胸を撫で下ろした。
(やれやれ、寿命が縮んだわ。 陛下のお言葉が有ったとはいえ、あそこまで砕けた口調で話すとはな……参った)
当のガイナスはそんな事はお構い無しで飄々とした態度で立っていた。 そんなガイナスを面白そうに見ていた王が顔を引き締めて言う。
「さてガイナスよ、実はそなたの実力を疑う者が居ってな。 そこで今一度試したいのだ」
もっと文章が上手くなりたい今日この頃。
ここまで読んで頂き有難うございました。