鍛練
どうぞご覧下さい。
カイゼル・イワ・サーウクルは自らの居室に近衛隊副隊長ガドーの突然の訪問を受けていた。
「父上がわざわざ会うとはな、それほどの奴なのか?」
「将軍の試練では躱す処か短剣を叩きおり、さらに折った刃先を喉元に突き付けたとか」
ガドーは辛うじて躱せたあの短剣を折った人間いるなどとても信じられなかったが、カイゼルは楽しそうに笑みを浮かべる。
「ほぉ……国内最強の噂は伊達ではないと言う事だな」
「はい……如何なさいます?」
「……面白そうだ。 俺も顔を見ておくか」
「殿下もご臨席為さると?」
「ああ、いずれ俺の護衛になるなら遅かれ早かれ会う事になる、それに実力を直に確認出来る良い機会だ。 それにこの勇者の力を試すのにうってつけじゃないか」
侍女の用意した果実酒を飲みながらカイゼルは不敵に笑う。 血統と自らの才能からくる絶対の自信、だが今回は不吉な予感しかしないガドーは何も言えなかった。
一方当のガイナスは王都の外れで日課の鍛練をしていた。 愛用の両手剣を振る、ただしゆっくりと。 筋肉の筋一本まで意識を巡らせて、己の思い描く動きを寸分違わず描ける様に剣を振る。 鍛練を始めて2ジー近くになる為全身から汗が流れる。
(そろそろ日が沈む、最後の仕上げと行くか)
ガイナスは剣を振る速度を徐々に上げていく。
ブーーン・ブーン・ブォン・ブン・ブッ・バッ・バッ・ババババババ
最早並みの者では剣先すら見えない程の速度で剣を振るガイナス、剣が空を切り裂いていく。
「ふんっ」
最後の一振りを渾身の力を込めて振り抜く。 空を裂き風が舞う。 振り抜いた構えのまま暫く動きを止め、ゆっくりと力を抜いていく。
「ふーーー」
構えを解いて剣を置き体をほぐす、ガイナスの体に心地よい疲労感が満ちていく。 一息ついたガイナスは剣を肩に担ぎ、近くにある寝床の小屋へと向かう。 この小屋はガイナスが王都に来る前からあり、ずっと放置されて居たのを当時10才頃のガイナスがこれ幸いにと住み着いた小屋だった。
小屋に帰りついたガイナスは愛用の両手剣を壁に立て掛けるが、そこには両手剣以外にも様々な武器が掛けてあった。 片手剣、槍、斧、鎚、弓等々、それぞれがよく手入れされ使い込まれている様に見える。
ガイナスは布を片手に小屋の裏にある井戸へ向かいそこで裸になると、水浴びを始めた。 汗をかき火照った体に冷たい水が心地いい。
「ふーー、スカッとするな」
汗を流し終え体を拭うと、服を着替え薪を燃やして食事の準備を始めた。 鍋を火に掛け、水、干肉、野菜の順に入れる、炊き上がると、器に盛り一口含んではゆっくりと咀嚼していく。
食べ終わると片付けて早々に寝てしまった、王との謁見など全く意に介さないかの様に。
翌朝まだ日が昇る前にガイナスは目を覚まし、朝の清らかな空気の中体をほぐしていた。 寝ている内に固まった体を伸ばす、時間を掛けてほぐした。
「よし、今日は槍でいくか」
普段ガイナスは両手剣を愛用しているが魔物や野獣にはそれが適さない場合もある。 硬い外皮を持つ物や洞窟等に潜む物等だ。 その場合両手剣では不利になるのでそれ以外の武器も必要になる。 その為ガイナスは普段から剣以外の武器の鍛練もしていた。
ガイナスは小屋から槍を取ってきて構えた。 そこから基本の突きや横なぎ、槍回し等を一通り2ジー程やり込み鍛錬を終えた。 この後汗を流し、何時もの様に朝食を食べる。
「よし、今日も快調快調」
ガイナスは愛用の両手剣を背負い、斡旋所目指して歩いて行った。
武器、武術等々こういう類は表現が難しい。 映像をイメージしても文として出来ているか? 不安。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。