夕暮れ
どうぞご覧下さい。
王都ミリューミッテ南、仕事の斡旋所。 日も暮れ始め殆ど人が居なくなった頃、ガイナスは戻って来た。 戻るや否や仕事募集の貼り紙を確認し、緊急案件はないと分かると受付に行く。
「エマ、俺宛の仕事あるか?」
「お帰りなさい、ガイナスさん。 ちょっと待って下さいね」
エマと呼ばれた受付嬢は仕分けされた募集用紙を見ていく。
「ん~ないですねぇ。 まあ余程の件でないと回すなって所長に言われてますし、でも急にどうしました?」
「いや、また遠出する事になりそうなんでな」
「?……あ! 今朝の将軍様の件ですか……」
「まあそんな所だ、皆には内緒で頼むよ」
口調は軽いが目は真剣だったのでエマは何も言わず頷いた。
「ありがとよ、じゃあなエマ」
「あっはい、お疲れ様でした」
ガイナスはエマに別れを告げて斡旋所を後にした。 エマは見送りながら何時もと違う様子のガイナスに言い知れぬ不安を感じていた。 エマがあれこれ空想しているとドンゴが帰って来た。 エマは迷ったがガイナスの事を話す事にした。
「所長、お帰りなさい。 それで……あの……」
「ん? 何かあったのか?」
エマはかい摘んでガイナスの様子を話した。 ドンゴは黙って聞いていたが話が終わると何時もの口調て喋り出す。
「エマ、気にするな。 あいつは俺達とは違う。 俺達には無理な事でもあいつはやってのける」
「はあ……」
「だから俺達の基準であいつを計るな。 それとこの事は誰にも言わん方が良い、国絡みだからな」
「はい、気を付けます」
ドンゴはエマの言葉に頷くと"疲れたから寝る"と言い奥へ引っ込んだ。 面倒な事になるかもとエマは溜め息を吐きながら帰り支度を始める。
サーウクル王国。 その王城の奥に王家の住まいがあり、かの勇者に選ばれた王子カイゼル・イワ・サーウクルの居室もある。 彼の居室は夕日で紅く染まり、哀愁を漂わせていた。 が寝室ではそれを全く意に介さない事が起こっていた。
汗の匂いが充満した中ベッドの上で侍女姿の女が伏せていた。 そばの椅子には男が気だるい体を休めていた。 男は居室の主カイゼル、女は部屋付の侍女だ。 カイゼルは会議の後、理由をつけては執務を休み、侍女に手を出していた。
ノロノロとベッドの侍女が身を起こし乱れた服を整えると消えそうな声で"失礼致します"と頭を下げ退室した。 その目は泣き腫らした様に真っ赤だった。 カイゼルはそんな侍女の後ろ姿を鼻で笑い、用意してあったブラデーをグラスに注ぐと一気に煽った。
「ふー。 ふん……さっきの女、初物で具合はまぁまぁだったがピーピー喚きやがって。 ……告げ口はしないと思うが念のため釘を刺しとくか」
カイゼルが呼び出しのベルを鳴らそうと手を伸ばすと、ドアがノックされ先程とは別の侍女が声を掛けてきた。
「殿下、近衛隊のガドー様が目通りを願っておりますが?」
「ガドーが? ……良いだろう、通しておけ」
「畏まりました」
侍女を下げた後汗ばんだ体を濡らした布で大雑把に拭うとガウンを羽織り客間へと向かった。 客間に着くと略式の鎧に身を包んだ男がいた。 この男、近衛隊副隊長のガドー。 カイゼルの元学友である。
「ガドー何かあったか?」
「約束もなく参上致しまして申し訳ありません、殿下」
「気にするな、俺達の仲だ」
「はっ恐縮です。 殿下、今回参上致しましたのはとある話を耳にしまして、お知らせした方が良いと思い参りました」
「ある話? 何だ?」
「はっ殿下の魔王討伐に際しての護衛がガイナスなる男の名が挙がっているのはご存知かと思いますが、その男が将軍の試練を突破し明日の真昼に陛下に謁見するとか……」
「ほお、それは興味深いな」
サブタイトル……滅茶苦茶悩む。 今回のも、んーと首をかしげる感じ。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。