将軍
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王都中央、軍本部将軍執務室。 ここに報告をまつ男がいた、ジェネガ将軍、前回会議において護衛にとガイナスの名を出した人物である。
(王国最強と民の噂になる程の男、その実力を確かめねば。 護衛として役に立つかどうかそれ如何によっては王子の命運が変わって来る。 全く難儀な事だ)
ガイナス連行の報告を今か今かと待っていたら副官が部下からの報告書を持ってきた。 報告書を読んで将軍は目を見開く。
「このサーベルタトーラを一人で退治と言うのは俄には信じられんが、本当なら大したものだな」
「はい、並々ならぬ力の持主かと」
「しかし、用があるなら私自ら来いか。 中々大胆な奴よ」
「閣下、このような無礼者即刻引っ捕らえましょう」
強行策にでる副官を将軍は手を挙げ制した。
「待て、そう急くな。 大勢で行って万が一この者を殺してしまっては何にもならん」
「では閣下自ら御出になるのですか?」
「私が行けば来ると言っておるのだ、であれば行った方が素早く事が運ぶ。 それにこのような些細な事で時を浪費する訳にはいかん」
「はっ失礼致しました」
「良い、明日の朝このガイナスとやらに会いに行く。 準備をして置いてくれ」
「畏まりました」
副官は敬礼をし部屋を出た。 将軍は席を立ち窓から空を眺める。 その顔は不敵な笑みを浮かべていた。
「貴様の力、儂自ら見定めてやろう」
将軍は若かりし頃の血が甦って来るのを感じていた。 強き者と戦いたいと願う血が。
次の日、早朝。 武骨だが大きく立派な馬車が王都南大門近くの斡旋所前に停車した。 御者が素早く馬車の扉を開くと軍の正装に身を包んだジェネガ将軍の姿があった。 早朝とはいえ道行く人々は何事かを集まってきた。 将軍はそれらに目もくれずしっかりとした足取りで斡旋所へ入って行った。
「頼もう、ガイナス殿はおられるか?」
力強くはっきりとした声が斡旋所内に響いた。 所内にいた誰もが呆気に取られていた。 軍の正装に身を包んだ初老の男性、恐らく貴族であろう人がなぜここに? と皆が思っていた。 皆がそう思う中奥からドンゴが足を引きながら出てきた。
「やれやれ、王国軍の将軍閣下ともあろう人がこんな所まで足を運ばれるとは不用心なのでは?」
「? そなた……もしやドンゴか! おお、何と懐かしい」
将軍は叫ぶとドンゴに近づき手を取った。 その顔はとても嬉しそうだった。 ドンゴもまた笑っていた。 ドンゴが将軍と知り合いである事も驚きだが、ドンゴがあのドンゴが笑ってると人々は唖然としていた。
「で閣下、今日はどの様な御用で?」
「ん。 おお、そうであった。 昨日部下が来た筈だがここにガイナスと言う若者が居るだろう。 何でも将軍直々に来いとの伝言があった様なのでな、こうして参上した訳だ、ガハハハハハ」
「全くあんな売り言葉を真に受けなさるとは……相も変わらずですな」
「ガハハハ、今更この性格は変わらんわ」
「まあここで立ち話は何ですから、奥へどうぞ。 奴さんならその内来ますので」
「そうか、すまんな。 では待たせてもらうとしよう」
ドンゴと将軍が奥の部屋へと入って行った途端、人々が話し始めた。 ドンゴの意外過ぎる過去等々正に喧々諤々の様相だった。
ガイナスは何時も様に斡旋所へ向かっていた。 すると遠目からでも分かる大きな馬車が斡旋所前に停車していた。
「珍しいな馬車が来るなんて」
立派ではあるが飾り気もない馬車を横目に見ながら、斡旋所の中へ入って行った。
「何だ? こりゃ」
喧々諤々とやかましい所内にガイナス呆れていた。 なので近くにいた顔馴染みの男に事情を尋ねる。 男は少し興奮気味に先程の件を話した。
「将軍が来た? 本当かよ」
話が紡がれる毎に台詞やなんやらが増えていく、もっとスマートにならんもんかと自己嫌悪
ここまで読んで頂き有難うございました。