閑話 保護した少女(中編)
「そうだ、コゾン、お前が引き取れ」
「うぇっ?!俺がっすか!?」
なんてことを言い出すんだ!?この人は!
予想外の言葉に眼を白黒させてる俺とは逆に、隊長はにんまりと得意げに笑う。いい事思いついたとばかりに。
「何もずっとではない。身元が確定すれば救済院に預けられる。それまでの間だ」
「間って…」
「お前だって、このままあの子が孤児院に入れられるのは良しとしていないのだろう?」
「いや、そりゃまぁ…」
「だったら、お前が引き取れば、あの子も孤児院に入れられずにすむ。その上、平民のお前が引き取れば、貧民にもならずにすむではないか……よし問題解決だな」
全ての問題事が無くなった、と隊長はさっぱりとした表情で、にこやかに俺に笑う。
「明日には王都に着く。そうしたらすぐに宿を取れ。ちゃんとあの子と過ごせるような宿だ。なに、宿代は心配するな。それぐらい俺が出してやろう。大丈夫だ、見るからに上位貴族の子だ、身元はすぐに判明するだろう」
「いや、あの、隊長……」
「なんだお前、まだ何かあるのか?……まさか、自らこの話題を振っておいて、話し合いの末問題解決となったというのに、今更引き取ることに躊躇しているのか?」
話を振ったことは否定しない。しないが、一切話し合いなんかされてねぇし、一方的に引き取りを決定されようとしてるし、そうなったら戸惑わない人はいねぇし。
「なんで俺……騎士の誰かが引き取れば…」
「彼らは駄目だ。彼らが引き取るとなると、家に連れていかなければならなくなる。貴族かどうかはっきりしない子を、何事もなく受け入れてくれる家はそうそうない」
「いや、まぁ、確かにそうだろうけど…」
貴族は懐が狭いからな。でも――
「じゃ、隊長が引き取れば…」
「残務整理で飛び回り、家にまともに帰れるかも解らないこの俺が、か?」
「いや、それは……」
「だったら、お前しかいないではないか」
隊長と話してたら、その通りだと納得してしまいそうになるが……なんか…やっぱりなんか釈然としない。あれ?俺、騙されてねぇか?
「いや、でも…」
「なんだ、まだ何かあるのか?……意外と小物だな」
期待はずれだ、と言いたげな呆れ顔の隊長に内心歯噛みする。
うぐぅ……俺が騎士に対してよく言っていた言葉を……いや、ドグゼやキットの仔をやり取りする訳じゃねぇんだ。みんな俺とおんなじ反応するはず。だから俺は小物じゃねぇ。断じて違う。
この場をなんとかしようと、ない頭で色々考えを巡らせてる俺を余所に、隊長はその場に立つと言い放つ。
「俺は今から色々と忙しい」
お前の相手をしている暇はない、と立ち去っていく隊長の背中を茫然と見送りながら、思った。
……俺が引き取ることは決定なんだ…
明け三つの鐘がなる頃、俺達は王都に着いた。着くとすぐ解散となったから、俺は隊長に言われた通り、宿を探した。納得はしてないが、あれから隊長は先に王都へと行ってしまって、未だ会えてないからしょうがない。
ふん、いいさ……すっげぇ高い宿に泊まってやるぜ。俺が今迄泊まったことねぇ、すっげぇ金のかかる宿にな。金は隊長が出すと言ったんだ。存分にたからせてもらうぜ。
決めた宿は普段俺が泊まる宿より二つ上位の、金持ち商人が泊まるような、そんな中級宿だ。入ってすぐはリビングで、風呂とトイレ、別部屋に寝室があって、ベッドは二つ。ベッドはふかふかだし、メシは朝と夕の二食付だし、部屋にだって運んでもらえるし……完璧だ。これなら文句も出まい。
宿の子供の働き手に、孤児院に来るはずの隊長への伝言を頼み、ひと仕事終えた自分を労うために、寝心地を確かめるのも兼ねて、俺はベッドに横たわって仮眠を取った。
暮れ三つの鐘が鳴る頃、隊長は少女を連れてやって来た。少女の服は黒く汚れた寝着ではなく、新しい服を着せられ、全体的に身綺麗になっていた。
派手じゃない、少女の年齢にあった可愛らしい服……隊長自ら用意したのか…?……なんだか、訊くのが怖い気がする……あえて無視しよ。
「……なんだ、遠慮したのか?意外だな」
手に持っていた荷物を床に置き、部屋をぐるりと見回した隊長の感想に、俺はにこやかな顔のまま内心毒づく。
お前ら貴族が泊まる高級宿と一緒にするな。あんなとこ落ち着いて寝られるか。
「この子の世話を見さすために、従者がいるような宿にするのかと思っていたのだが……」
しまった!その手があったか……
働き手というより貴族の世話人みたいな従者もどきが色々してくるそれに怖気づい――もとい煩わしいからやめたが……そうだった…そうすれば丸投げできたんだ。
「成程、預かるからには、自分で全て面倒を見るという気構えか……流石だな」
なに、勝手に結論づけて、勝手に納得してんだよ。そんなん言われたら、宿を替えるって言い出しづらいじゃねぇか。
「いや、あの――」
「この子は俺の家で風呂に入れ、服を着替えさせ、夕食も食べさせた。後は寝かせるだけだ」
「あ、そりゃ結構、それで――」
「あぁ、解っている。この子の当面の服とか必要な物はここに全部入れてある。もし足らなければ、この中に金があるからそれで賄えば良いし、宿にツケておいても良い。話は通しておく」
「いや、そりゃ助かるっすけど――」
「そうか、じゃあもうなんの問題もなさそうだな。困っている少女に手を差し伸べてくれたお前に、不自由な思いをさせる訳にはいかないからな」
なぁ大物、とニヤリと笑う隊長を頭の中でボコボコにしながら、俺も隊長に笑い返す。
このヤロウ……わざと俺の言葉にかぶせて邪魔しやがって……一体なんだ?仕返しか?絶対治安部隊中の俺に対する仕返しだな?意外と根に持つ奴か?小物め。
「じゃあ数日この子を頼んだぞ」
「……解ったよ」
引き受けた憶えはない、と言いたいが、言ってまた小物扱いされるのも癪だから言わない。
爽やかな笑みを浮かべて去ってった隊長の背に内心罵倒しまくって、俺は残された少女に眼を向ける。
椅子に腰かけ、こちらを見ていたらしい少女の顔は、無表情で瞳にはなんの感情もない。
「えっと、しばらく一緒にいることになったコゾンだ。お互い緊張するとは思うが、しばらくよろしく頼む」
少女からは緊張どころか、突然知らない男と部屋で二人っきりになり、今後一緒に行動することになった事に対する不安も怯えも一切見えない。
俺は少女の荷物を持ち、寝室のドアを開け、ベッド脇に少女の荷物を置き、部屋を出て少女へと近づく。
「今日も色々あって疲れただろ、もう寝ろ」
俺の言葉に少女は無言のまま寝室へと入っていく。着替え等々あるだろうから、とドアを閉めてふと思う。
自分で寝着に着替えれる…よな?確か俺が子供の頃はあのくらいの時にはもう一人で着替えてたし……いや、記憶を失ってるから、そんな常識も忘れちゃってるか?もしそうなら、着替えを手伝わなきゃいけねぇのか?というか、まさか風呂もか?!いやいやいやいや……いくらなんでもそれはまずいだろ。多分六歳ぐらいだし、もう一緒に入っちゃまずい年齢だ。なんというか犯罪?じゃねぇか?……いや、一切疚しいことはねぇが、そういう問題じゃねぇだろ。
もう大丈夫だろう、とそっとドアを開けると、少女はベッドに入って眠っていた。近づいてみると、ちゃんと寝着に着替えられたようで、ベッドの上に先程まで来ていた普段着が脱いであった。
どうやら着替えはできるようだ。だったらきっと風呂も一人で入れるはず。
ちょっとほっとしながらも、またふと思う。一体何を憶えていて、一体どれだけのことが一人で出来て、一体何を憶えていないのか。記憶を失くしてしまうのは、どれだけの影響があるんだろう。
俺は少女の髪に触れた。貴族にしては短い、肩上の髪は毛先が乱雑になってる。助け出されるまでの間に誰かに切られたんだろ。珍しい髪だ、付け毛としての需要がある。
頭には、ほとんど治りかけの血の滲んだ打撃痕があった。高額商品の貴重な貴族の子に手を出すとは思えない。拉致した際に負わせた怪我だろう。
記憶を失くした原因はきっと暴力によるものだろう。頭の傷だけじゃない。暴力は何も体だけに与えられるものじゃない。攫えないはずの貴族の子が攫われている。服を血で黒く、それも寝着を染めていた。それだけで何があったのか、容易に想像できる。
まぁ、おいおい解っていくか。
上着を脱いで、燭台の蝋燭を吹き消し、ベッドに入る。欠伸をして瞼を閉じると、いつもの夢がやって来た。
数日少女と過ごして解ったことが幾つかある。
まず、少女は記憶を失くしていても、生活に関わる事柄については無意識化で憶えているようで、『着替える』『食べる』『洗う』『トイレを使う』などから、平民が使ったことない『銀食器を使う』という貴族らしい行動もできていた。
平民が使うのは木のスプーンぐらいで、それ以外は手掴みだ。ここは中級宿だからフォークやナイフを使うような食事も出されるが、それを教わりもせず、普通に使っていた。
いわゆる『体が憶えている』ことは記憶に関係なくできるようだ。
反対に、体を使わない物事は驚くほど知らなかった。初めて風呂に入れた時、まさか水とお湯の魔具の違いを知らないとは思わず、自分で入れさせたら水の魔具で湯船を溜めて、危うく水風呂に入るところだった。
ともかく魔具の違いを知らないというよりも、魔具自体に慣れてない感じで、多分傍付が用意するから、魔具を自分で使ったことがなかったんだろう。
精霊祭の最初の先触れに遇った時は、初めて少しだけ感情を出して、降ってくる精の粉に驚いて空を見上げていたが、そのことに俺の方がビックリした。精霊の存在や恩恵はこの世に生を受けた時から当然のことで、驚くようなことじゃないからだ。
唯一感情を揺らしたのはその時だけで、少女は基本的に何に関しても反応が薄かった。俺の言葉に疑問も持たないし、言われるがままに行動するし、そのことに対して抵抗も不満もみせない。ちゃんと解ってるのか心配になるが、最初の取り決め通り頷きはするから、理解はしてるようだった。
理解はしてるが理由は解ってなさそうで、もし「道の真ん中で踊るんだ」と無意味なことを言っても、なんの疑問も抵抗もなく、言われた通り踊るだろう。なんで踊らなければならないかを考えもせず。
まぁ、そんなことは言わねぇし、しねぇし、させねぇけど。
そんなこともあって、最低限の取り決めをした。反応が薄いんで、俺の言葉にも無反応無表情。それじゃ俺の言葉が聴こえてるかどうかも解らなかったから、必ず頷くように約束させた。
後は『部屋の鍵は開けない』『俺以外の者の言う事は聴かない』『朝食は必ず一緒に食べる』等々。
『俺の言う事に納得できなければその都度その場で言う』とかも約束させたが、これを実行されたことはまだない。
大体感情や考えが感じられないんだから、文句も我儘も言うはずがない。おかげで子供との、それもそれなりに成長した少女との初めての生活なのに、意外にも快適だった。
いやホント素直といえば素直だし、口答えしねぇし、あれ?子供との生活ってこんなに楽だったっけ?……そんな訳ねぇじゃねぇか。いくら鈍い――もとい考えなし――もとい……なんでもいい、とにかくそんな俺でも解る。このままじゃ良くない。
「聴いてるっすか?隊長さん。やっぱ子供はほどほどに我儘を言うべきなんっすよ。それが普通なんっすよ。それを素直っつうか、感情が死んでるっつうか、思考停止させてるっつうか……どう思います?隊長さん」
「……うるさい…」
「うるさくって、そんなうるさく喋らせたりなんかできないから困ってるんっすよ、隊長さん」
隊長もこの難問を解けずに困ってるのか、難しい顔をして酒を呷る。その気持ち、よく解る。俺もホントどうしたらいいか悩んでる。
感情を死なせ、考えることを止めてるのは、死んでるのと変わんねぇじゃねぇか。生きてるからこそ、いろんなことを感じ、いろんなことを考え、それによって感情が、良いことであれ、悪いことであれ、揺さぶられるんだ。
どうやったら感情を生き返らすことができるのか、いろんなことを考えさせれるのか……ホント悩ましい。
大きなため息をついた俺に、隊長は嫌そうな眼を向けてくる。
俺達は今、宿の一階の食堂で酒を呑み交わしながら、一週間振りに会う隊長に、少女との今迄のことを報告してたんだが……なんだか隊長の様子がおかしい。話せば話すほど、瞳に呆れが浮かんでくる。まったく解せぬ。
「……もう俺の話をしていいか?」
「なんの話でしたっけ」
「……あの子の身上のこと…なのだが……」
隊長の言葉に一気に酔いが醒めた気がした。
「何か解ったんっすか?」
「いや残念ながら、王都の政務館からは色よい返事は貰えなかった。どうやら該当する少女が中央貴族の中にいないようなんだ。地方領地の貴族の中には、いる可能性はあるのだろうが……」
隊長は眉をひそめて、言い淀む。
「あるけど、なんっすか?」
「この件を、俺はもう担当することができないんだ」
「うぶっ……どういうことだ!?隊長!」
突然の離脱発言に俺は呑んでた酒を噴き出しそうになった。そんな俺に隊長は少し嫌そうに顔をしかめる。
「保護した子供達の孤児院の件が一段落したので、俺はユニタホ領地に行き、そこで今度はそこの国境門の門兵の隊長をしなくてはいけないんだ」
「なんで急に……」
「急でもない。実は今回の任務が終われば、行くことが決まっていたんだ」
中央にいるのに地方に行かされるなんて、いわゆる左遷じゃねぇか。
「一体何をしたんっすか」
「失礼なことを言うな。別に処罰を受けてのことではないぞ」
眉間に皺寄せながら、隊長はコップの酒を呑む。
「……俺は次男だが、俺の母親は愛妾でな、そのせいで俺は継承権から外されている。一応家名も爵位も名乗ることは許されているが、存在自体が目障りらしくてな、ちょうど空きがあったということで、長男がわざわざ名乗りを上げてまでその任務を請け負ってくれてな、もう何があっても断ることなど決してできないんだよ」
「じゃ、俺は、あの子はどうなる……」
隊長がこの件から手を引き、ここから離れてしまう。その事実は隊長に、少女も俺も見捨てられたように感じられた。
「そのことだが……お前、このままあの子を引き取る気はないか?……お前、気づいているか?あの子といるようになって、お前は変わったぞ?……治安部隊にいる時は命を粗末にしていて、腹が立つほど捻くれていて、慇懃無礼だったお前が……今は別人のようではないか……それはあの子の影響なのではないのか?」
そんなに嫌な奴だったか?……まぁ、否定はできねぇが……確かに、今迄にない生活で戸惑うことは多いが、あれだけイラついてた感情が、今はそれほど感じねぇ。だが、それは俺だけの問題であって、少女にとって、それが良いことかは解らねぇ…
俺の思いに気づいたのか、隊長は言葉を続ける。
「お前から聴いた話で気づいたが、お前が思うよりも、あの子は感情とかが動いている気がするぞ?……それはそうだろう。何故なら、お前がそこまで気にかけているのだからな。だから、このままお前があの子を引き取れば、お互い良い結果になるのではないのか?」
そうだろうか……当事者だからか、突然のことだからか、いろんな意味で判断がつかない。
「政務館からの返書がない限り、お前がこのままあの子を引き取っていてもなんら問題はない。今後身元が証明され、あの子の引受人が現れるまで一緒にいることができる」
「……それはどのくらい…」
「地方貴族の確認を全て取るには一年ぐらいかかるだろう」
「一年……」
「返書はどこででも受け取ることができる……だから、お前も一緒にユニタホ領地に来て、国境門の門兵にならないか?治安部隊でお前の腕の良さはよく解ったからな」
「えっと……ありがとう…」
ニヤリと笑う隊長に、俺は複雑な思いで礼を言った。それは騎士と起こした問題か、それとも一緒に組んだ時か……どっちだ?
「今のまま傭兵を続けるとなると、仕事であの子を置いて、家を開けざるを得なくなるだろう。だが、門兵になれば毎日家に帰ることができるようになるぞ?」
「……すぐには返事できない……ちょっと考えさせてくれ…」
「解った。だが俺はお前の返事を待つ余裕はない。すぐに行かないといけないからな。もし俺の提案を受けるなら、あの子も連れてユニタホ領地に来て、直接俺に伝えに来い。そこで色々手続きをしてやろう」
「……解りました…」
隊長は一気に酒を呑み干すと、俺の肩を軽く叩いて帰っていった。
どうすればいいんだ……?
俺はベッドで眠る少女の頭を撫でる。
この案件が隊長の手を離れてしまったらどうなるか解らない。今は隊長命令で俺が預かってるが、本来ならば少女は孤児院に預けられるもの。人が変われば従来の形に戻る可能性は充分ある。
だがそうなると、少女は貴族らしき子として入るのか、それとも身元不明の貧民として入るのか……どちらにしろ、いい立場とは言えねぇな。
このまま引き取るべきなんだろうか……確かに少女と過ごすようになって、環境がガラリと変わった。以前は、俺は金を稼ぐため傭兵として家を空けてることが多くて、息子は妻に任せっきりだった。だから、子供と二人っきりで過ごすのはこれが初めての経験だ。いや、一度ぐらいはあったか?……ともかく、一歳になったばかりの息子と六歳ぐらいの少女を比べるのもどうかと思うが、子供と一緒に過ごすのは、俺にとって初めてのことで、俺自身も今迄になく感情を揺さぶられてるのは確かだ。
あれだけ毎晩見続けていた妻と息子の殺される夢を、最近では時折見ないこともある。何故見続けるか解らんから何故見ないようになったかも解らんが、とにかく少女との暮らしが俺に何かしらの影響を与えたのも確かだ。
変化は少女にも起きてると隊長は言ったが、ホントか?確かに少しだけ、ほんの少しだけ無表情の少女の顔に、紫の瞳に、感情が見え隠れするようになったような気がしねぇでもない気もするようなそうでないような……
そういや、水の魔具に桶だけでなく、花瓶やらコップやら置いて、湧いた水が全部八分目で止まるのを、不思議そうに試しては、興味深そうに見てたっけ……あれは感情が動いたってことなのか?失い空っぽになった記憶の部分を新しい知識で埋めようと、感情が、心が、望んでるのか?
だったら、このまま俺が見守って、空っぽの部分を埋める手助けをしてやった方がいいんじゃねぇか?それが短い期間でも、それが少しでも、少女の救いとなるんじゃねぇのか。
俺が行くと決めれば、少女も一緒に連れて行くことになる。それが俺にとって、少女にとって、良いことかは解らないし、自信もない。だが今よりも悪くなることはないはずだ。俺の身勝手な思い込みかもしれないが。
だったら、地方領地からの返書が来るまでの一年間、その間だけでも『親子ごっこ』してもいいかもしれない。
俺は少しの間、少女と共に生きることを選んだ。
隊長さんは意外と食えない人です。
ヤラれっぱなしだった隊長さんに、今度はコゾンがヤラれてます。
仕返し?いえいえ、隊長さんはそんな心の狭い騎士ではないですよ……多分。
隊長さんの名前は次話登場します。お楽しみ。