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影の王

作者: 天鳥そら

古いおとぎ話というのはドキドキします。文字が広まっていなかった時代は口伝でした。そんな雰囲気が伝われば良いなと思います。


ある国に伝わるお話に、影の王がいるというものがありました。



戦乱の末に築いたこの国を、二人の王様が協力して治めていこうと話し合いました。ひとりは輝く薄い金にゆるやかなウェーブがかった髪と薄い晴れた空の色をした瞳をもっていました。もうひとりは、浅黒い肌に、黒曜石を思わす瞳と黒い髪をもっていました。



金のウェーブをなびかせる王は、人をまとめ先導することが得意でした。金の髪が日の光に照らされているのを見て、国民は嬉しげに顔をあげ、戦場では軍人の士気が上がりました。



黒髪に黒い瞳をもつ王は、背後で密やかに動くことが得意でした。音もなく敵陣に忍びこんで、速やかに任務を遂行して去っていきます。国民が困っている様子を見ては、ふらりと現れては解決できるよう取りはからいます。



金の髪をもつ王を尊び、黒の髪をもつ王を近くに感じた時、国民は思わず安堵の息を吐きました。



二人は長々と話し合い、金のウェーブをもつ王が玉座に座ることになりました。


「互いに隣り合わせで座ろうじゃないか」



薄い青い瞳が不安げに揺れます。まるで黒髪の王の功績を独り占めするようで、心苦しく思いました。黒曜石の瞳をいたずらっぽく煌めかせ、自分は影の王になると説き伏せました。玉座に座る王の影の中で、玉座の背後を治めると譲りません。



「王が二人いれば、ロクなことにならないだろう」



「君は欲がないな」


「そんなことはないさ」



困ったような青い瞳を揺らす王に、微笑みました。




「では一つ約束してほしい」



まばたきをせず、まっすぐ黒い瞳を見た王がゆっくり口を開きました。




「もし、わたしが…ー」






「もし王としての責務を負えないと影の王が判断した時、玉座に寄り添う影から飛び出して、王の首をはねる。そう言われています」



靴磨きの少年は、お客さんの靴を磨きながら口を閉じました。



「おとぎ話だろう?」



茶色の髪を肩で切りそろえた青年が、わくわくとした表情で少年の方へ身を乗り出します。商売をするためこの国に訪れる父親にくっついてきた青年は、見聞を広めるためだと町のあちこちを歩きまわっていました。




歩いている内に少し疲れたことと、汚れた靴を磨いてもらおうと路上にいた靴磨きの少年に声をかけました。少年に、何かこの国にまつわる面白い話はないかと水を向けたところ、子供が聞くようなもので良ければと話始めたのです。



「それにしても怖いね。影の王が現れる時は、この国も危ないということだろう?」




この国で商売することが多いから、影の王が出てくるようなことになったら困るよと朗らかに笑います。



「今のところ、影の王が出てくるようなことはなかったみたいですよ」



「つまり、金髪に青い瞳の王はこの国を治めることに成功したわけだ」




「お兄さん、もう靴磨き終わったよ」




商売道具をわきにまとめて、少年は右手をだしました。




「ええ?つまらないな。君からもっとこの国の話を聞きたいよ」




「この国の話を知りたかったら、貸本屋や話を聞かせてくれる場所があるから」



呆れたように右手をさらにつき出す少年に、青年は多目にお金を払いました。




「僕は君から話を聞きたいんだよ」




明日もこのあたりで商売しているかいと聞く青年に、少年は金額分だけ受けとると残ったお金を青年の手に戻してしまいました。




「俺はお兄さんみたいに暇じゃないんでね」



さっさと荷物をまとめると、青年が呼び止めるのも聞かずに走って行ってしまいました。



「うーん」



腕を組んでぴかぴかになった自分の靴を見つめます。この国は靴に力を入れています。歩きやすくて安くて、丈夫な靴は青年と家族も好んで使っていました。



「明日も来てみるかな」




青年は少年が商売していそうな場所をまわり、靴を磨いてもらった場所にも行ってみましたが、最後まで少年に会うことはできず、この国の本を一冊買って父親と共にこの国をでました。






靴磨きの少年が語った話は短く他のお客さんにもしています。プロではない、町の人から直接聞くおとぎ話は、魔法がかかっているような気がします。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  二人の王。  靴磨きの少年が町にやってきた青年の靴を磨きながら、この物語を語り聞かせる。  物語の構成と話の運び上手です。  雰囲気と味わいもあります。  物語の閉じ方も良いですね。  …
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