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第五話:エピローグ&・・・

本日3話投稿する中の3つ目です。

 警察の取り調べにより、詳しい経緯が分かった。

 大学時代、親父はひかりの母親からストーカー行為を受けており、卒業と同時に実家を離れたそうだ。

 お袋と付き合っている事はひたすらに隠し、一緒に逃げた先で結婚したと親父が明かした。もっと早くその話を聞いていれば……、とも思ったが、聞いていたとしてもこちらへと引っ越した時点でアウトだったかも知れない。

 ひかりの母親の両親から、慰謝料と口止め料として多額の現金を受け取っており、それもあってなかなか言い出せなかったのかも知れないな。学生である2人が遠くへ引っ越して、その先で新しい生活環境を整えるとなると先立つ物が必要だっただろう。


 爺さんも無事に見つかった。離れた地方のアパートで軟禁されていたそうだ。ひかりの母親に脅迫され、言われるがまま引退して親父を呼び戻したそうだ。

 親父はストーカー被害の件があり、可能な限り実家のある地元に帰りたがらなかったので、俺はあまり爺さんに対して思うところがない。同じく被害者だったんだな、程度のもんだ。


 警察に保護された後、俺と親父は入院して体力の回復を待ってから事情聴取を受けた。警察曰く、ひかりの父親は全く事情を把握しておらず、同じ屋根の下で自分の妻と娘が男の上で腰を振っていたと聞いて呆然自失の状態だそうだ。


 ひかりの兄は気付いていたような雰囲気があるが、ほぼ無関心で他人事のような態度だったそうだ。それよりも、裸の娘に殴られていた母親が、警官にパトカーで連行されて行く光景をご近所さんに見られた事の方が余程ダメージがあったらしく、事件が終息すれば海外へ逃げるつもりだと言う。


 ひかりの母親の両親はすでに亡くなっており、ひかりの母親の行動を止める抑止力がなかったのが今回の事件が起こった原因の1つのようだ。せめてひかりの父親に過去のストーカー行為を伝えていれば……、いやそれはないか。親父に口止め料を払うくらいだしな。政略結婚させる相手に不利になるような情報を伝えるとは思えない。


 アツシに沈められた比呂は、黙秘を続けているそうだ。何を思って黙っているのか。確か比呂の父親も、雨宮あまみや家の使用人をしているんだったか。父親の雇い主が不利にならぬよう黙っているのだろうか。



 そして俺と親父は、引っ越す前の家へと戻って来た。もう二度とあの街には行きたくない。実家へと帰って来た爺さんには悪いが、俺も親父ももう近付かないだろう。いい思い出なんて何もないからな。


「引っ越しなんてするもんじゃねぇだろ?」


「勝負はまだまだこれからだな!」


「俺達を纏めんのはヒデさんだぜ!」


「お帰り!」



「ああ、ただいま」





 ヒデ君ヒデ君ヒデ君……、お母様のせいでヒデ君が遠くに行っちゃった……、お父様は書斎から出て来ないし、比呂も警察から帰って来ない。お兄様も家に帰って来ないし、ヒデ君ヒデ君1人にしないで……。

 私達は愛し合っていたわ、心も身体も繋がっていたんですもの。あぁヒデ君の温もりを感じたい……、お母様、いえあの女のせいで私達の仲が裂かれてしまった。あいつのせいよ、ええきっとそう! 私達は愛し合っているのに、あの女が邪魔をしたのよ!!!!!!


 でもでもでも、身体は離れていても心は繋がっているわ、ええきっとそうよ! 必ずヒデ君は戻って来るわ。私を迎えに来てくれる! 私はこの家で待っていればいいのかな?

 でも誰もいない。書斎から出て来ないお父様以外、この家には誰もいない。シェフもいないしメイドもいない。お腹が空いたのに食事の用意がない。買い置きしてあるお茶菓子も減るばかりで、誰も買って来てくれない。何で? 何で? 何でみんな私から離れて行くの?? そうだ、お父様に何とかしてもらおう。


 書斎をいくらノックしても返事がない。もう1週間近くお父様のお顔を見ていない。書斎からは少し変な臭いがするけど、書斎から出ないんだからお風呂にも入っていないはず。1週間もお風呂に入っていないとこんな嫌な臭いがするんだ。お風呂も誰も洗ってくれないから変な臭いがするけれど。でもシャワーだけだから平気。それくらいは我慢出来る。


 お腹が減った。ヒデ君お腹が減ったんだよ。お茶菓子ももうないんだよヒデ君。ヒデ君? あ、冷蔵庫に何かあるかなヒデ君。牛乳? これも変な臭いがするからダメだ。すぐに食べられる物はなさそうだよヒデ君。冷凍庫にも何もない。野菜室はどうかしら? シナシナになったほうれん草に、芯が黄色くなったキャベツ。あと、キュウリとナス。え? キュウリとナスだよヒデ君。キュウリとナス……? ヒデ君、ヒデ君? ヒデ君……、ひ…………



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!!!!」





これにて完結です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。


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