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Lv5になりました

   

 俺は菜々子の提案を受け、今着ているセクシーアイテムを鏡の前からいったん撤退、呪われて脱げないこともなく......少しエナジードレインを喰らった気がするが急いで脱ぎはじめた。


 うわ~この脱ぐ動作にしてもすんごく背徳感があるのですが。


 脱ぎ終わり、一糸纏わぬ全裸の女の子を見る勇気は、とてもじゃないけど持ち合わせていない。


『それが自分とはいえ......』


 無性に恥ずかしい。


 菜々子の粘っこい視線を感じたが、今は気にしている時ではない! 


『八百万の神よ! 俺に勇気を与えたまえ!!』


 ――よし!まずはパンツだ。


 左足、右足と通して一気に腰まで引き上げる。


「はふっ!?」


 何このフィット感。


 ピタリと吸い付くように、それでいて全てを覆い尽くすような安らぎ感。


 テンテロテーン♪

 テンテロテーン♪


 Lvが1上がりました。

 Lvが1上がりました。


 つ、次だ......まだ行ける、まだ行けるんだ!


 逃げちゃらメだ!


 あっ噛んだ。


 ブラを手に取ってみる。


 パンツは比較的定番アイテム、階段下から偶然見えたとか、神風が吹いて偶然見えてしまった...etc


 物語中盤に起こりえるラッキーイベント。


 対してブラはハプニングを超越し、別次元のイベントが起きなければまず遭遇しないであろう希少アイテム。


 それが今まさに目の前にある。


 ってか、これって何サイズになるんだろう。


「うーん、あなたはアンダーとトップの差が約13ぐらいだからBカップかな、そのブラもそれぐらいのサイズ用だからバッチリだよ♪」


「!!」


 嬉しそうに菜々子が教えてくれた。


 なんで俺の考えてること判るの。


「Bだからって別に小さいことないよ......凄く良い形してるし、なんたって凄く美味しいそうだよ!」


 2回も凄くとか言わんでよいよ......。


 よだれ垂らしそうにそんな物欲しげな表情の貴女なんて見たくありません。美味しいそうとかなんですか?


 全国の菜々子ファンがみたら泣くよ?


 ――いるかどうかは知らないけど。


 つ、着け方が解らない......。


「あ、ああんもう! 私が着けてあ・げ・るカッコハートカッコ閉じ」


 あ、すんません。


 嬉々として俺の後ろに回った菜々子の鼻息がすこぶる荒い!


 ――カッコハートカッコ閉じとか言ったり、ふがふがなんて聞こえるぐらいの鼻息なんて絶対あり得んだろ......。


 お兄ちゃんは、お前の将来が堪らなく心配になってきたよ......。


 将来を心配されてるとは露知らない普段とは転生悪役令嬢ばりの変りようの妹。


「まずは左からストラップを通して、次右ね。 あっ髪入らないよう上げて」


 俺は慌てて長い髪を両手でまとめて持ち上げる。


「ちょっとだけ前屈みになって」


「アッ......い!?」


 菜々子が下からすくい上げるように二つのふくらみを手のなかに納めて、くいっと持ち上げたものだから、ついつい声が出てしまった

 そして脇からぐいぐいとカップの中に寄せると後ろのホックを止めストラップのよじれを直す。


「はい♪ 装着完了♪♪」


 それは、にこやかに微笑む。


 鼻息は荒いが邪気がないから正しい付け方をしてくれたのだろう。


 ――と信じたい。


「か、可愛いいいぃい......可愛い過ぎだよ!!」


 待ったなしのベタ褒めである。


 再び鏡の前に立って写し出された姿を見た瞬間。


 テンテロテンテロリーン♪

 テンテロテンテロリーン♪

 テンテロテンテロリーン♪


 Lv5になりました。


 一撃でLvが3も上がったよ!!


 あんまり皆を待たせたら心配するからと、体の線が出にくいゆったりとしたTシャツを出し、その上にこれボトルネックニットベストってのだけど、三回繰返して言える?


 などとたわいのない事を喋りながら上に羽織るものを貸してくれた。


 下はシンプルなショートパンツを借りて着替え、部屋を出ようとしたところ。


「あー待って」


 呼び止められた。


 どうやら髪の毛が乱れているらしい。


 菜々子は、俺をドレッサーの前に連れて行き、丁寧にブラッシングを始める。


 上機嫌の菜々子はハミングしながら本当に愛しそうに


「陽菜乃ちゃん......」と呟く。


「「!!!」」


 ――ひなの、その無意識に洩れたであろう女の子の名前に、俺と菜々子は鏡の中で呆然とお互いを見つめ合ったまま、しばし動けずにいた。


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