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草食系男子ですが~高校卒業と同時にTSして女子高生にジョブチェンジしました!  作者: Ciga-R
第三部 部活動に参加しよう!

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潤いレディとふわふわガール(後)

  

 ヘアーサロン『Diapason』の扉を開けて、俺達と同じぐらいの年頃の女の子二人が、おずおずと入ってくる。


 その娘たちに気が付いたアシスタントさんが、テキパキと予約の確認など行い、俺と都ちゃんが座っているソファの方に案内してきた。


 キョロキョロと内装やカット中のスタッフを興味深そうに眺めている。


 その様子から初めてこのサロンに訪れたのかも知れない。


 そんな二人の会話が漏れ聞こえてくる。


「思ってた以上にお洒落な所だね......あっ あの人がきっとジョーさんだよね。こうして画像じゃない本物を直に見ると、ワイルドでとんでもなくスタイリッシュな感じがイケてる!」


「おおっ!? あっちはたぶんサユさんかな......これまた何故かチャイナドレスだけど、スゴく似合ってるね」


 小鳥が囀ずるよう内装やスタッフを品定めしていく。


「――というか、サユさんがカットしている娘、どれだけ綺麗なの! ネットの評判やブログびっくりするぐらい良いから来てみたけど、なんていうか私たち......場違い?」


 サユさんと紫月先輩のカットしている姿を見て、気後れする二人は更に白露に目を戻し


「ねぇ......あの娘、Miyaちゃんじゃない?」


「えっ!? うわぁマジだ、こりゃ......来るなり目の保養できて超ラッキー!」


 小さい声ながら、これぞJKといったノリでキャッキャッ盛り上がる二人連れ。


 都ちゃんやジョーさん達の名前が出たということは、サロンのブログを見て来たことは間違いない、しかもあの様子だとかなり入念に下調べしているよな。


 そんな事を考えていたら、一人の娘がフッとこちらを見て俺と目線が交差する。


 瞬きもせずじぃと見つめられて俺の口元がヒクッと上がってしまう。


 その娘は息を呑むとしばし固まり、まだそわそわしている隣の連れの腕をツンツン突くと、こちらに注意を促す。


 何ごとかと俺の方を向いた女の子は、目をパチクリさせそのままフリーズする。


 しばしの静寂......誰も何も言葉を発しないため、ついに俺はそのプレッシャーに負けてしまう。

 

「こ、こんにちは......今日はいい天気ですね」


 ああっ 俺はなんでこんなどうでもいいことを、口にしているんだ......そうだ都ちゃん、あとを頼むッス!


「ポカポカの......天気」


 俺の心の声が聞こえたのか、都ちゃんもフォローを入れてくれる......いや、そこは天気のことじゃないのですけども。


 俺たちが声を掛けたことで、二人の顔がパッと朱に染まるのが見てとれた。


「うわぁ......本物のひなのちゃんだ! 初めて見た時から憧れてました! 大好きです!」


 自分を奮い立たせるよう大きな声で直球を投げて寄越してくる!


 俺が狼狽えているのにお構いなしに、どれだけ好きなのかをアピールする二人組......ひゃあ、ひょえなどと慌てふためき反応する姿が面白かったのか、都ちゃんもクスクス笑う。


「Miyaちゃんも......そのとてつもないスタイル! マジで巨なる! 本気の萌萌だよ!」


 自分に話しが振られ、都ちゃんは微笑みを浮かべたまま凍りつく。


「えっ!? でもあそこでカットしてる娘もMiyaちゃんだよね......このハイスペックで量産型!?」


 いや、都ちゃんクラスの最終兵器がそんなに安易に大量生産されたら、この世はえらいことになりますから。


「双子......妹」


 自分を指差し照れる都ちゃんを、二人は一人だけでも家に連れて帰ってもいいですか! はしゃぎながら言うのだけど......どうして皆、こうもお持ち帰りしたくなるの......いや、その気持ちは十分わかるのですけども。


「はぁう 今日この時間に予約が取れたことを神に感謝しますう」


 また大層に喜んでいるよ。


 気が付けばツーショットや俺と都ちゃん交えて写したりと、いつの間にかプチ撮影会になっていた。


「やったー! 待ち受け画像にしてみんなに自慢しよう♪」


 いや、いや、そないなモノ自慢出来るもんじゃないでしょう......俺はそのことをざっくばらんに聞いてみる。


「なに言ってるんですか! うちのクラスの子ほとんどが、ひなのちゃんのファンですよ! あの彼氏さんとのツーショット見てしまったら、女の子なら誰でも憧れますって!」


 そのまま、孝のことを根掘り葉掘り聞いてくるものだから返事に困ってしまう。


 彼氏......やっぱり、あのショットを見たら大概の人はそう思うのかな......。


 俺が答えに迷っていると、丁度いいことに二人の女の子の準備が整ったようで、担当するスタイリストさんが呼びに来てくれた。


 彼女達は名残り惜しそうに手を振りカット席へ向かう。


「陽菜乃ちゃん...ドンマイ」


 都ちゃんもね......俺達は言葉少なく、ブログに載るのも大変だよねとボソッと溢していると、そこに陽一を送っていった彩帆ちゃんが戻ってくると、一息つく間もなく


「ただいま! カットは順調に進んでいる?」


 彩帆ちゃんは、走って戻ってきたのかハァハァ息しながら現在の状況を確認し、予約のお客さんが二人すでに来ている事を知ると夏江さんの所に行って補助に入る準備を始めた。


 ――忙しいのに、わざわざ陽一を送っていくなんて......彩帆ちゃん本気で陽一のこと好きなんだな。


 俺はその開けっ広げな心のあり様を羨ましく感じてしまう。


 ――羨ましいと思う......実際のところ何に対してそう感じるのだろう。


 陽一のことが好きという気持ちを、隠すことなく正直に行動している、彩帆ちゃんのその素直さなのか。


 それとも俺のこの複雑な境遇と違い、生まれた時から当たり前のように女の子として両親に愛されながら育てられた環境になのか......女の子としての感情......それっていったい実質上はどのようなものなんだろう。


 いつの間にか彩帆ちゃんが俺の横に戻って来ていて、ソファにストンと座る。


「陽一さん......周りに可愛い娘がこんなにもたくさん居たら、私みたいな普通な子には興味ないよね」


 逡巡しながらカット中の先輩や白露を見ながら、少し寂しそうに呟く。


 ――そんなことないよ。陽一みたくデリカシーに欠けていてマイペースなやつには、彩帆ちゃんみたいに気配り上手で優しい女の子は勿体ないと心底思う......って待てよ。


 今の俺と陽一の性格って自分が思うほどに差があるのかな......配慮が足り無い、のんびり屋、それって自分のことじゃないのだろうか。


「陽菜乃ちゃん、私いくね。アシストに入っちゃうと途中で抜け出せないかもだけど、出来たらゆっくりしていってね」


 それだけ言うと彩帆ちゃんはパタパタ忙しそうに戻っていった。



 ※※※


「ビジュアルチェック、フィニッシュ!」


 ジョーさんの晴れやかな男らしい声がサロン内に響き渡り、白露は顔を火が出るほど上気させ、チェックを終える。


「この度のコンセプトは、クールで上品! それでいて甘く大人可愛いく、彼女に合ったふんわり感を損なわないよう仕上げたっす! まさに、イメージを超越したピュアなふんわりガールを、心を込めてお届けするっすよ!」


 ジョーさんは興奮さめやらぬのか声高々に言い募ると、とても満足そうに白露の手をとると、やんわり席から立たせる。


「ひゃい!?」


 急に手を握られびっくりしたのか小さく声を上げる白露に、それは優しい笑みを溢し


「オレの今までで最高の仕事......失礼ながら、このサロン始まって以来ともいえるグッドジョブに満足して頂けましたか」


 手を握ったまま見詰められ、白露の赤かった顔がこれ以上ないぐらいに朱に染まる。


「ちょっと......ちょっと、ジョー待ちなさいよ! それは紫月ちゃんのクオリティ見てから言ってもらえるかしら......チェックカット ジ・エンド!」


 サユさんも高らかに宣言すると紫月先輩を席から解き放つ。


「アハッ なんか照れるね」


 珍しく言葉少なく立ち上がった先輩......まさに色鮮やかな蝶が放たれたかのように、その姿を目に入れた瞬間、サロン内の照度が何百ルクスか明るくなったように思うのは気のせい?


 カット中のスタッフ、お客さん全ての動きが止まり、サロン内はシーンとなる。


 サユさんは言葉を失った人々を、それはドヤ顔で見渡す。


「あくまでもナチュラルに、それでいてしなやかな透明感あふれるモテ愛されのストレートロング、さらに! 周りをすっきりすることでこの上もなく可愛い耳が見え隠れ......ヤバイ、こんな潤いレディを一目した日には、誰もが焦げキュン一直線!」


 サユさんは一息に喋り切り、会心の笑みを湛えるとハニカミを見せる先輩の手をとり、二人して優雅にお辞儀をした。


 艶やかな長い髪が前方にサラサラと零れ落ちる。


 先輩は姿勢を正しながら手ですくい上げ、あふれるばかりの極上の笑みを浮かべ軽やかに髪を撫で付ける。


 その見目麗しい仕草に、いつしか誰からともなく自然と驚嘆の声が漏れ、続いてサロン内に割れるような拍手が沸き起こった。



 

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