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草食系男子ですが~高校卒業と同時にTSして女子高生にジョブチェンジしました!  作者: Ciga-R
第三部 部活動に参加しよう!

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二人のパターンシフト

 

 春のそよ風のなかで小鳥が数羽枝にとまり、さえずる声が庭からもれ聴こえる。


 暖かな風が舞い込み、穏やかな息吹きがリビングを満たす。


 そんなほのぼのとした中で紫月先輩と白露は、うつ向きテーブル上で折り重なり合うように、倒れ込んでしまっていた。

 

 俺が先輩を都ちゃんが白露をソファに背が付くよう、もたれさせる。


 ラッシュが最も敬愛する飼い主の異変を察して、けたたましく吠える声が室内に轟く。

 

「先輩! 紫月先輩! 大丈夫ですか!?」


 どういった状態か判らなかったため、揺り動かさずに力一杯に声を掛けた。


 少しすると、先輩のリップも塗っていないのに堪らなく艶やかな唇から、うーんと小さな漏れ声が聞こえて思わず安堵する。


 時を同じくして、白露も肩で息をすると目をうっすらと開いた。

 

「白く輝きに満ちた、それは優しい力がボクを満たしたよ」


 先輩は息を弾ませ、まだ夢から覚めずにいる迷い人のようにボンヤリと呟く。


「幾千、幾万もの力ある想いが煌めく粒子となり、僕に降り注いだ」


 白露も放心状態で喘ぎながら言葉を絞り出す。


「ラッシュ、そんなに心配しないで、僕は僕で在り続けるから」


 ふらふらしながらも立ち上がってゲージに行くと、ラッシュをそれは優しく撫であげる。


 こちらもヨロヨロしながら先輩もまたソファから身を起こす。


「紫月先輩!? まだ無理に立たない方がいいですよ」


 俺の忠告を、ブンブン首を振り否定する。


「アハハー! なんていうか......すこぶるご機嫌な気分なんだ! まるで言葉通り、生まれ変わったかのように......何かこうインプレッションがわ、わ、わ......は、はにゃあ!?」


 言わんこっちゃない、足をもつれさせて倒れそうになる。


「ひゃあああッ」


 なんとも可愛らしい悲鳴を上げつつ倒れそうになる先輩を、陽一がすかさず後ろから抱き止める。


「アハ、あ、ありが......イ、イタい!?」


 後ろから抱き締めたような格好になっている陽一の手は、先輩の胸元を知らず鷲掴みにしていた。


「えッ? ハイイイ! うひょほおおおおッ!?」


 陽一がすっとんきょんな声を上げ、そのままの状態でフリーズする。


「アッ......あっ......ん ダ、ダメ」


 先輩の頬が見る間に赤みを帯び、無意識に切なそうな声がその濡れたような唇から溢れていた。


「ひゃはふあああ! ふ、不可抗力、わざとちゃいまっせ!」


 神速の動きで先輩から俺のいる方に跳び退くと腕をホールドアップするかのように挙げて、しばらくすると呆然と手の平を目の前に持ってくると、開いたり閉じたりする。


「や、や、やわわらかかかったたッス!」


 陽一は俺に寄り掛かりすっかり動揺している。


 お、重い! そしてどうした、まるで言葉になってないぞ!


 先輩も顔を紅潮させたまま胸元を押さえて、荒い息をつき放しだ。


 うん? なんか先輩ひと回り小さくなってなくない?


 よくよく見ると、スマートな脚にピッタリと密着していたスキニーデニムが、ぶかぶかになっているし、くるぶしまでだった裾が足首全体を覆ってしまっている、これじゃ足がもつれても仕方がないのかも知れない。


 おまけにワンピースも、まるで大き過ぎるサイズを着ているかのように、肩ひもがずり下がってしまっている。

 

 紫月先輩は、どうにか息を整えたのか。


「あはっ 体調は万全なんだけど、なんか動きに違和感があるみたい......さっきも抱き止められた時に、痺れにも似た痛いような、くすぐったいような何かが走って......あっ 倒れるの防いでくれて、ありがとう」


 思い出したかのように陽一の方に向き直りペコリとお辞儀をすると、怪訝な様子で長くなってしまったデニムの裾を織り込む。


 前屈みになって丈を直している姿は、見てる方が心配になるほどの無防備で、ぶかぶかになったワンピースの中が、チラ見えどころではない程に丸見えになってしまっていた。


 俺の目が驚愕で点になると同じくして、陽一の喉からごくりと息を呑む音が聞こえる。


 てへっと、はにかみ前屈みになっている先輩のワンピとキャミは、二つの柔らかな物体により押し下げられ、見事な谷間を鮮やかに俺たちに見せつけていた。


「せ、先輩! む、む、胸が......ある!」


 姿勢を戻しキョトンと可愛く顔を傾け、あたふたして胸元を指差す俺たちを、不思議そうに眺めると目線を下げワンピをつまむ。

 

 つかの間、時が止まる。


「な、なんですとおお!? こりゃああ!」


 想い描いていた姿に転じたとしても実際に事が成ると、先輩ほどのプラス思考の持ち主でも、容易に現実を認識できないのだろう。


 泣けばいいのか叫べばいいのか、それとも気を失えばいいのか分からない中で、声を大にして叫ぶ。


「アンビリーバボー! ボ、ボクに紛うことなき正真正銘の女性の象徴ともいえる......あるんだ」


 まじまじとキャミの中を覗き込みながら、いつの間にか声を震わせて涙目となっていた。


 先輩の中性的なハスキーボイスだったトーンは、気が付けば少し高めの柔らかいより女の子らしい声に変わっていて、泣きじゃくっている姿が、これも堪らないほどに愛らしい。



「僕は今、誰かが見ている夢の中に登場している。自分で考え行動しているように思ってるだけで、実際は決められたセリフ、演技をしているのかも知れない。誰かが目を覚ますとやっぱりいつもの僕がいる。この事は現実なんだろうか......本当に夢じゃないのだろうね」


 白露もまだそれが恋い焦がれて望んで止まないことであったとしても、現実に起こってしまうとすんなりとは受け入れることが出来ずに、ぼんやりと夢うつつに自分の胸元を見ながら呟く。


 そんな主人の気持ちが解るのかラッシュは優しく寄り添うと、とても嬉しそうに白露を見上げる。


 そこには、指の先が辛うじて見える程に大柄になってしまった長袖シャツを着ていても、存在を十分にアピールするこんもりとした二つの膨らみが、先ほどまで何も無かった場所に具現していた。

 

『ぬっ!? こやつらもしかして、もしかすると俺よりデカくねぇ?』


 俺は歓喜する二人をうっちゃって、今はそれどころではないことに思いわずらう。


 気が付けば陽一が俺と二人を交互に見もって、ふんふん一人頷いているじゃない!


『――ちっぱいは、正義なんだかんね』


 独りごちるも何故か虚しくなってくる。


 先輩は、まだ目を赤くしたままだったが泣き止むと、何かを思い立ったのか。


「は、白露つかぬことを聞くけどトイレ......何処かな」


 もじもじしながら、顔を朱に染めて気恥ずかしげに問いかける。


「ああー! そ、そうだよね あ、案内しますよ」


 白露も何故かおずおずした様子で、先輩と二人何か話しながらリビングから出ていった。


『なんか怪しいぞ、あの二人』


 俺が訝しげな思いにふけていると、何やらリビングの外から、興奮を抑え切れない叫び声が聞こえてきた。


「ない! 見事に無くなっている! 男のシンボルともいうべき......ボクのアレが綺麗さっぱり消え去っている!」


「いつも沈うつな気持ちにさせられる、あの存在が確かに、ござりません!」


 キャッキャッ声を上げながら先輩と白露が晴れ晴れとした面持ちで部屋に戻って来る。


 なんだろう......その姿からは、仲良しの女の子同士がスキンシップにじゃれあってるとしか思えない。


「思いが現実のものと成る。 それは何て素晴らしいエモーションなんだろうね」


 先輩は、うっとりとした表情を浮かべ言い募る。


「宿願は成就した。 時至りボクの想いや感情といった......イマジネーションは、どこにもなにも制約を受けなくなった。想いによってこそ自己を創り上げることがここに叶った」


 白露は黙って頷く


 先輩と白露が心から幸せな気持ちに満たされているのが感じ取れた。


「陽菜乃......キミの力添えでね。心からの感謝を」


 俺に向かって先輩と白露は誠心誠意な態度で礼を述べる。

 

「二人の想いが起こした奇蹟。なにがなんでも成るといった気持ちが魂の波動となり、そしてシンプルで深遠な成果を生み出したのですよ」


 俺は自然と涙が流れ落ちるのを感じながらテーブルの上に置かれた水晶球をじぃと見つめる。


 持てる全ての力を使い果たし、すでに心暖まる静ひつな波動を放たなくなった清流父さんの御守り。


 それでも俺としぃちゃんにとって、それは何よりも大事な忘れ形見で在り続けるだろう。


 リビングに居る全員とラッシュまでもが大人しく頭を下げ、しばし去っていった波動を重んじるように黙祷する。


 目を開くと先輩と白露は、まだ感謝してもし切れないとばかり、瞑ったまま祈りを捧げていた。

 

 想いが叶い女性に転換したとはいえ、これから二人にとっては己の存在を全うするために、様々な試練......楽しいこともあれば、辛いことや悲しいこともある現実を過ごさなければならない。

 

 ここまで深く関わり合い、誰も経験できないような不思議な事象を共有した俺たちは、他の誰よりも力強く繋がった。


「新たな転機に、気分盛り上げていきましょう!」


 俺が明るく大きな声を出すと、二人とも目を開けてパァッと花が咲いたような笑みを浮かべるや、盛大にハイタッチを繰り返す。


 陽一と都ちゃんも心の底から二人に拍手を送る。


 言うまでもなくラッシュも、ひときわ高い吠え声を出し二人を祝福していた。



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