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草食系男子ですが~高校卒業と同時にTSして女子高生にジョブチェンジしました!  作者: Ciga-R
第二部 学校に行ってみよう!

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12ポンドはとても重いのです

 

 ナンパ目的で声を掛けたものの自分で言うのもなんだけど、世間一般的に見ても極々、美少女な俺と凍てつく眼差しと凛とした佇まいの冴衣先輩を前にして、しかし、この三人組は前向きさと明るさは人一倍あるようだ。


 円陣を組み気合いを入れると一人が前に、ススッと出てきた。


「もしかして~もしかすると......一緒にカラオケとか行かないですよね?」


「行くべき理由が無い」


 先輩は、あまりにもアッサリと答える。


「きっと楽しいですよ?」


「誰が、何故、どのように楽しいと思う? その根拠を貴公は示せるのか」


「へっふ?! 無理! 無理! 絶対無理!俺にはこれ以上無理!!!」


 涙目になりながら、あっさりと撃退されるナンパ師一人目。


 うーん、どう見てもナンパ馴れしていない。


 しかも見たところ、どうやらこの三人高校生ぽい。


 おおかた、休みで暇していたところをノリと勢いで試しにしているだけなのだろう。


 これぞナンパ慣れしたようなチャラそうな感じじゃないだけ、このやり取りも結構面白くなってきたかも知れない。


 そうこうしている内に彩帆ちゃんと、ファショナブルな装いに大変身した都ちゃんが、店長に見送られて店から出てくるのが見えた。


 キョロキョロ辺りを見渡し、俺に気がつくと走り寄って来た。


「お待たせ! 次は陽菜乃ちゃんの服を買いに行こうね」


「陽菜乃ちゃん......ありがとう」


 都ちゃんもペコリと頭を下げる。


「さあ、行こか・・・あれ? こちらの方は、もしかして剣道部の桐原先輩?」


「紫月先輩......似てる......けど違う」


「剣道部の桐原 冴衣。 貴公らも宮ノ坂の一年生? お初に目に掛かる」


 先に名乗った先輩に、こちらもしっかりとした挨拶を返す彩帆ちゃんを感心した様子で、目を細めて見つめる。

 

『おいおい! 更にとてつもない美少女が二人も合流してくれちゃいましたよ!』


『もう俺たち退散した方がいいんでないの』


『まだだ! まだ諦めるのは早い! オレに秘策あり!』


 いやですから、丸聞こえなんですけれど、それともわざとに聞かれるように喋っている?


 それに秘策ってなんですの?


「あれっ こちらにいる方々も陽菜乃ちゃんの知り合い?」


 俺は彩帆ちゃんに実はナンパされているところなのよねーと伝える。


「ほええッ? ナンパされてるの!?」


 目を丸くして三人を見る彩帆ちゃんに、お気軽に手を振り返すナンパ師たち。


「彼女も、よければオレたちと遊ばない?」


 秘策ありと呟いた彼は、一歩こちらに近付き冴衣先輩の前に立つ。


 敢えて先輩の前に立つその勇気は認めよう。


「人数も多いですし、上にあるボーリング場にでも行きませんか」


 ナンパ師の一人は、先輩の目を見ながらニッコリ笑う。


「だから、其方らに付き合う理由が無い」


「それでは、ボーリングで勝負して、僕らが勝ったらカラオケに行くってのでどうです」


「だからどうして、そうなる! 人の話を聞いているのか!」


 俺は怒鳴る先輩が彼の考えている流れに乗ってしまっていることに気が付いてしまった。


「そうですか......勝負から逃げると、それじゃ仕方ないですね」


 今日は、これで失礼しますと彼は、こともなく先輩に背を向ける。


 俺は急いで先輩の手を掴むが、去っていく彼の背中を睨み付けて血管をピクピクさせている......まさかこんな単純な挑発に引っ掛からないよね? ねえ??


「待てえ! 誰に向かって逃げるなど戯けたことを抜かす!」


 ああー 反応しちゃったよ。もしかして先輩、天然系?


「考えてみたら、女性と勝負して勝ったからって自慢にもならないですものね」


 彼は焚き付けるようにダメ押しをする。


「ほおう、言うじゃないか その自信気に入った。勝負受けて立とう!」


 無駄に流麗なフォームで人指し指を彼にビシッと向ける。


 先輩、何となく感じていたけれど負けず嫌いな真っ直ぐすぎる性格だよね。


 紫月先輩と足して三ぐらいで割ったらちょうどよい感じになる?


『なんかボーリングする流れになってるけど、時間大丈夫?』


 何故か目をキラキラさせている彩帆ちゃんに確認する。


『うん! すぐに戻る必要ないとは思うから......一応電話しておくね』


「すいませーん! ボーリングするのは構わないのですけど、保護者いるので連絡しますね」


 俺は言いながら、すぐに合流してくれるよう陽一に電話を掛けた。


 功が奏したことで手を叩きながら喜びあっていたナンパ師たちは、あからさまに戦々恐々とする。


『保護者とかいってますよ?』

『なんかコワイ兄さんが出てくるとですか』

『ちょ! もしかして恐い事務所に連れ去られるとかないよな!?』


 大して待つことなくジョーさんが精魂込めてスタイリングしたウルフカットをなびかせ、シャープさを増すことにより見違えるほど男らしくなった陽一が颯爽と現れると彩帆ちゃん、都ちゃんだけでなく三人組さえも、全身に電気が走り抜け、びりっと震えたかのような反応をしめした。


「なんかイケメンやってキター」

「これあれですか、オレたち秒サツされる役?」

「うーん、引き立て役ポジションに瞬サツでランクダウンしたかも知れん」


 俺が陽一に事情を説明すると、どよーんと落ち込む三人組に勢いよく近付き、何やら盛んに話し込んでいる。


 気がつけばいつの間にか、ハイタッチしたり肩などを叩きあいながら盛り上がりをみせるに至っている。


「僕ら、陽さんにどこまでもお伴しますよ!」


 さん付けで、なつかれている?


「それでは、皆の衆、いざ決戦の場もといボーリング場にLet's go ッス!」


 陽一よ......いつからそんな軽いノリを身に付け陽キャラにジョブチェンジしたんの。


 まあ憮然とした顔の先輩以外、みんな楽しそうだから好いよね。


 ボーリング場に着くとそれほど混んでいなく待つことなく、すぐに開始できるみたいだ。


「都ちゃん、ボーリングしたことあるの?」


 思っていた通り、首を横に可愛くふるふるする。


 ロングブーツを脱ぎボーリング用シューズを借りて履き替えた都ちゃん、先ほど買ったワンピは、ひざ上までの長さしかなく、なおかつ白く綺麗な素肌がそれは目に眩しい。


 初心者なこともあり放っておけない気配をこれでもかっ!と醸し出している。


 ちなみに俺は球技全般からっきしだか、ことボーリングに関しては平均アベレージ180と、何をさせても器用な孝と唯一まっとうな勝負が出来ていた。


 まあ球技とは言わないのだろうし、男だった時のことだから女の子になってからは、一度もゲームをしたことがないため、今はどれぐらい出せるか判らない。


 それに反して陽一は体格に比例して腕力も上がっているのだろう。


 既に勝ち誇った顔つきで、悠々とボールを選んでいる......なんだと15ポンドを選んでる? 12ポンドが限界じゃなかったの?


 試しに俺も使い慣れていた12ポンドを手に取ってみた。


 持ち上げようとしてみたが、まず三つの穴に指がそもそも掛からない、辛うじて指先が二つの穴に届くのだが、その状態で持ち上げようとすると指が滑るし、少し浮いた?


『お、重い......重すぎ! 無理、無理、とても無理ッス!』


 思っていた以上に手のサイズも小さくなっているし非力にもなっているようだ。


「陽菜乃ちゃん、そんな重いボール無理だよ、私と同じ8ポンドぐらいのにしたら?」


 彩帆ちゃんがカラフルなボールを、それでも重たそうに両手に持ちながら呼び掛けてきた。


 いやいや、そんな軽いボールじゃピンに跳ね返されちゃうよ


 せめて10ポンドぐらいのにしないとね。


 はうっ それでも重いのです。


 俺は泣く泣く、どうにか投げれそうな9ポンドを選び、レーンに持っていった。


 端の方で一人リスタイを装着してマイボールを投じているセミプロらしき人の流れるような一連の動作を、じぃと活眼している冴衣先輩の姿がそこにはあった。


「先輩は、アベレージどれぐらいなんですか」


 その居ずまいからして先輩の勝利は、勝負するまでもないことがうかがえる。


「アベレージ? スコアのことか? 初めてゲームするからやってみるまで判らんよ」


「へふっ? したことないんですか!?」


 ポカンとする俺に、からからと大笑いする。

 

「ふふッ こよない手本がおってくれたお陰で大舟に乗ったつもりでいるがよい 我、勝利を確信せり!」


 自信満々に豪語する冴衣先輩、その装いはシックなミドル丈のフロントスリットが色気を漂わすタイトスカートを優雅に穿いている。


 ボーリングするには、とても不向きな服装だってこと、きっと判っていないよね。



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