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草食系男子ですが~高校卒業と同時にTSして女子高生にジョブチェンジしました!  作者: Ciga-R
第二部 学校に行ってみよう!

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部活動に参加しよう!(後半)

 

 春の暖かな空気が心地よく体育館を満たし一学年全員と教員、部活動に携わる上級生が見守るなか、文化系の部活動紹介が続けて行われる。


「私たち『宮っち園芸部』では、部屋の中でも気軽に出来るガーデニング、そしてベジタリアンな貴女にもきっと大満足して頂ける、自走式水やり不要の『ものぐさ初号樹』を開発しました!」


 初号キとなっ!?俺はこれでもかと目を見開き、舞台上に現れた


 ――なんだろう多重化構造のプランター?を憧れがこもった眼差しで見つめる。


 自走式って言ってたけど、制服から二年生と思える先輩が紐で引っ張って出て来たよね。しかもただのビニール紐ぽぃし、もちろんエントリーなプラグなんて付いてないよな?


 舞台上では「ここにこうして、はい! 1ヶ月は水やり不要です」と照れ笑いを浮かべて説明しているけど、何がはい!でどうして不要なのかさっぱり判らない。


 最後に園芸部キャプテンは、謎が知りたいそこの新入生諸君!仮入部よろしくね!とニヤリ不敵な笑みを浮かべ『ものぐさ初号キ』の紐を引っ張ると、舞台袖から退場していった。


 こいつ......やる!


 何あの高等エグニマ戦術、あれでは仮入部しなきゃ夜中に気になって起きてしまい怖くなってトイレにも行けないよ。この歳になってママトイレって言っちゃうの......それは口にした瞬間なにか、下手すると全てを失うそんな気がする。


 俺がそわそわしているのに、いささかうろんな目線を投げ掛け、心々菜ちゃんは陽菜乃ちゃんトイレ行きたいの?


 小さな子供に問い掛けるように聞いてきた。


「今はいきたくないもん」ぷぅと頬を膨らませてから気が付く。


 ああッ俺は何をやっているんだ、演劇部の紹介が今からあり、入部する事を決心している心々菜ちゃんを勇気付けるためここにいるのだろう!心を引き締め挑むんだ。


「ありがとう。でも今は大丈夫だから心配しないでね」


 俺は渾身の艶やかな笑顔を浮かべる。


 心々菜ちゃんは、ぎこちない笑みを浮かべ


「あーあ、そ、そうだね......大丈夫よね、ハハッ」


 確かに今一歩引いたのが見えてしまった。



 ※※※


「はい! 五分で出来る簡単だけど見た目ゴージャスな海鮮お野菜たっぷりロールの出来上がり!」 


 おおおっ!と体育館はどよめき、続いて大きな歓声が上がる。


「これは、昼休みを返上してまで準備をして頂いた水嶋先生に献上致します!」


 舞台上で出来たばかりの料理を受け取り、照れる水嶋先生に俺たち一年三組の生徒は、会場一番の拍手を贈った。


 料理部の実演も終わり、文化系最後の真打ち演劇部の登場となり体育館は異様な盛り上がりをみせ始める。


「いよいよだね」俺たち二人はぎゅっとお互いの手を握り合う。


 舞台上では、伝説の二人が昼間なのにスポットライトを浴びているのでは、と思われる存在感と艶やかな装い......しかし実際はジャージと制服を着て現れた。


 その姿を見ただけで一部の生徒は崩れ落ちる。


 そうなる事は予測できていたのであろう、予め俺たちは事前に体育座りとなり、お互いの体をかなり密着し合う、間違っても意識を失っても頭を打ち付けないシフト『The セーフティ』の布陣が敷かれていた。ちなみに最後尾には丸められた体育マットが置かれている親切設定。


 部活動を説明するだけで、これ程の手間暇を掛けさせるなんて、俺は改めて伝説の二人に畏怖を感じ仔ウサギのように身を震わせてしまった。


 意識を保っている生徒が、窒息寸前の甘い吐息をもらす中、伝説の王子の挨拶が行われる。


「皆さん、お初にお目に掛かります。演劇部の白河 聖と申します。この度は宮ノ坂にご入学おめでとうございます。貴女方にはこれから三年間今まで以上の試練が待っているでしょう」


 ここで一先ず言葉を止めると、自分を注視する新入生一同の眼差しを正面から受けとめる。


「だがしかし、これまでに培ってきた経験を遺憾なく発揮すれば自ずと乗り越えられると私は信じています。自身のでき得ることに対して、自信を持って全力を尽くし、悔いの無い今まで以上の素晴らしい青春を謳歌して下さい。長々となりましたが私からは以上となります」

 

 紡ぐ言の葉が耳に届き、直接視線を合わせてしまったと思い込んだ多数の生徒と隣の列に座る、あの優しかった二組生徒全員がくたくたと後ろに倒れ込んでいく。


 恐るべし白河 聖! シフト『The セーフティ』の施策がこれ程効果を発揮するなんて、考案者も今頃鼻高々のドヤ顔を浮かべていることだろう。


「こんにちは! 今年から演劇部に入った椎木 菜々子だよ! こいつと違いお堅い挨拶しないから、気軽にね!

」 

 いったん言葉を止めて、伝説の王子の背中をバンバン叩く。


 はおおおー!ここでそれする!?


 残り少なくなった意識を保つ勇者から恐慌に満ち溢れた悲鳴が、嵐のように体育館内に木霊する。


「演劇部に入部したい生徒は、明日ここ体育館で公開オーディション行うから、聖目当ての娘は覚悟決めて受けに来るんだよ!」


 叩いたことなど何事もなかったかのように、姫君のようなにこやかな笑顔を浮かべ、王子に手を絡め絶句する俺たちを置き去りに舞台袖から退場していった。


 体育館に集った一同は毒気に当てられ、しばし呆然と何もない空間を眺めるしか出来なかった。


 徐々に自然回復したり励まし正気に戻る生徒逹。


 シフト『The セーフティ』も解除されはしたものの、それでも力なく項垂れた多数の生徒は体育座りを続けている。


「明日頑張ってね......」


 俺の力ない一言に、こちらも元気なくはぁと頷く心々菜ちゃん。


 ここで我らの秋穂先生がパンパンと大きく手を叩いて顔を前に向けさせる。


「みんな、そろそろ同好会の説明を始めるから注目してね! ただ、説明するのは三つの同好会だけだから、他に気になるところがある生徒はパンフに載ってる先輩の所に直接行くこと。それじゃまず最初は『漫才研究会』の二人よろしく!」

 

 漫才研究会は確かパンフでは三人だったはずと思っていると、やたら背の高い生徒と顔一杯に愛敬を宿したふくよかな感じの二人組が舞台に現れた。背の高い生徒は白いジャージを着用している。


 まさかね......。


「皆さん、お初にお目に掛かります。演劇部の白河 聖で......ちょお! なんで君は背中叩くかなっ! 痛い、いたいって!」


 ふくよかな彼女は隣で白いジャージを着た背の高い相方の背中を無言で叩き続け、練りに練ったと思われるコントを始める。


 しかし世界はあまりにもリアルには無情、明らかにスベっている。


 体育館は静寂に包まれ、ごくたまに先生の愛想笑いが聞こえるぐらいで、ついには前に座る生徒の頭が安らかにカクンと落ちる。

 

 いつの間にかコントは終わり、二人は涙ながら多数の入会お待ちしています。一言残してすごすごと舞台袖から退場していった。


「乙女ロード開拓ラブの代表で......ふッ」


 喋り方はアレだけど、見た目はお洒落な宮女の制服がほどよく似合う彼女は、名も告げず如何に腐の世界が素晴らしいものかを、うっとうしいほど熱く語っている。恐ろしいことに何人かの生徒が小さく頷いているし!


 俺は頷いている一年三組の生徒数名をさりげなくチェックしておく。


「最後に同じ腐女子として忠告しておきまふッ! 決して、けっして貴腐人にだけは近づいては駄目なんでふッ 取り込まれたなら必ずや冥腐魔道に堕ちま......ふッ!」


 大半の生徒は、何を言っているのか理解出来ず、キョトンとした表情を浮かべていたが、自覚のある隠すつもりのない一部の生徒からは絶大なる拍手を受け、満面のドヤ顔で舞台袖から出ていった。


 このままいくと入部希望者が定員以上になり、宮女に腐女子部が誕生してしまう可能性が出てきた。そしてあの唯我独尊、怖いもの知らずの代表すらも恐れる貴腐人の存在......大して力になれないが、しぃちゃんのこの宮女を守らなきゃ、俺はなにと戦うのかまったく判らぬまま心に強く誓うのであった。


「さあ、次で最後の紹介となります。これ終わったら皆入りたい部活のところに行って、詳しい説明聞くのよ」


 秋穂先生は、最後の紹介となる生徒に勧誘を始めるよう促す。


 その人を見た瞬間、心々菜ちゃんやいおりんと出逢った際の心の高鳴りとは違う、不思議な気持ちに俺の心臓がトクリと音をたてる。


 体育館内もざわめき、いーちゃんも舞台上に立つ白衣を纏った上級生に驚愕の視線を向けていた。


「レゾンデートル研究室、略称『レ研』室長の二年生、桐原(きりはら) 紫月(しずく)ていっても二人......もう一人は名前だけだから、実質ボクだけの室長兼会計兼庶務兼、一般室員なんだけども」


 何が可笑しいのかその人はアハハと怠惰に笑い飛ばす。


 新入生一同が驚くのも致し方なし。桐原の姓、剣道着と白衣の違いはあれど、その風貌、容姿は先に紹介のあった剣道部桐原 冴衣副主将と合せ鏡で映し出されたかのように瓜二つであった。


「アハハハ! 自分が何を信じて生きる? その存在する価値? 我思う、ゆえに我あり? フフフッ面白いよね......少しでも興味を持った人がいたなら、ボクのところに来て一緒に遊ぼうよ」


 独り笑いを浮かべ、一際高々と哄笑し舞台上から皆を見渡す。


 その時、眼差しのなかに信じられないものを探し当てたかのよう見開かれ、そのもの......俺をまじまじと見据える。


「フフフッ ボク気にいっちゃたかも」


 心臓がドクンドクンと打ち震え音を立てる。


 何処か遠くで、複雑に絡み合った歯車がようやく回り始めた......そんな幻想を覚えずにはいられない一つの出逢いであった。



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