虚ろな貴方と壊れた私
今日も貴方は虚ろなまま。吸い込まれそうな瑠璃色の瞳にサラサラの髪、貴方の手首から滴る赤い鮮血...ずっとずっと触れていたい。
ここには貴方と私だけ。二人だけの世界。嗚呼、幸せ。邪魔な女はもういないよ。ねえ、貴方も幸せだよね?
「晩ご飯は何を食べたい?」私は貴方に問うけど、貴方は黙ったまま。
「今日はビーフシチューにしようか?貴方の好物だよね..丁度いいお肉が手に入ったの。ふふふ」
私は髪を縛り、エプロンを着けて台所に向かった。野菜を丁寧に洗い、包丁で慎重に切る。ニンジンは彼が嫌いだから入れない。冷蔵庫から肉を取り出し、ノコギリで切る。ゴリ、ゴリ..骨に当たって切りにくい。もうやんなっちゃう。厚手のお鍋に野菜と肉を炒め、塩こしょうで味付けをする。お水と赤ワイン、ビーフシチューのルウに、隠し味に私の血も入れちゃおう☆ コトコト煮込んだら出来上がり!お皿にきれいに盛りつけて貴方に持って行く。
「はい、口を開けて。貴方の大好きなビーフシチューだよ。貴方の大好きな...」そう言いかけて私はビーフシチューをスプーンで掬い、フーフーして彼の口元に近づける。「ねえ、口を開けて?もう三日間も食べてないんだよ?...食べないと死んじゃうよ?」私は彼の口を開け、無理矢理ビーフシチューを食べさせた。あまり美味しくないのか、彼を少し不快そうな顔をした。「美味しくない?やっぱり美味しくないよね??あの女のお肉だもん。あはははははは」「!!!」「何をそんなに驚いてるの?貴方に食べてもらえてあの人も幸せだと思うの。何故泣くの?泣かないで、私が側にいてあげるよ...」私はそう言って貴方をそっと抱きしめる。貴方は私を突き放そうとするけど、貴方にはもう手が無い..私が切ったから。
「駄目だよ、暴れたら折角作ったビーフシチューがこぼれちゃう」私はまだ温かいビーフシチューをコトンっとテーブルの上に置いた。「...ねえ、貴方の足も切っちゃうね!だって貴方は私から逃げようとするんだもん。駄目だよって何時も言ってるのに..あの女に唆されたんだよね?でも、もう大丈夫!安心して、私が一生貴方の面倒を見てあげる。愛してるよ」私は彼にそっと口付けをした..「や・・やめてく・・れっ」「もう、ダメだよ私決めたから!」そう言って私は近くに置いてあった斧を手に取る。「大丈夫だよ、痛いのは最初だけだから」「いやだ!いやだ!やめてくれ!やめてく...っ」ゴリゴリ、ジョギ..鈍い音が部屋に響き渡る、私は笑いながら貴方の足を切る。とても楽しい、とても素敵。貴方の足...美味しそう..「ねえ、貴方の指は私の指輪にしたから、貴方の足はステーキにして焼くのはどうかな?とても良い案だと思うの」貴方はもう何も言わない。
壊れた私を貴方は虚ろな瞳で見つめる。それで良い、それが良いの。貴方と私だけの世界。血塗れた思考は徐々に色を深めてく。「大好きよ、愛してる。これでもう貴方は永久に私の物。ココロも身体も私だけの物。邪魔な女は殺したからね、貴方の足は切ってあげたから、私だけを観て。愛してる」貴方に口付けをし、私はそっと目を閉じた。