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買い物と旅立ち

「2回目の道具屋ではあるけど……マジマジと見るのは初めてだ……あ、歯ブラシ」


 エジェリーに引っ張り込まれる形で入った道具屋で、海は雑多に並ぶ商品を1つ1つ眺めていた。

 道具屋とは地球で言うところの雑貨屋のような扱いで、冒険者御用達のポーションなども扱っているが、基本的には市井の生活用品も取り扱う店であり、あまり大きくない街では『魔法技能マジック』を覚える魔法書、『補助技能サポート』を覚える技術書、各武器や流派別の技を覚える奥義書も扱っている。

 因みにこの店は魔法書や奥義書などを中心に扱っている店だ。

 現代の生活水準で扱われている雑貨は地球のものとほぼ大差がないように見えるが紙は羊皮紙が主流らしく、どうにも年代の調和が取れていない。


 インク、ランプ、蝋燭、羽ペン……王道的な中世の日用品ばかりだ。


 そんなことを思って視線を巡らせてみれば、初めてこのような店に入ったのか、マリーがエジェリーの説明をされながらそれなりの広さを持つコンビニ程度の店内を見て回っている。

 入口の扉の方にはセリナとバティストが直立不動で陣取っており、それによって他の客は入れず、禿げた頭をした店主は王国に使える『守護騎士ガーディアン』に文句を言う訳にもいかず眉間に皺を寄せていた。


 こっちはよくわからん草、怪しげな薬、うげ……虫の粉末とか、イモリの黒焼きって何に使うんだ?


 一際異彩を放っている場所に視線を向けてみると、どうにも怪しげな黒魔術の材料のようなものまで取り扱っている。

 ご丁寧にもジャイアントモスの鱗粉だとか、スライムの溶解液などという明らかに魔物の部位も名札値札付きで売り出されていた。

 店主に話を聴くと、どうにも生産職の人間が扱う物であり、魔法系戦闘職が扱う触媒なのだと言う。


「これがねぇ……」


 怪しげなピンク蛍光色に光っている試験管のような瓶に詰められている液体を持ち上げ、覗き込みつつ女二人で化粧品らしきもので盛り上がっていた2人に視線を向けてみる。

 すると、試験管越しに見たために視界が一面ピンク色に染まりながら、エジェリーとマリーが映り込むが、どうにも様子がおかしい。


「ん?」


 凄く睨まれてる?

 蔑まれるような……なにか気に触ることしたか?


 何故か2人に底冷えするような視線を投げかけられていた。


「??」


 特に何もしていないはずの海にはそれが理解できなかったが、2人の方から見ればすぐに理解できただろう。

 その蛍光ピンクに光る液体を詰めた試験管に括りつけられていた名札。

 それにはこう書いてあった。

淫魔サキュバスの愛液』と。

 男性をかどかす魔物であり、男性から女性を問答無用で奪っていくのがゴブリンやオークだという害獣というのなら、サキュバスは差し詰め女性から男性を拐かしていく敵である。

 しかもたちの悪いことに既婚者、婚約者、恋人という特定女性がいる男性を察知してわざわざ狙って奪おうとするのである。

 思いを寄せる男性が奪われた時の精神的苦痛は計り知れないが、逆に男性が淫魔サキュバス誘惑チャームを跳ね除けられれば円満な家庭を築けるという言い伝えまであるが、それは都市伝説のような扱いだ。

 ともかく、そんな女性の敵として広く認知されている淫魔サキュバスの愛液を持っている海へと向けられる2人の心中は即ちこうである。


 不潔ッ、不潔よッ!!

 カイの変態ッ、スケベッ、エッチッ、馬鹿ッ!!


 ああ……男性はやはりそういった物に興味がお有りなのですね。

 セリアの言うとおり、男性という生き物はふしだらな誘惑には抗えないのですか……。


「??」


 首を傾げながら手に持ったそれを棚へ戻したところで、ようやく海にもその名札が視界に入り、自分が一体何越しに彼女らを見ていたのかを理解した。


 何々、淫魔サキュバスの…………あぁ、そういう……そういえば生産職とかいうやつの技能で良いのがあったな。


補助技能サポート:解析】


 海はそう思って昨日の夜に流し見して覚えていた薬品関連の生産職である『調合士ミキサー』の技能スキルを使ってみる。

 レベルが低いため漠然とではあるが、どんな効果があるのかが理解できる。


【使用用途:魅了チャーム、若干の性的興奮を促す効果付与】


 ……つまり媚薬か、コレ?


「なんというか、なんだな……」


 脳裏に浮かぶ使用用途などを見て溜息を吐きながら、もう一度、エジェリーとマリーの方を見ると、何やら此方の様子を伺いながら頬を染めるマリーと、何故か普通なのに悪寒を感じさせる笑顔を見せていた。

 明らかに良からぬ事を仕出かそうとしているな、と海は直感するが、特に命の危機はないだろうと放置する。


 後で何かしら誤解を解いておかないと……。


 そう思いながら、自身の魔法の効果を引き上げる使い捨ての魔法触媒とポーション、ポットを人数分購入して、奥義書は買わずに魔法書や技能書併せ、5、6冊ほど買い込んで護衛2人の方へと歩き出した。

 海が出て行った後、エジェリーとマリーは何故か化粧品なども買っていたことを海は知る由もなかった。






 次に立ち寄ったのは海の服を買った服屋だった。

 これは護衛であるセリアの提案だ。

 今まで描写していなかったが、セリアはどこぞの貴族令嬢のようなドレスを着ていた。

 最初に着ていたものは腹部に穴が開き、血で汚れてしまったため、すぐには捨てなかったが、処分できる場所に行こうとという話となったからだ。

 治療が終わった後に予備のドレスに着替えはしたが、どうにも馬車だけで注目を集めるのだから、いっそ市井の服を着てみるのもいいのではないか?

 という提案にマリーは同意し、元より行く予定だったとエジェリーも同意した。

 したのだが……。


「うん、これ買おっと!」


「あ、あのッ、エジェリー? 本当に大丈夫なのですか?! 流石に短すぎるのでは?!」


 女性の買い物は古今東西長いものだと思っていたが、今回はエジェリーが機敏ながら良い目利きを発揮して服を数点選び出した後、マリーと共に試着室へと連れ立って入り、お約束のような姦しい声を海が背後で聞き流しながら壁に寄りかかって数分。

 店内の商品を見渡していた。

 先程居た道具屋と同程度の広さに生地や装飾などが整理され、木製のマネキンもどきには完成している服が着せられている。

 更に視線を巡らせると、とてもカラフルな色の布が飛び込んできた。

 それは健全な男ならば自然と視線が行ってしまう空間……なのだが、海はそのまま店内を物色していく。


 まあ、着けてなければ布だからなぁ……そう言えばそれだけで興奮するとか言ってた馬鹿がいたっけ?


 海は男色であるとか、性欲がない訳ではない。

 同年代と同じくらいには興味がある。

 だが、彼の思考的には女性が着ているのであればまだしも、それ単体の下着などは所詮、布という認識しかない。

 故に特に興味が沸かなかった。

 しかも海は、そう言った方面には鋭くも鈍感でもないし、一度揺らいだが、必要があればその方面への耐性を引き上げられる。

 引き上げた耐性は鼻で笑って一蹴できるくらいには高い方であることも一因の一つだろう。

 ともあれ、物色をすること更に数分。

 彼女達は着替え終わった。


「どう?」


「でしょうか?」


 これは……エロい。

 でもこれ、冒険者として旅をする目的で、戦闘どころか枝に引っ掛けたりとか身を守る用途にしては欠陥品じゃ……?


 海は思わず視線を逸らす。

 蒼の国『ラ・メール』は温暖な国であり、人間族にはとても過ごしやすい季候で現在は春に相当する季節。

 十分に軽装でも過ごせる。

 だがそれにしても女性陣の選んだ服装は露出が多かった。


「とても似合ってる、と言いたいところだけど露出が多過ぎ。 森とか寒いところでは着れないと思うんだけど?」


「なーによー? こうして美女2人が似合う服を着てるっていうのに!」


「皇女は確かにそうだろう……半袖にショートパンツだけど、街にはそれくらいの服装の娘達はいる……でもエジェリー、お前の格好はもう水着だろう?」


 そう、確かにドレスを着ていたマリーは恥ずかしそうにしてはいるが、街を歩いていると半袖にショートパンツの女性冒険者の姿を見かける。

 そもそも先程までエジェリーが着ていたレザーアーマーの下の服がそうだった。

 なので皇女がそう簡単に衆目の目に肌を晒していいのかを海は知らないが、特に違和感はない。

 だがマリーと一緒に現れたエジェリーの姿は元男爵の子女とは思えないくらいに思い切った姿。

 言ってしまえば、ビキニのような水着……上下が別れたセパレーツタイプのようなものだった。

 服の上からでは大まかな大きさしか分からなかったのだが、今の衣装だと女性としてメリハリのある線が余すことなく見えてしまう。

 正直、防具としての防御力はどうした?とツッコミを入れたくなる。


「えぇ~、防護の付与効果がある布から作ってあるから素肌の部分もちゃんと守られるし、普通の服よりもいいと思うんだけどな~。 何より動きやすいし」


 機能を取るか、見た目を取るか……か。


 そう考えると、どうにも海は機能の方と答えてしまう。

 確かにチュートリアルから得た情報にはそんなものもあったはずで、しかも特殊効果を付与した布は貴重であり、どうしてもコストの面から布面積が少なくなる。

 もちろん予算があればきちんとした服もあるのだが、それは王国御膝元にある服屋でなければ造れない。

 この街にある良い特殊効果を持つ服という点であれば、このくらいの布面積になってしまうのだろう。

 そもそも『裁縫師テーラー』が作る服は布の切り方、縫い方、編み方にも効果を増幅させる意味合いがあるらしいく、布面積が少ないが効果が高性能という小型多機能を追求した服も多いのだという。

 ならば普通の服と露出度が高いが特殊効果で防御力が高いのならばどちらを着るか?

 そう聞かれれば、常に命を張っている冒険者からしてみれば後者の方を選ぶ者も多く、自然と男女問わず肌の露出が多い者がそれなりにいる。


 特殊効果の生地と普通の生地を上手く折り合わせられないのか?


 内心で海が思うことは最もなのだが、未だそれを実行している者は少ないと言わざるを得ない。

 何故ならば、その分の布を削減した方が安上がりになるし、特殊効果を阻害しないように綿密な組み合わせを考えなくてはならない労力と難度を知れば造るのには躊躇するからだろう。

 ともあれ別に本人が気に入っていて、怪我をする危険性が減る、だからそれで良いというのなら海は口を挟むべきではないのかもしれないと思い直し口を開く。


「まあ、エジェリーが気にしないのなら良いんじゃないか?」


「さっすが、カイ。 名より実を取るタイプよね~」


「……なんというか、エジェリー。 出会った当初とは少し性格が違うような気がするのは気のせいか?」


「あら? そういうカイこそ、いつまでも不機嫌なままで敬語を使ってないで、もっと楽しく話しましょうよ?」


 エジェリーの挑発を半眼でくだらないと鼻を鳴らして踵を返そうとすると、エジェリーが海に後ろから抱きしめる。

 それによって否応なく薄布一枚を隔てて海は背中にエジェリーの女性的な柔らかさを感じた。


「ねぇ、カイ。 面倒な事は嫌い?」


「当たり前だ。 俺は自分のことで手一杯だから、誰かを助ける余裕なんてまだないんだよ。 それに関係ない他人になんて興味が持てない」


 海は淡々と底冷える声で答える。

 自分を助けられない自分が誰かを助けられるなんて思い上がれないし、期待をされるのもうんざりなのだ。

 どうでもいいものがどうなるとう関係ない。


「それってつまり、私が困ってたら見捨てるってこと?」


 エジェリーの当然な疑問。


「それはない」


 その疑問を海は間髪いれず否定する。


「エジェリーが困っていれば、俺は命懸けで助ける」


 そのセリフと真顔の海を傍から見れば、それはまるで告白やプロポーズのように見えたことだろう。

 しかし、海は発した言葉そのままの意味しか含めていない。

 エジェリーとマリーは彼が本気だということを察せるくらいには察しが良かった。

 海は自分すら救えていないから誰も助けられないし、興味がないから関わりたくない。

 助けようとすれば自分も何かしらのリスクを負い、関われば何かしらの責任を負うからだ。

 故に命を助けられたから数日とはいえ、見ず知らずの自分を助けてくれたエジェリーだけは絶対に救う。

 それは海にとって、この世界で目を覚ましてから決めた絶対のルール。

 だが、それを聴いたエジェリーは唐突にその絶対を突き崩す。


「じゃあ、カイはもう付いてこなくていいわよ? そんなつもりで助けた訳じゃないもの。 私は私がしたかったからした、ただそれだけだから」


 どこか寂しげな雰囲気の声でエジェリーは言う。

 海は理解できるが納得ができない。

 人を救うことはとても素晴らしいことだと海は思う。

 騎士の家に生まれ、弱きを助ける事が騎士の宿命だと、尊き者が負う責務というものを教え込まれてきたエジェリーなのだ。


「当然、その恩返しはきちんと貰うわ。 だって、それを返すのは気持ちを蔑ろにする最低の行為だもん」


 でも命を貰って喜ぶような性分ではない、そうエジェリーは言う。


「そんなものを貰っても迷惑よ。 命は自分自身のために使うべきもので、誰かにあげるものじゃないわ」


 命の価値観。

 それを理解しているからこその返答だった。

 海にしてみれば、着の身着のままこの『エフィーリア』で命を救われたばかりか、右往左往しかけたところを助けてくれて、まだお世話になるであろう恩人に返せる物といえば、自分の命(そんなもの)しかない、という結論に至った。

 だから、金で終わらせてしまうのはあまりに失礼で、命には命を返すものだというのが海の考えだった。

 お互いの価値観の相違にして、千差万別の誰一人として全く同一の価値観を持ち得ないという証明だろう。

 海がエジェリーに恩を返すということは、即ちエジェリーの価値観で価値のある物を返して成立すると海自身考え直した。


 確かに、要らないものを押し付けられても迷惑なだけか……。


「……わかった。 恩返しは保留にする。 だから、エジェリーに何か別の物を返すまでは一緒に居させてくれ」


「わかったわ。 すっごく楽しみに待ってる」


 ようやく海を開放したエジェリーは、よろしい、と言って、何か考え込んでいたマリーと共に着ていた服と、予備らしき服と一緒に買って服屋を出て行ってしまった。

 それを追うように海も店を後にする。






 最後に寄ったのは武器と防具屋。

 そこで海は杖を買うことにする。

 自衛用にロングソードよりも高かったために断念した杖が、今なら買えるからだ。

 杖といっても身の丈を超える曲りくねった物ではなく、オーケストラの指揮者が持つタクトのような物。

 材質には先端から約3センチほどを無色の元素鉱石エーテルの結晶が嵌め込まれ、残りの部分と持ち手部分はミスリルと鉄の混成鉄コンパウントでできている。

 元素鉱石エーテルとは、転移門ゲートに使われている水晶核コア・クリスタル走査水晶スキャン・クリスタルに使用される魔法伝導媒体で、それらの用途に使われる物を元素鉱石エーテルと呼んでいる。

 そして、単純な装飾品として使う名称が宝石ジュエル

 無色透明であれば金剛石ダイヤモンド、赤であれば紅玉ルビー青玉サファイアと言う。

 そう、つまりはその呼び名の通り宝石の事を指す。

 この世界で宝石とは採掘する物もあるが、物質を創り出す『錬金術師アルケミスト』が居るため、創り出す物でもある。

 高位になれば宝石と言わず、物質の生成や抽出、合成などはお手の物で、形が良く見栄えが良ければ良いほどに価値が上がるという市場になったが、天然物は総じて媒体としての効力も高く、やはり値が張る。

 宝石の性質上、原石のままよりも、よく見るように研磨することで扱い易くなる。

 それが『魔法使い(ウィザード)』にとっての杖だ。

 中には杖の代わりに魔導書グリモアを使う『賢者セージ』、植物から作り出されたワンドを扱う『自然魔術師ドルイド』、符で発動させる『陰陽師』、『仙術士タオ』が居る。

 宝石の杖を主流として扱うのは主に『魔法使い(ウィザード)』、『魔術師ウォーロック』、『司祭ビショップ』達。

 海が今まで使った『魔法技能マジック』にはとても適している。

 なので宝石杖を買ったのだ。

 どうにも鎧などを着る機会など、あるはずもない海は鎧を着るのにもたつき、付け方を教えられながら付けてみたのだが着慣れず、重量もあるために動きにくいという理由から海は鎧を着るのを断念。

 エジェリーと同じく、体全体を守る防護の特殊効果の付いたフードの付いた黒いローブを購入する。

 以前買ったレザーマントを予備にしておき、さっそく袖に腕を通してみると、ゆったりとしているため意外と着心地が良い。

 少し生地が厚いためか暑い国へ行けば少しばかり汗をかくだろうが、我慢できないほどではないので即時購入を決めた。

 この時点で海の所持金は金貨5枚、銀貨20枚から金貨2枚、銀貨3枚へ減ったが、まだ余裕がある。

 だが必要な物は買い揃えたので、これ以上、必要用途以外の無駄遣いは控える事を念頭に置いておく。

 エジェリーも今まで使っていたレザーアーマーからフェンシングのチェストプロテクターのような胸の形に沿った部分的な鋼鉄製のアーマーだった。


「さて、エジェリー……お前が痴女ではないというのなら何故、それを選んだのかを教えてくれ……」


 防御力があるのなら、もうちょっと防御力を主張できる面積を出せ!


 海は内心で、更なるツッコミを入れた。


「ち、痴女ってッ、なんてこというのよ失礼ねッ!! 私は機能重視で選んでるだけよッ!」


 ほぼ水着の服に胸の形をした鎧、流石に下はマリーが持っていたミニスカートらしき物を穿いているので見られないことはあるのだが、どうにも海から見てエジェリーは露出狂の気がある気がしてならない。


「俺も確かに機能重視で選ぶ人間だ……でも、それ以前にその格好は有り得ない……。 というか胸の形になってる鎧よりも面積のある鎧の方が普通は良いだろ?」


「今まではお金が貯まらなかったから我慢してたけど、普通の鎧は女性わたしたちにとって動くと擦れて痛いのよッ!!」


 胸を抱き締めるようにしながら、エジェリーは顔を真っ赤にしながら自棄気味に言う。


「な……ッ!?」


 いくらこちらの世界の知識に疎いとはいえ、何故考えつかなかったのだろうか?

 そして、マリーとセリアに視線を移すと、うんうんと頷いていた。

 よくよく見れば、確かにエジェリー、マリーは海が今まで居た日本の学校のクラスメイト達を平均とすれば平均以上なのが分かる。

 セリアに関しては鎧に隠されているのでハッキリとは解らないが。


 そもそも男女の違いくらい直ぐに考えつくのに……今日はどうにも調子が狂う。


 後々聴いた話では、この世界には女性用下着があるにはあるが、地球のような下着ではないらしく、動くたびに擦れたりして痛いらしい。


「すまない全面的に俺が悪かった。 俺が出来る範囲で謝る。 でも恥ずかしかったんなら何かこう……もう少し言い方を考えて欲しかったんだけど?」


「あのね、カイ……確かに私は恥ずかしかったけど、遠まわしに言ってちゃんと気付けた?

 アンタが女にどんな幻想を抱いてるかは自由よ? でもね……男よりも女は複雑なの。

 だからハッキリ言ったのに……痴女だなんて、酷い言い草しないでよ」


 初めて会った時のエジェリーは遠慮していて、こちらが素なのだろう。


「悪かった、痴女なんて言った事は撤回する。 さっきも言ったけど、俺の出来る範囲でなんでもする」


 そもそもエジェリーと海の年齢が離れていたこと、異性であったことで素を出せずにいたが、マリー達が現れたことによって今まで抑えられていた物が解放されたのかもしれない。


「本当に?」


「本当だ」


「うん、これで本人の許可も得られたし、いつでも出来るわよね~。 楽しみにしてるわよ、カイ?」


 こういうのを女心と秋の空って言うんだっけ?


 そう思った海は頭痛を感じ始め、不吉な物言いをするエジェリーは羞恥で染めていた顔色など嘘だったかのようにどこか愉快げに変え、道具屋で見た背筋の寒くなるような笑みを海へ向けた。

 海は釈然としない気分を抱えたまま、エジェリーに押し切られる形で買い物を終え、ようやく馬車を預けたままのギルドへと戻って、まだ日のあるうちに『ベルティエを』出立したのだった。

 ようやく『ベルティエ』出立、次は『ロゼ』の村へ。

 設定だけが出来上がって肝心のプロットが全くの白紙です。

 そろそろプロットを作らねば……。

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