第二話:冷たい慈悲
頭を殴られ意識が遠のいていくなか、殴りつけた奴がオレの胸ぐらを掴んで紅いスーツの男の前に突き出した。
オレは意識が浅いため、その場に倒れ込んだ。
「コイツ、見てやしたぜ」
「……」
紅いスーツの男は冷たい目線で、這いつくばっているオレを見下す。
そして、無言のまま懐に手をやると、銃を取り出した。
なんの躊躇もなくその銃をオレに向けると、紅いスーツの男はオレに話しかけてきた。
「年はいくつだ?」
「……と…し?」
「そうだ、そのなりではまだ若いだろう」
理解することができない。頭を強打されたためだろう、なんとなくはわかるが、応えが出てこない。
「……」
「まあいい、17、8といったところだろう」
オレは無言で頷いた。
「そうか、まだ若いのに残念だ。最後に言いたいことはあるかね?」
さすがに意識も回復し、視界や思考が鮮明になってきた。
「オレがいなくても、この世は変わりはしない、そうだろ?」
「そうだな、君の死はこの世界には何の影響もない」
わかっているさ、オレが死んでもこの世界は輪廻する。
それは誰が死んだところで変わらないことも知っている。
だからこそ人は名を残そうと努力する。
だが、それもただ虚しく
「努力しただけ」
になってしまう。
オレはそんな世の中にうんざりしていた。
「だよな、ならここで死んでもそう変わりはしないか」
オレは死を覚悟する。
覚悟、と言えば格好はつくかもしれないが、オレはただ諦めただけだった。
「うむ、終わりかな?では出来るだけ楽にしてあげよう、せめてもの慈悲だ」
そして銃口がオレに向けられた。