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サイボーグと日本刀

当時、現代戦闘を書く難しさを味わって挫折した作品ですね。ミリタリー的な知識も無かったし……。一応、簡単なプロットだけは存在しているんですが……いつか続きを書ければ良いなぁ。

 秋の涼しい夜。とある郊外の屋敷で、パーティが開かれていた。


 そのパーティは、屋敷のホールと広い庭園を存分に使った盛大なもので、百人を超える招待客は、それぞれ祝いのグラスを片手に、あちらこちらで歓談を楽しんでいた。


 そんな中、主賓の集まるホールの片隅で、一人の少年がつまらなそうに椅子に座り、足をぶらぶらとさせて、目の前のグラスからストローでジュースを吸い上げていた。


「パーティって、つまんない……」


 普段なら、いつも遊んでくれる使用人たちも、この日は忙しそうに働いていて、とても話しかけられる雰囲気ではなかった。いつも優しい笑顔の両親は、なにやら難しい表情をした紳士と一緒にどこかへと行ってしまい、世話係の女性だけが困ったように微笑んで、少年の傍に控えていた。


 そこへ、少年と同じくらい、7~8歳くらいの可愛らしい少女が近寄ってきた。頭には大きな 白いリボン。手には可愛らしいテディベアのぬいぐるみを抱えている。


「あなた、ここで、なにしているの?」

「……ジュースのんでる」


 一言だけ答えて、少年はジュースをチューっと吸って、俯いてしまった。元来、人見知りの気があった少年は、知らない人と話すのが苦手だった。両親の仕事の都合で、あちこちに住まいを移すことが多かったこともあり、同年代の少年少女と遊んだこともなかったのだった。しかし、この少女は格が違った。


「じゃ、いくわよ」


 え、と一瞬呆けた少年の腕をむんずと掴み、椅子から引き摺り下ろすと、そのままズンズンと歩き出す。呆気にとられたまま、世話係の女性に目で助けを求める少年。しかし、ずっとつまらなそうにしていた少年を心配していた女性は、ニコリと微笑み、少女の手からぬいぐるみを、少年の手からグラスを受け取り、手を振って二人を送り出したのだった。


「ちょ、ちょっと……!」

「なにをして、あそぼうかしらね……」


 一方の少女は、少年の言葉をまったく聞いてくれそうになかった。



 ◇



「はぁ、はぁ、はぁ……」

「あなた、たいりょくないのね」


 広い屋敷の中とその庭中を、さんざん引っ張りまわされた少年は、ぜぇぜぇと、汗まみれになって芝生に倒れこんでいた。


 少女は、その可愛らしい見た目に反してとてつもない行動力の持ち主だった。


 少年の手を引いたまま、屋敷の中の、ありとあらゆる部屋に、一時も臆することなくズカズカと入り込み、飾られている美術品を眺めていたと思ったら、高級そうな壷をひっくり返して中を覗いては「なんにも入ってないのね」などと呟いて、次に、鍵のかかっている部屋を見つけると、隣の部屋のバルコニーから飛び移ろうと試み、少年が慌てて止めたり、庭に出ると、大人たちの間を縫うように走り回り、庭で一番大きな木を見つけると、少年の尻を蹴飛ばして先にのぼらせ、後からものすごい勢いで追い抜いて、途中、踏み台にされた少年の方は危うく落とされかけた。


「うわぁ、いいながめー」

「う、うん」


 それでも、同じ年頃の女の子と遊んだ経験がほぼ皆無だった少年は、パーティの明かりを楽しそうに見る少女の笑顔を見て、なんだかどぎまぎしてしまうのだった。


 しかしそれが、そのパーティで少年が確認された最後の姿だった。



 ◇



 一ヵ月後。


 古びた洋館を模した建造物。その地下50メートルにある研究施設。地下にあるはずの施設内部は広大で、都市部にある巨大なショッピングモールを、そっくりそのまま地下に移設したかのようにも見えた。中央が広くくり貫かれたような吹き抜けで、エスカレーターや階段が交互に備えられ、各階の施設の角から対角線上に伸びる通路の中央地点には、エレベーターと思われる巨大な透明の管が2本。


 主電源が破壊され、非常電源からの電力で光る赤いランプで、薄暗く照らされる中、銃のマズルフラッシュがそこかしこで瞬いている。そんな中、蠢く黒い影は、時折、激しい銃撃を交えながら、動かなくなったエスカレーターや階段沿いに、更に地下へ、地下へと進んでいる。


「……これは、マズイですかねぇ」


 白髪の壮年男性が、研究所最奥の部屋で、一つ、また一つと消えていくカメラ映像を見ながら、ぽつりと呟いた。見やるディスプレイの中では、非常時に備えて戦闘訓練も積んでいた研究所の職員が、既に多数、血の池に沈んでいた。


 しかし、男のその口調は、どこまでも他人事のようであった。能面のような表情。そうして、しばらく映像を眺めたあと、手元のスイッチを押してこう言った。


「職員は退避してください。防衛機構Dを発動します」



 ◇



 殺気が消えた、と黒田は思った。腰に提げた得物から、手を離す。顔だけ振り返ると、己の背後を進む人物に、声をかける。


「博士。お疲れではないですか?」

「大丈夫だ。それよりも早く、息子に会いたい」

「必ず」


 言葉少なに頷く黒衣の男。周りを、銃で武装した隊員が、四方に目を配りながら進んでいる。黒田は襟元に手をやると、通信装置のマイクをONにする。


「こちら、黒田。前線の状況は」

『A班、最下層へ到達したところです。しかし、抵抗が、敵の姿がありません』


 周囲に耳を澄ますと、確かに先ほどまで聞こえていた銃声も聞こえなくなっている。敵が、撤退を開始したのか、それともワナか。そう考えていると、耳元から悲鳴が上がった。それに続いて、銃声も聞こえてくる。


「どうした?」

『っ……銃が!? 効きませんっ! うぎゃあ!!』


 ちっ、と舌打ちした黒田は、次の瞬間には研究所の奥に向かって駆け出していた。後ろの部下たちに向かって声を荒げる。


「お前たちは、後続部隊と合流! 博士の周りを離れるな!!」



 ◇



 ギンギンギンっ、と鈍い金属音を響かせながら、全身をボディアーマーに身を包んだ敵は前進を止めた。背中には、タンクのような、巨大な弾装を背負っている。


 手には凶悪なシルエットの銃、ミニガン。半端な壁ごと対象を破壊しうるその兵器で、敵は、隠れている味方に対して、あまりにも正確な射撃を開始する。


 壁際に隠れていた隊員の頭が正確に撃ちぬかれ、大雑把な肉片へと姿を変えると、すぐ隣にいた年若い隊員、大崎は、目を丸くして絶句した。一瞬の後、飛びのくように背後へとダイブする。


 そこへ、更なる銃撃によって粉々になった壁が飛び散った。


 ピストルが点、サブ・マシンガンが線を描くように弾を打ち出すとすれば、小型の機関銃といった様相のソレは「面」を打ち抜くために存在している。弾がかすっただけで致命傷だ。正面から相手をするには、あまりにも分が悪い。


 ミニガンは、本来ガンシップや軍用車両に固定して扱うために作られており、人間が軽々と扱うようには出来ていない。人が手に持った状態で、正確な射撃を行うということ自体、本来ならば不可能・・・なハズだ。


 しかし現実に、吹き抜けのある空間で、相手を囲むように配置した隊員たちが、逆に蜂の巣にされてしまっている。しかも、壁や床越しに。まるで、障害物など関係なく、こちらの位置を把握しているかのようだ。周囲を見回しても、カメラなどの設備は無いというのに。


 こちらの銃撃は受けているはずなのに、まるでダメージがなかった。いくら強固なボディアーマーを着けていたって、着弾による衝撃までは吸収しきれないはずだ。


 それなのに「敵」は、よろめきすらしない。今となっては、壁際に近づくだけで銃撃を受けるので、相手にまともな攻撃を加えることすら難しかった。 


『こちら、A3! 未だ敵に有効打は確認できず! 有効打は確認できず! これより、グレネードによる攻撃を試みる。周囲の隊員は退避せよ!!』


 銃撃によって、伏せたまま動けずにいた大崎は、その声を聞いて、どうにか這ったまま後ろへと下がり、物陰に隠れた。


 次の瞬間、ポシュという軽い音が聞こえ、そして空気が震えた。



 ◇



 銃撃と比べても明らかに大きい破裂音を聞いて、階段を駆け下りていた黒田は、一階分の高さを飛び降りて、最下層に着地した。煙が立ち込める中、目を細める。周囲に人影はないが、味方のものと思われる気配はあちこちに感じた。


 しばらくすると、少し遠く、晴れてきた煙の向こうに、「敵」が姿を現した。黒田は呟く。


「……戦闘アンドロイド」


 そこにいたのは、全身をメタルに輝かせた、人型の戦闘ロボット。



 ◇



 大崎が、味方のグレネードによる攻撃の後、物陰から進み出て敵の様子を確認してみると、そこには信じられないものがいた。


 先ほどまでの、ボディアーマーに身を包んだ敵の姿はなく、どこか近未来的な人型のロボットが、跪くように屈んでいるのだ。しかも、それだけではなかった。


 全身を銀色に纏ったそのロボットは、まるで無傷だったのである。


 カタ、と何かの破片を踏みつけたような音が鳴る。ロボットが、ゆっくりとこちらを見たことで、それが、自分の足元から聞こえたものだと解った。ロボットの、黒いバイザー型の瞳と、目が合う。


 と、次の瞬間。


「大崎!!」


 気付かなかったが、自分と同じ最下層にいたのだろう、別の隊員がロボットに銃撃を加える。フルフェイスの防具で頭が守られていたが、声で正体がわかった。立花。隊でも有数の銃の名手で、同期であった彼は、大崎にとって友人でもあった。


 友の咆哮によって、恐怖で呆けていた頭に、熱が入る。


「うおおおおおおっ!!」


 サブ・マシンガンを構えなおし、銃撃を加える。上の階の味方からも、すかさず援護射撃が加えられる。敵の周囲に火花が散り、硝煙の匂いが立ち込める。


 キンキンキンと、甲高い音を響かせ続ける敵の体。だが、その動きは止まらない。


 今や白銀の体を煌かせるロボットは、銃撃など意に介していないように、右手のミニガンを持ち上げ、無造作に、大崎の方へと照準を合わせた、が――。


 カラカラカラカラ――。


 巨大な銃のガトリングが、虚しい音を立てた。先ほどのグレネード攻撃で、銃身部分とタンクから伸びる弾装とが破壊されていたのだ。それを見て、首を傾げるロボット。


 そんな機械でありながら人間のような滑稽な動きに目を奪われて、大崎は、一瞬動きを止めてしまった。


 銃声の合間に、バシュ、という音が聞こえた。ロボットの背中から、タンクが落ちる。ガン、と音がして――。

 

 次の瞬間、大崎のすぐ目の前にロボットが、いた。



 ◇



 立花は、見たくないものを見てしまった。友の背中から突き出た、銀色の腕。血が、纏わりつくように滴っている。


 一瞬、体を貫かれた大崎と、目があった。


「大崎ィーーーっ!!」


 ロボットは、自分の腕で貫いた人間から、ズブズブと腕を引き抜いた。すると、先ほどまで敵だったものを、とてつもない力で、もう一人の敵に投げつけた。血が、その後を追うように飛び散っていく。


 何も反応できずに、装備を含めて100キロ近い塊を、立花はまともに受け止めてしまった。一緒になって吹き飛ばされる。


 立花は、受け止めた大崎の体の下で、動けなくなってしまう。友の体を、咄嗟に払いのけることが出来なかった。


 ガン、と、倒れた格好になった自分の足元の方で音がする。大崎の体越しに見ると、一瞬でそこまで跳躍したのか、ロボットの姿。こちらに屈みこむような姿勢になり、腕を振り上げる。


「……くそったれ」


 立花は、目をきつく閉じた。


 が、しかし、いつまで経っても死神の鎌は振り下ろされなかった。そして、目を開いて見た光景。


 肩先からの腕を失い、戸惑うように立ち尽くすロボットの姿。その背後に立つのは、階上にいるはずの護衛隊長。左手には黒塗りの鞘。そして、右手には、一振りの日本刀。


「黒田さん!!」


 ロボットは、不測の事態に陥った現状を認識すると、すぐさま、立花を飛び越えるかたちで前方に跳んだ。しかし、右肩から先がないせいか、バランスを崩した。10メートルほども飛んだ先で、着地に失敗。


 ガシャンッと大きな音を響かせて、うつ伏せに倒れた。その場所へ、つかつかと歩み寄る黒服の護衛隊長。アンドロイドの頭のすぐ近くで立ち止まった黒田は、片手に持った刀を無造作に振る。


 切り口から火花を散らし、アンドロイドの頭部がコロコロと転がっていくのを、立花は見た。


「す、すげぇ……」  



 ◇



「……素晴らしい」


 監視カメラの映像を見つめながら、男は呟く。表情には、余裕の笑みが浮かんでいる。その視線を横に向けると、そこには大きな円筒型の水槽がいくつか並んでいて、一つ一つの水槽の中には、人間の子供ほどの大きさの影が浮かんでいた。


 ……その一つに、あのパーティで行方不明になった少年の姿があった。


多分、おかしなところだらけなんだろうなぁ……(汗

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