その5・私、少年に会うのこと
今回はつなぎのため少しいつもよりも短いです。
だんだんと巨大化獣や樹海化が皆に『当然のこと』として受け入れられるようになり、数十年もすれば天罰だだとか天変地異だとか言わなくなっていった。私は私で必死に『神の恵み』を吸い取ってどうにかしようとしているけど、直接と間接じゃあやっぱりどうにもならないものがある。巨大化獣、ゲリラ的樹海発生に続き――ついに、人にも影響が出始めた。魔法を使える子が出てきちゃったのだ。
『神の恵み』は基本的に種の可能性を最大限に引き出すことを目的としている。つまり私の一部を使ってエルが披露した癒しの力も私が踏んだ場所から草がスピード再生みたいに生えるのも、私が人体の回復力を最大限に引き出し草の生命力を最大限に引き出したが故なのだ。でもまあ一応私にも可能なことと不可能なことはある。攻撃を目的として『神の恵み』の力を使えないことだ。攻撃対象なんていないから別に良いんだけどね。
話はちょっと戻るけど魔法の話。ここ二、三十年で大気中の『神の恵み』を吸収して利用できちゃう子が三百人に一人くらい現れるようになった。神殿は私の加護だなんだと言ってその魔法使いもどきたちを神殿に集めて教育しているみたいだけど……プロがいないんだから十分な教育ができるはずがない。本当に大丈夫なのかよアレ、と思いながら観察していたら――少年が一人、私の元へ通うようになった。
どうやら彼は私が今までに見てきた子の中でも一番魔力、じゃなかった、『神の恵み』の精製度が高い。でもその高さが原因で魔法の効果が良すぎてしまい、皆から怖がられるわ嫉妬されるわ神官はあからさまに優遇するわで大変なようだ。神殿内には友達がいないうえ神官たちは甘い顔をするばかりで役に立たないとなれば、どこかで一人でいる他ない。少年は私の傍を選んだらしい。
しょんぼりとした様子で膝を抱える少年を見ながら、私は悩んだ。――私も手伝えるなら手伝ってやりたいのだ。でも私までこの子を優遇してしまえば他の子たちはどう感じるだろう? 更にこの子を敬遠しやしないだろうか。この子の未来を逆に奪うことになりやしないか。私は逆立ちしてもこの国の『聖霊様』という立場に変わりない……神官の贔屓とは影響力がケタ違いなのだ。
少年を助けようと決心したのは五日後のことだ。少年が私の影に隠れるのはここ数日いつものことだったが、彼は泣いていたのだ。ぐずぐずと鼻を鳴らし私に寄りかかり、縋るように『聖霊様……』なんて言われたら私だってほだされる。妹の姿でも良かったけど光の玉として少年の前に現れれば、彼は私を見て口を半開きにした。
「少年、どうして泣いているんだい」
大神官が少年を贔屓して甘やかしているというが、前々代の大神官は金より食い気だったからまだ可愛げがあったのに今代の大神官は花も欲しい団子も欲しいといういけすかん奴だ。自分の手元で少年を育てたら将来儲かるに違いないとか考えている肉饅頭なんぞ肉屋で売っても安く売り捌かれるに違いない。私は手を伸ばして少年の頭を撫でる。
「えっ、聖霊様……?」
「そうだよ」
少年はなかなか将来が楽しみな顔立ちで、もしあの大神官がこの子の将来じゃなくて尻を狙っていたりしたら今すぐ王でも誰でも良いから人のいるところに行って大神官のあることないこと言いふらしてやろう。
「大きな力が怖いのかい? 人を傷つけてしまうことが」
頭をなでたまま言えばコクンと頷く少年。素直だ……王族とは大違いだな。あいつらは人の話をさっぱり聞かん。それに人を傷付けることを怖がる怖がらない以前に無意識で傷付けているから性質が悪い。
「私が使い方を教えてあげよう」
『神の恵み』の塊である私が教えるんだ、どうすれば効率良く力を使えるかは私自身が良く分っている。さあ、最強への道を歩むのだ少年よ。大丈夫、『神の恵み』が付いてるから問題なし!
「良いんですか? 僕なんかに教えて下さるだなんて……」
少年は目を潤ませ私を見上げる。少年の目には私はただの光の塊としか映っていないだろうから私の表情が分るはずもないが、私が苦笑したら安堵のため息を吐いた。雰囲気で分ったのかもしれない。
「少年は『神の恵み』について知っているかい?」
「マナ、ですか? 知らないです」
そうだな、先ずは魔法使いが生まれた理由から話そうか。
少年の名前を募集します。どなたか少年の名前を考えてくれませんか?
鷲見にはネーミングセンスがなく、いくつか考えてみましたが全然似合わず断念しました。ヨーロッパ風の名前なんて嫌いだ。和風の名前だったらまだいくつか考え付くのですが――と言いつつ、主人公の下の名前もまだ考えていないんですよね。名字だけは決めましたが、名前だけが決まらない宙ぶらりんです。これもついでに考えてくださると助かります。