序の譚
初めて小説を書きました。
カクヨムにも同じものを投稿しています。
目指してるのは、時代小説風のものとスチームパンクの融合させたサムライスチームパンクです。
歴史は韻を踏むところは踏んでますが、物語に都合に合わせてるので実際の歴史とは異なります。
読んでいただける方をできるだけ飽きさせないよう頑張りますので、しばらくのお付き合い、よろしくお願いします。
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その日ノ本は徳川幕府が終わらなかった。
ペリーの来航もなく、開国もなかった。
第十六代将軍・徳川鎮信が日ノ本独自の蒸気機関を発明し、日ノ本は急速に成長を遂げ、西欧列強に肩を並べた。
どんな遠距離でも、熱を失わぬこの蒸気は、あまつさえ電気やガスがやることも代替した。
それは、日ノ本にたった一つしかない蒸気生成所、通称・蒸生所から、送電線ならぬ送蒸線で繋ぐことで、日ノ本全土に送り届けることができた。
しかも夜になると、蒸気を利用した灯り─蒸気灯が煌々と街を照らした。
人々はこの文明に、械掛 (からくり) という言葉を充てるも、この常識外れの蒸気に、疑いの目を持つ者や一抹の不安を覚える者も少なくなかった。
また、「もーたー」なるものがポルトガルより伝えられると、すぐさま蒸気機関に応用し、車、冷蔵庫なる物を冷やす械掛までもが発明され、人々の生活の質を格段に跳ねあげた。
だがその一方で不吉な闇が日ノ本の片隅で蠢こうとしていた。
それは溶魔と呼ばれていた。
蒸気文明が生まれると同時に姿を現し始めたそれは、蒸気線を伝い現れ、人や物をただ殺す為だけに憑依し、死に至らしめた。
文明の利便さを呪うかのように、街のいたるところに現れては、一人、また一人と犠牲を増やしていった。
一方で、エーテルに対抗する侍たちが現れた。
通称、鋼蜂。
決して組織を持たず、決して情では動かず、決して正義を掲げず、個で活動し、金だけを理由に妖魔を斥けた。
鋼の蜂──奇妙な名だが、自分たちで付けた名前ではない。
彼らだけが扱う械掛じかけの武器──械掛刀から発する機械音が蜂の羽音に似ている為、世間から自然と付けられた名だ。
鋼蜂の名は、言わば蔑称だった。
情を捨て、金ずくで動く姿勢を快く思わぬ他の侍や、民衆からは『侍崩れ』と同等の意味で扱われ、罵倒されたが、皮肉にも、時代は彼らを求めていた。
この物語は、蒸気文明と鋼蜂たちの軌跡を描いたものである。
元はとても気に入っていたゲーム企画でしたが、とある理由でボツにされ、何年も寝かしていました。
ですが、見直すと自分的にはツボだったので小説にしました。
もし、良かったら一言残していただけると無上の喜びです。