第二話 ヴォイド・スカル
文字数が話によってバラバラですが、ちょっと暖かい目でお願いします。
メイスさんがいち早く扉を開き、ヴォイドの元に向かった。ついて行き近づくと、自分の中から何かが失われたような感覚に襲われた。
立つこともままならず、思わず膝を着いてしまった。
それでもメイスさんはなんともないように叫んだ。
「おい!お前、ヴォイドか!いい加減俺らと一緒に来い!ギルド長は変わったんだ!」
「理由になってない。僕は勇者になんてなる気は無いんだよ。」
意外にも子供の様な声でヴォイドは言った。フードで顔は見えなかったが、恐らく自分と同年代程の少年だろう。
「理由はなんだ!お前こそ理由に…」
「ない。」
「…は?」
全員が耳を疑った。勇者とは、高貴な位の人間で、人生の選択を全て自分自身でできるような立場だ。なのにその立場にならない理由がないだと?
「『何もない』。理由なんてない。とりあえず勇者なんかになりたくない。」
「じゃ…じゃあ何で勇者を恨んで…」
「恨んでないし、話になってない。」
「ああ、よく分かったさ。だからもう黙れ。」
メイスさんがランスさんの前に出て、手から炎を放出した。辺りの木々は、燃えるどころかあまりの風圧に吹き飛ばされてしまった。
「いくらなんでもやりすぎじゃ…! 」
「よく見な。」
エマさんに言われ、目を見張ると、驚いた。手から放出されていると思った炎は何も無かったかのように消え去り、木は元通りになっている。
「えっ!?」
「この際説明しても仕方がないだろう。奴のスキルは『無知』。奴は魔法の存在を知らない。魔法を知覚出来ない能力だ。」
「?」
「簡単にいうと、私たちの能力は全て無効化されるってことよ。」
メイスさんはヴォイドの事を睨んでいる。
「…!君。」
ヴォイドが突然口を開いた。
「君だよ君。そこの…あぁそうだ、ウルグ・ハースだ。」
何で…僕の名前を…?
ヴォイドが顔を歪ませニヤリと笑っている。
「まさか…お前ぇ!!」
「やっと思い出したか…ウルグ君。」
そう、ヴォイド・ハースは、僕が王になれず、虐待を受ける理由になった男なんだ。
第二話 完
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